0話 幼少期
「痛っ・・・」
小学生の俺はコタツの中に隠れていたが、体勢を変える際にコタツの脚にぶつかり声をあげてしまった。
近づいてくる足音・・・数秒後、力強い母の腕力に屈し、キリスト教の集会へ今日も行く。
親父は公務員で収入も関西の田舎では多い方だったと思う。
並みの一軒家に住み、ご近所さんとの付き合いも良好だったのだろう、皆優しく接してくれた。
母親も普段は優しく特に不自由なく過ごしていてが、キリスト教だけが幼少時のストレスだった。
集会で語られる理想的な将来の話を拒絶しストレスが溜まっていた・・訳ではない。
子供なので学校と同じような教えられる空間にいたくなかっただけだと今は思う。
そのストレスからなのか、小学生時代はよく他人をいじめた。
・同級生の給食に指を突っ込む。
・同級生を田んぼに突き落とす。
・貯水タンクに閉じ込める。
・女子生徒の足に落ちていた木を刺す。
他にもたくさんの悪事を働いた。今思い返すとクレイジーだと本当に思う。毎週のように母親が謝りに行く後ろ姿を今でも鮮明に覚えている。
そんな折、中学生になり初体験を済ませる。
初体験といっても、イジメられるという初体験だ。
毎日暴力を受け、素人が執行する無理な角度へのプロレス技。
地獄が終わると他校の金髪軍団が家の前でお出迎え。俺を待ち伏せしているのだ。
物陰から覗いていると、しばらくして母親が出てきた。
なにか注意でもするのか?と思い眺めていると、おにぎりとお茶を配りだした。
愛する息子をリンチする為にタムロしている連中にだ。第3ボタンまで開けた金髪軍団を俺の友人だと勘違いしたという。
食料を確保した連中は、HPが回復。ますます帰らない。そんなことが何度かあった。
このとき感じた母親への怒りが、なぜかキリスト教への怒りへとスライドし、俺は集会へ行かなくなった。
俺は4人兄弟の末っ子で上の3人とは10歳以上離れている。
1号が兄貴、2号3号は姉だ。俺が物心ついた頃には兄はいなかったので、どんな人物かも知らない。
ちなみに姉は2人ともモテていたみたいで、当時携帯電話など普及していなかったので、告白の為に家に電話がかかってきたり、郵便ポストにラブレターが入っていたりというのは日常茶飯事だった。
うちの家はなぜか公衆電話を置いていて、10円玉を入れて電話をかけていた。俺は10円が貯まる箱の暗証番号を見つけ、そのお金でタバコを買っていた。
中学生になると草木に火をつけて遊んでいた。
典型的な陰キャラ。
持参した水では対応できないほどの火が広がり、山2つを燃やした。なぜかすぐにバレて警察署と消防署へ呼び出され、母親と謝りに行ったのを覚えている。
この警察署で俺を叱ってくれた人と、偶然にも10年後再会した。
「まさかお前がヤクザになるとはなぁ」