初めて見た。
その2日後、僕は義眼を手に入れて退院した。もともとの目がどんなだったかなんて自分ではわからないから、その日も朝から来ていた築島に聞くと、
「ちょっと違う…けど、これはこれでなかなか綺麗ですね」
と、満足していない訳ではないらしい返事がかえってきた。
昼から、ちょうど学校も休みだったので、
「本屋へ行きたいです」
と言う築島の後に引っ付く形で出かけることにした。
義眼を入れてはいるものの、やはりどうしても表情が不自然なので、上から眼帯をしている。片目が隠れているせいで焦点が合わず、歩こうとしてもふらついてしまう。もっとも、眼帯を取ったところでその下にあるべき目玉は偽物なのだから、それで歩けるようになるはずもないのだけれど。
あっちへこっちへと足取りのおぼつかない僕を見るに見かねてか、築島はいきなり僕の手を取ってすたすたと歩き出した。
驚いた僕が、ちょっと、と声を上げると、
「……嫌でした? 見ていて危なっかしいので、手助けをと思って」
と言う彼女の顔は、いつもと違って心配の色を浮かべていた。もっと言うなら、泣きそうにも見えた。
僕は慌てて、
「そうじゃない、ただ、びっくりしただけ」
と弁解する。
彼女はようやく安心したようで、うっすらと、本当にうっすらとだが、笑顔を浮かべた。
「良かった」
呟いた声は小さくて、聞き取りづらかったけど、僕には確かにそう聞こえた。
「その顔のほうが、いい」
僕がそう言うと、築島は数秒沈黙して、
「そう、ですか」
と言ったっきり、押し黙ってしまった。表情もいつものすました顔に戻っていた。耳の端が、僅かに赤らんでいた。