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第4話 キャンプと言ったらやっぱりご飯!

※※※※※※※※※※

下記注意書きに不安を覚える方は、お戻りになられる事をご提案させて頂きます。

・一人称。

・無駄な長文。

・喫煙描写。

・食事描写。

※※※※※※※※※※


※見切り発車の投稿の為、先に進めることを優先しております。

その為誤字脱字や文法の間違いなどがある場合がございますが、コメントなどでお知らせいただけると幸いです。

 立て続けに二人が腹を鳴らし、いざ食事にしようと決めたところであることに気付く。

 用意した食材は、品川の好みに合うのだろうか。

 メニューは定番のバーベキュー……もとい、焼き肉だ。メインである肉が多少値段の張るものとは言え『焼き肉用』と書いてあったので、無理に格好をつける気はない。

 他にもホタテやエビなんかの海鮮類や、とうもろこし、玉ねぎ、カボチャなどの野菜も用意してあるが……。

 考えたところで答えが見つかる類の謎ではないし、素直に聞くことにしよう。

 

「食べられない物はあったりするか?」


 問いを受けて首を横に振る品川。

 歯に絹着せぬ物言いをしてしまえば、明らかに栄養の足りてないガリガリの体つきをしているから、アレルギーが無ければ色んなものを食べたほうが良い。


「初日の晩飯は焼き肉だ。たっぷり食えよ」

「はい……すみません」


 謝罪では無く礼が欲しかったところだが、すぐに変わるものではないし、それよりもしっかり食べることの方が大事だろう。

 

 持ってきた食材を机の上に並べた。

 焼き肉用にカットされた豚や牛、一口大の鶏もも。冷凍のねぎま串。

 魚介はホタテ貝柱や有頭海老の他、鮭の切り身やサンマなんかを用意した。

 これら肉や魚のみではバランスが悪いので、大量の野菜も準備済みだ。

 前述のとうもろこし、玉ねぎ、カボチャの他にも、シメジ、ナス、しいたけ、トマト、ピーマン。焼くと美味い野菜ばかり。

 トマトは意外に思われることが多いが、輪切りにしたトマトを網で焼き、果肉に僅かに焦げが付いたあたりで塩やレモン汁を掛けて食べると甘みが増して抜群なのだ。

 

「焼き肉には白飯だよな。今日はレトルトだが勘弁してくれ」

 

 欲を言えばビールが欲しいところではあるが、流石に未成年との食事でそれはまずいと自重しておいた。

 炊飯もできることはできるが、早く食事にしたいため今回は断念し、湯煎で食べられるレトルトの白米を準備する。

 取り分け皿と箸を品川に渡し、各種調味料も準備完了。


「よし。それじゃあ――」


 いただきます。

 異口同音に発せられた夕食の開始を告げる言葉が、宵に差し掛かった空に溶けた。

 

 

 食事が続く。

 そろそろナスが食べ頃になったので、トングを使って俺の分と品川の分を皿に取った。

 皮目に茶色みが増してしんなりしてきたナスは、縦の二つ切り。断面には格子状に隠し包丁を入れてあるのできっちり中まで火が通っている。

 ここにチューブの生姜を少し載せ、醤油を掛けてから箸で身をすくい上げるとそのまま口へ。


「――美味いなぁ」

 

 感想が口から漏れる。

 火が通りねっとりとした口触りとナスの旨味が、生姜の辛さと醤油のしょっぱさに引き立てられ、味わいが増幅されている。

 そんな俺の様子を見てとったのか、品川も同じ様に生姜と醤油をナスに掛け、毟り取ったクリーム色の身を口に運ぶ。目を細め、眉尻を下げたところを見るにお気に召したらしい。

