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第1話 二人でキャンプに出かけよう!

※※※※※※※※※※


下記注意書きに不安を覚える方は、お戻りになられる事をご提案させて頂きます。


・一人称。

・無駄な長文。

・少女への酷い状況描写


※※※※※※※※※※



※見切り発車の投稿の為、修正をする事がございます。

 一人暮らしには十分の()()()()()古びたアパートの一室で、俺――内園寺冴継(ないおんじさねつぐ)は、すりガラスの向こうに居る人物の支度が終わるのを待っている。

 中年に差し掛かろうとする三十七歳にして、こんな些細な事で動揺しているのもなんとも情けない話だ。

 しかし、家族を除いて、誰かが自室に居るなんて、それこそ学生の頃まで遡らなければ経験がない。

 ましてや……。

 思い耽っていた時だった。乾いた、木枠の引戸が滑る音に気付いて、体ごと戸の方を見る。

 台所や風呂トイレ、玄関などの生活空間を隔てていた戸の向こうから姿を見せたのは、ひとりの少女だった。

 十二歳にしては小さいと言わざるを得ない、百三十センチくらいの身長。

 闇夜を凝縮したような黒髪は背中に届く位のロングヘアだが、その髪質は酷く痛み、適当とも言える不揃いに切られた毛先の歪さもあって、艷やかという表現は使えそうにない。

 肉付きも悪く、骨と皮といった表現がしっくりくる。そしてその肌も白くはあるが、美しさの形容では無く、病人のそれだった。

 黒目ではあるが、良くある茶色を濃くしたものではなく、灰を混ぜたようなダークグレーの瞳が、唯一と言っていい特異性。もっとも、本来はキレイなその瞳も、状況を理解出来ていない事と、持ち前の垂れ目がちな目尻のせいで、今にも泣きそうだったが。

 

「……あ…あの」

 

 消え入りそうな声をかけられて、我に返る。

 

「ごめんごめん。良く――いや、しっかり着れてるね!」

 

 似合ってる。なんて褒め言葉は、時として嫌味になりかねない。正直危なかった。

 何故なら、彼女の身にまとう衣服が現代日本に似つわかしく無いのだから。

 

 

 彼女が身につけている服は、古く粗末な上下。

 麻のような荒い生地のTシャツは、胸元が広く∨字になっていて、その広がりを狭めるためにボロい革紐で編まれている。

 サイズは彼女よりも圧倒的に大きいが、それもそのはず、元々は俺の服だからだ。

 下はふくらはぎほどの長さのハーフパンツだが、やはり荒い生地で作られており、裾がボロボロに裂けている。

 ちなみにこのパンツは、俺の服を加工して作った。

 小さい彼女が俺のサイズのシャツを着ているものだから、シャツの裾が膝上くらいまで来ている。一見ワンピースとも言えなくないが、全体的なボロさのせいで、おしゃれとは程遠かった。


「で、でも、アレだ。着心地は悪くないと思うんだけど、どうかな?」

 

 内心無茶なことを言っていると自覚しながら問うと、彼女は僅かに首を縦に振った。

 その姿を見て、胸を撫で下ろす。

 彼女に渡したこの服には、手縫いだが加工がしてある。

 某大手ファストファッションの、速乾性の高いサラサラな触り心地の肌着(ちなみに俺の愛用ブランド)を裏地として縫い付けてあった。

 だから肌に触る感じは悪くないはずだ。

 そのことを思い出して、同時にある事に気がついた。


「あれ? お腹周りきついの苦手?」

 

 加工の際、俺の胴回りでは格好がつかないだろうと、ウエストに当たる部分に革紐を通して絞れるようにしてあるのだが、彼女はそのまま着ているだけだった。


「じ、上手に……でき、なくて……」


 絞り出した声と共に、段々と目尻が下がっていく。

 次いで自分の不器用さを役立たずと評し、謝罪の言葉を口にした。

 その言葉に、俺は柔らかく見えるように笑顔を作りながら、彼女を手招いた。

 

「ごめんなあ、オジサンが勝手に後ろに付けちゃったのが悪かったんだ。今度はきちんと相談するから許してね?」


 彼女の首が横に振られるのに安心してから、後ろを向くようにお願いした。

 素直に後ろを向く彼女に、出来るだけ優しい声色で具合を聞いて絞っていく。

(危なかった。この娘にこんな顔は見せられないからな)

