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ありがどお




「キエェェェェェェェェェェェェェェ!」



 一人の青年と会ってから小童が壊れた。

 瞳を充血させて甲高い悲鳴を上げながら、腕立て伏せ、屈伸、力走をひたすら繰り返している。

 小さな身体を気にしての事だろう。

 気にする気持ちはよくよく。よーくよーく分かるが、今はそんな事をしている場合ではない。

 早く魔法を取得して、俺の角を再生してもらわなければならないのだ。

 なんなら小童も魔法で逞しい身体にすればいいのだ。


 なので。


 俺は細やかながら攻撃力もある艶やかで長い尻尾を小童の横腹目がけて大きく振った。

 途端。

 小童が避けるべく上に大きく飛び跳ねたが、甘いと目を輝かせては下降する小童目がけて長く艶やかな睫毛を噴射。

 小童のツボに突き刺さった睫毛のおかげで、動きが一時停止。

 飛んだ俺は落下する小童を背で受け止めて地に降り立った。



「まだ三つしか取得してないんだろう。早くしねえとおまえも俺も願いを叶える前にお陀仏だぜ」

「………ごめん。シダイ」



 背にぐったりとうつ伏せた身体を預けたままの小童に、気持ちはよく分かると言った。



「外観は大事だからな」

「ん。いや。まあ。別に。気になるけど。嫌いじゃないんだ。動きやすいし。けど。あいつの。年相応の肉体を見たら、ちょっと。頭が沸騰しちまって。莫迦だよな、俺」

「ああ。気にしろ、気にしろ。成長には必要だからな。だが、気にしすぎるなよ。俺はそのままのおまえが気に入ってるしな」

「ありがどお」



 ずびり。

 涙を流しては鼻水も流す小童に身体に僅かにでも付けたら振り下ろすと脅せば、瞬時に引っ込ませた小童は素早く体勢を整えて背に跨った。

 ふんと俺は鼻を鳴らした。



「ならこのまま行くか。白いものが多くある場所に心当たりがある」

「マジか!?」

「ああ」



(滅んでなければいいが)



 一抹の不安を抱きながら、俺は駆け走っては早い段階で地を蹴り飛ばし、空へと飛び立った。









「んえ?」



 少しばかり翼が疲れたと感じ始めた頃に辿り着いた、白ハリネズミの里。

 危惧は不要だったようで、眼下には数多くの白ハリネズミが確認できた。

 そして、白ハリネズミが創り出す白バラも。

 俺が空中であいつらが克明に見える位置に留まったまま小童に下を見るように促すと、小童は変な声を出したかと思えば、次には取得できたと快哉を叫び始めた。

 苦労話を聞いていただけに早いと思ったが、早いに越した事はないのでかなりの朗報である。

 このままバシバシ取得してほしいものだ。



「すげー!一気に二つも取得できた!」

「二つと言わずもっと取得できるだろうよ」

「え?」

「白ハリネズミは白いものを収集するからな」

「え?え?マジで?」

「ああ。だから、もしかしたら」

「もしかしたら?」

「一気に取得できるかもな」

「マジかあああああああ!」

「ああ」



 早く行こう早く協力してもらおうと喧しい小童に煩いと思いながらも、口角を上げたまま白ハリネズミたちの元へと駆け降りて行った。









(2022.3.18)







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