 しかし、喜んだところで悪いが、ナスの旨さはまだ先があるのだ。

 タッパーに広げておいた豚バラ肉をつまみ、網の上へ置く。

 脂が溶け、肉から滴り落ちて薪の上に落ちて白煙を上げる。全体が白っぽくなってきたのを見計らい、なるべく脂を落とさないようにトングで自分の皿へ引き寄せた。

 味付けは全くせず、ただ焼かれた肉でしかない切り身の上に、先程のナスの身を軽く生姜醤油に絡めてから、味付けされた身を肉の上へ。

 肉でナスの身を巻くように丸めてから、それを頬張った。

 ナスと油の相性ってのは、なんでこんなにも素晴らしいのだろうか。

 先程の生姜醤油と混ざりあったナスの甘さも十分美味いが、肉と脂に混ざり合うことでコクが生まれる。

 さらに、脂が煙となって肉を燻したことで、ほのかに付いた燻香が旨さを増幅していた。

 咀嚼しながらトングを品川に差し出す。

 品川はおっかなびっくりといった手付きで豚バラをつまみ、俺の行なった手順を真似た。

 そして、出来上がったナスの豚バラ巻きを一口。一瞬目を見開き、そしてより一層目尻を下げた。

 よしよし。遠慮なんてしないでたくさん食えよ。


 他にも網で焼いただけの野菜や、柚子胡椒を塗った鶏もも。サシの入った牛はわさび醤油。サンマは大根おろしが無かったのが痛かったが、醤油だけで十分美味しかった。

 品川が特に気に入ったらしいのは、肉巻きナスと、簡易ちゃんちゃん焼きだ。

 アルミホイルに鮭の切り身とシメジ、薄切りにした玉ねぎを置き、料理酒とバターを一欠片入れ、ニンニク味噌を載せたら軽く綴じて網の上へ乗せる、

 そうして出来上がったちゃんちゃん焼きは、生臭さの消えた鮭が塩辛さとニンニクの旨味と混じり合い、ほのかに香る優しいバターの香りが強いニンニク臭を纏め上げる逸品だ。その上、焼き一辺倒だった調理法の中で、一風変わって蒸し料理がいいアクセントになってくれていた。

 逆に、苦手だと判明したのが、しいたけだった。どうも香りと食感が苦手らしい。

 笠を下にして網に載せたしいたけが熱で汁を笠の中に溜めた所に醤油と七味を振るという、俺の好きなものの一つなのだが、口に付けた一枚をなんとか食べきったものの、二枚目に手を伸ばすことはなかった。

 種類は多く、量は少なくを基本に用意した焼き肉は、概ね満足してもらえたようだった。

 

 食事の後半か後半に差し掛かり、食べるペースが落ちてきた頃を見計らって沸かしておいたお湯で、麦茶を淹れた。

 麦茶なのは、この後の就寝に備えてノンカフェインの飲み物を選んだ結果だ。

 流石に食わせすぎたのか、マグカップを受け取った品川が椅子に座ったまま天を仰ぐように星空を見ている。


「こう言うのもたまには良いだろう?」

「はい……。いろんな味に食感。焚き火も暖かくて、初めてでしたけど、ご飯って楽しいって思いました……」


 かなり、食べ過ぎちゃいましたけど。

 恥ずかしそうに口角を緩め、テーブルに置いたカップの取っ手に指をかけたまま呟く。


「しかし、困ったな」

「えっ? ――なっ、なにかご迷惑をっ!?」


 飛び起きるように空に向けていた顔をこちらに向ける品川に、安心させるように手を振ってから、リュックの中に手を入れた。


「デザート、用意してたんだよ。ほら」


 見せつけるように机に置いたのは、真っ赤に熟れたリンゴだった。


「知り合いから譲ってもらったんだが、最後にこいつを食べようかと思っ――」

「お願いしますっ」

 

 食い気味に意思を示した品川に、少々面食らってしまう。

 即答が恥ずかしかったのか、さっきの意気込みはどこへやら、俯いて言い訳を口にし始めた。

 曰く、果物が好物とか、りんごが真っ赤で美味しそうだったとか、普段甘いものは滅多に食べられないとか、見る機会はあっても許してくれないとか。

 後半の理由に、朝のように表情と心情を切り離しながら、許可を出すと、品川は何度もお礼を口にした。


「デザートは別腹って言うからな。だから、そんなにかしこまらなくて良い。ただせっかくだから一手間加えたいと思うんだが、それには少しだけ時間がかかる。品川も一度は腹一杯になった訳だし、腹ごなしに少し散歩してきたらどうだ?」

 

 提案に、お腹を一撫でした品川は、はにかみながら「そうします」と立ち上がった。

 

「ちょっと待て。んー……」


 周囲は安全を確保するための魔法に包まれているが、それでも万が一のことがあってはならない。

 脳内検索を経て、便利な魔法を見つけると、それを品川に掛けた。

 品川の全身を薄い膜のような光が包み、光源となる野球ボール大の光の玉が肩上辺りに浮かぶ。

 

