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そして朝が来る  作者: 銀猫夏祭
3/3

初めて見た。

 その2日後、僕は義眼を手に入れて退院した。もともとの目がどんなだったかなんて自分ではわからないから、その日も朝から来ていた築島に聞くと、

「ちょっと違う…けど、これはこれでなかなか綺麗ですね」

と、満足していない訳ではないらしい返事がかえってきた。


 昼から、ちょうど学校も休みだったので、

「本屋へ行きたいです」

と言う築島の後に引っ付く形で出かけることにした。

 義眼を入れてはいるものの、やはりどうしても表情が不自然なので、上から眼帯をしている。片目が隠れているせいで焦点が合わず、歩こうとしてもふらついてしまう。もっとも、眼帯を取ったところでその下にあるべき目玉は偽物なのだから、それで歩けるようになるはずもないのだけれど。

 あっちへこっちへと足取りのおぼつかない僕を見るに見かねてか、築島はいきなり僕の手を取ってすたすたと歩き出した。

 驚いた僕が、ちょっと、と声を上げると、

「……嫌でした? 見ていて危なっかしいので、手助けをと思って」

と言う彼女の顔は、いつもと違って心配の色を浮かべていた。もっと言うなら、泣きそうにも見えた。

 僕は慌てて、

「そうじゃない、ただ、びっくりしただけ」

と弁解する。

 彼女はようやく安心したようで、うっすらと、本当にうっすらとだが、笑顔を浮かべた。

「良かった」

呟いた声は小さくて、聞き取りづらかったけど、僕には確かにそう聞こえた。

「その顔のほうが、いい」

僕がそう言うと、築島は数秒沈黙して、

「そう、ですか」

と言ったっきり、押し黙ってしまった。表情もいつものすました顔に戻っていた。耳の端が、僅かに赤らんでいた。

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