第二章 彼女がいる日常(2)
「あっちぃ」
「そうですね、クーラーつけていいですか?」
「そんなの気にしなくていいっすよ」
「あ、はい」
あの後、ベシオスで最低限の服や下着を買い、三階の百均で櫛や歯ブラシなどの生活用品を買いようやく帰宅した。
やはりというかなんというか、女子の買い物はどんなものでも長いんだなと思い知らされた。
ズボンのポケットから携帯を取り出し時間を確認すると既に七時になろうかとしていた。
「じゃ、買ってきたものしまっちゃいますね」
疲れた俺をよそに、みのりは楽しそうに先ほどの買い物袋をリビングのほうへ運んでいく。
はぁ、俺も何かするかな。
「じゃ、俺は風呂掃除しときます」
「はぁい」
残っていた買い物袋を玄関からリビングへ移動させ、そう言い残すと俺はお風呂場へと向かった。
しかし、風呂掃除とは本当に面倒くさいものである。一日掃除しないだけでもすぐに汚れは出てくるし、落ちにくいのなんの。
それに、いつもは浴槽にお湯は張らないが、昨日はみのりがいたから浴槽も洗わないといけない。
だが、何だろうな。一人でいるときはただ退屈でしかなかったんだがな、こういうのも悪くないなと思っている俺がいる。
「ふぅ」
俺は、そんなもやもやした考えはすぐに放棄し、洗剤の泡とともに水に流した。
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「終わったz…」
風呂掃除を終えた俺はリビングへと向かった。そしてドアを開け声をかけようたしたのだが。
「おかえりなさい。ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・し」
エプロンをつけたみのりがご定番のセリフを言ってきた。
「いや、今風呂は俺が準備したんですけど」
「もう。いいじゃないですか、そんな細かいこと」
ちなみに、みのりがつけているエプロンは先ほど店で買ったものである。
エプロンなんかなくてもいいだろといったのだがみのりがどうしてもというので買ったのだが、このためだったのか。
「くだらないことしてんじゃない」
そういって両方の方をつまむ。
「や、やめてくだひゃい、頬をちゅねらにゃいでぇぇぇ」
あまり、やりすぎると泣きそうなのですぐに離してやる。
「もう、いいじゃないですか。新婚夫婦のお決まりじゃないですか」
頬をさすりながらみのりは抗議してくる。
「それは漫画の世界だけだ。まず、それ以前にあなたと夫婦になった覚えはありません」
「じゃ、私とは遊びだったんですか」
「変なことを言わないでください」
「むぅ。哲人さんはいじわるです」
そういうと彼女は頬を膨らませながらキッチンのほうへと戻っていった。
やることがなくなった俺もみのりについていくようにキッチンへと向かう。
「何か手伝いますよ」
「別にいいです」
おっと、これは完全に機嫌を損ねてしまったようだ。ん? でもこれ俺なんか悪いことした? はぁ、まぁいいか。
「そういうわけにはいきませんよ。一緒に住んでいるわけですから、助け合うことが大事ですから」
「…」
ふーん、奥の手を使うか。
「冷蔵庫の奥にプリンがありますよ」ボソ
「しょうがないですね、そんなに手伝いたいなら手伝わせてあげますよ」
ちょろいな。
「はい、ありがとうございます」
「じゃ…」
その後、俺はみのりの言うとうりに動いた。しかし、俺の手伝えることはほとんどなく、テーブルの支度をし、支度をし…。ほかにちょっと手伝って俺のすることはなくなってしまった。
実をいうと、ほとんど何もしてません。
だって、「手伝いますよ」って料理に手を出そうとすると、「ここからは私の務めです」って譲らないんだもの。
というわけで、今の俺はリビングの席に着きテレビを見て料理ができるのを待っているわけだが。
「ふんふふーん」♪
本当にこれでいいのかなと思ってしまう。
確かにみのりは今も鼻唄うたいながら料理を作ってくれているわけだが、やっぱり誰かのところに預けるほうがいいんじゃないだろうか。仮にも俺たちは男子と女子で、世間体的にもよくないと思うし。何か問題も起きるかもしれない。
あ、問題といってもああいう意味じゃなくてね。
それに…。まぁ、今はいいか。取り合えず、みのりの親を説得することが最優先事項だな。そんなすぐに何か起こるなんてこともないだろう。
この時の俺は、自分の置かれている状況を完全に理解してはいなかった。
初めての作品なので最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
評価なさってくれた方、ありがとうございます。