「……これは?」

「万が一が有ってからじゃ遅いからな。安全対策と、光源と、俺への連絡が出来るようになった。連絡はその光の玉に話し掛けてくれ」


 これまでの魔法の中で一番魔力を消費した。これは危険度によって、軽度は保有者への影響を遮断したフラッシュや、重大事態には、レーザーのような殺傷力のある反撃が行われる自動迎撃システムだ。『大切な対象に負担を掛けず守る精霊を創造する方法』と言うらしい。衝撃を吸収する防護膜や、連絡機能はオプションでついてくるようだ。

 自分が行使したものではないものの、それでも不可思議な力が自分に掛かっているのが嬉しいのか、品川が立ち上がってターンをし、光球が少し遅れて付いてくるのをみて微笑む。

 

「ありがとうございます。……行ってきます」


 お辞儀に手を振って答え、木々を照らしながら森の奥へ進んでいくのを見送った。

 さて、りんごの準備だ。

 あと、まだ少し食い足りないので、なにか焼くことにした。



 麦茶をすすりながら湖畔を眺めていると、下草を掻き分ける音が聞こえた。


「おかえり。出来てるよ」


 音の主はもちろん品川だった。

 ちなみに追加で食べたのはしいたけ焼き。好物であることと、ヘルシーな事から大量に持ってきてたからだ。


「ただいま戻りました。お散歩楽しかったです」


 暗い森の中を散歩中、青白くほのかに光を放つ花を見つけたようで、小さな花畑になっていた光景がとても幻想的だったそうだ。


「良いな。今度見に行ってみるか」

「はい。ご案内します」

「楽しみだ。――熱いうちに食べるのが一番だから、まずは食べちゃいなさい」

 

 俺の言葉で初めて、テーブル上の存在に気がついたようだ。

 テーブルの上には、紙皿に乗ったアルミホイルを丸めた玉と、ナイフとフォークが置いてある。

 りんごの準備として出てきた謎な物体に品川が首を傾げていた。

 

「これは半分に切ってやると――」

 

 説明しながら真上から縦一文字にナイフで切り分けると、中から熱を帯びて色を濃くしたりんごの断面が見えた。本来あるはずの芯と種は取り除いており、その代わりにバターとはちみつを混ぜ合わせた粘性のあるソースと、一緒に入れておいた干しぶどうが照りを見せている。

 これは簡単にできる焼きリンゴだ。アップルパイのような味わいと、火を通すことで甘みを増した、焚き火料理のデザートにふさわしい一品だと思う。


「熱いから気をつけて。好みでシナモンを掛けるといいよ」

「凄いです……。頂きます!」

 

 少々不器用ながら、ナイフとフォークでりんごを切り取り、それを芯部分のソースに絡めて口に運ぶ。

 幸せそうに目を細め、フォークを掴んだ手を頬に当てる仕草に、大成功を確信した。

 すでにある程度食べていたにも関わらず、結構なペースでりんごが消える。満足そうにふやけた表情を浮かべる品川に、明日の予定を告げた。


「明日は、せっかくだから対岸の村――薄く夜警の明かりが見えるだろ? あそこまで行こうと思う」

「はい。……私達が行っても大丈夫なんでしょうか」

「一度行ったことがあるよ。みんな気の良い人ばかりだった」

「分かりました」

「片付けは明日にして、ちょっと早いがそろそろ寝るか。――っと、そうだ」

 

 比較的使用頻度が高く、簡略化出来始めていた魔法を準備する。

 俺と品川の二人を対象に魔法を行使すると、すぐに効果が現れた。


「……なんか、肌の感じが?」

「うん。焼き肉の後だからな。『衣服と体を清潔にする方法』を使っておいた。案外匂いってこびりついてるからな」

 

 使った魔法の説明に、小さく「清潔化(クリーンアップ)ですね、便利……」なんて呟いていたが、気にせず自分のテントに足を向けた。


「もし夜に歯を磨くんだったら、ヤカンに白湯が入ってる。歯磨きセットは品川用のリュックの中だから。それじゃおやすみ」

「はい、おやすみなさい」

 

 就寝の挨拶を交わし、テントに入る。

 寝る前の一服に火を灯し、インナーマットに寝転んだ。

 俺は、品川に良い様にしてやれているのかと、そんなことを考えながら。

お読みいただきありがとうございました!

次回は一週間掛けずに投稿出来る様に頑張ります。


ここから先、しばらく回想シーンが続く予定です。冴継自身や品川の関係性が語られる予定ですので、よろしければどうかお付き合いくださいませ。

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