 きっと、今の俺の顔は酷く歪んでいるはずだ。

 出来ない事を恐れ、それを自分が悪いと言い、挙げ句には、だから自分に価値が無いのだと、存在する事に謝罪をする少女。

 こんな歪んだ心を創り出した()()()への嫌悪が、憎悪に移り変わっていくのを感じる。

 俺は、あの女を許さないと誓った。

 

「よし、完成」

 

 きつすぎず、ゆるすぎずの状態に絞ってから声を掛けると、彼女は一歩離れて、くるりと回って見せると、絞りより先の裾が慣性によって浮き上がった。

 一周半ほど回った彼女が、深く頭を下げた。


「あっ、ありっ! が、とうござ、います……」

 

 段々と声量が萎むのに少し寂しく感じながら、どういたしましてと返事を返した。

 

「さて! 準備は完了したし、そろそろ出かけようか!」

 

 寂しさを吹き飛ばすように少し大きく声を上げると、立ち上がって彼女に手を差し伸べた。

 俺の身長が百七十半ばだから、格差が激しい。

 そんな俺の手を、軽く怯えつつそれでも取った彼女の手に、少しだけ力を込めた。


 

 手を引いて、向かうのは襖で仕切られたもうひとつの和室。

 四畳半の、寝室を兼ねた生活の本拠地は、まあ、今回の提案が突然のことだったことの証に、整理整頓が中途半端だ。

 彼女を見ると、不安と不思議さの混ざった表情を浮かべていた。

 数歩先の、押入れの前で立ち止まると、少しだけ汚れた自分の分と、真新しい彼女の靴をカラーボックスから取り出す。

 先に靴を履き、まだ固い新品の靴に悪戦苦闘する彼女を尻目に、そばに準備しておいた大きなリュックと、中ぐらいのボストンバッグを肩にかけた。

 

「準備はいい?」

 

 返ってきた頷きを見て再び彼女の手を取ると、目の前の押入れの引戸を開け放った。

 押入れは、本来あるはずの中板が取っ払われた一つの空間になっている。

 違うところは一つ。風呂場を隔てているはずの奥の壁に、洋風の扉がある事だ。

 一畳程の押入れに半歩踏み入れて、扉を開く。その奥にあるのは、ただただ真っ白い空間。

 

「怖くないよ」

 

 握った手に力が込められたのを感じ、彼女に声をかけた。

 まあ、実際には不可思議なこの状態に不安を覚えるなというのも酷な話だと思うが、こればかりはどうしようもない。

 歩みを続ける俺の腕に、彼女からの軽い抵抗があったが、それでも進む俺に諦めたのか、彼女の手の力が緩んだ。


「それじゃあ、出発進行!」

 

 言って。俺と彼女は、白い空間に入った。

 

 

 空は濃い青が広がって雲ひとつない。

 太陽の光は少し熱くはあったが、ゆるく吹く風と、乾いた空気のお陰で過ごしやすい暖かさだ。

 俺達が立っている場所は、踏み固められた土の道の上。左側には傾斜のついた、なだらかな草原が広がっている。

 右手側には少し先に広がる深い森と、道と森の間にはくるぶしくらいの高さの下草が生えていて、今踏みしめている道よりも細い、人一人分くらいの細い小道が森に続いていた。

 彼女に目を向けると、これまでシワのよっていた眉間が緩み、代わりに大きく見開かれていた。

 ついでに落ちた顎を閉じたり開いたり。さらには目の前の光景が信じられないらしく、目をこすっては周囲を見渡し、変わらぬ光景に再び顎を落としていた。

 そんな彼女の様子が可笑しくて、笑い声を漏らしてしまった。

 笑い声に気付いた彼女が、泣きそうな目で俺を見上げた。


「ここ……どこ、です、か?」


 もっともな質問に、繋いだ手を一度離して、頭を撫でてやりながら口を開いた。

 

「最初に言った通りキャンプ地だよ。――『異世界』って言う、ね」

 

 これまでの、感情を殺したような彼女が見せた、驚きで見開かれた目に、俺は再び笑みをこぼした。

お読み下さり、ありがとうございました!


システムが理解できていないため、とっ散らかっておりますが、徐々に勉強していきますので、今しばらくお許し下さい。


感想とか頂けたら嬉しいです。

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