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星と帝と少年  作者: 白蓮
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定例会2

 惑星管理局……この機関は各惑星にひとつずつ設置されている。主な業務は惑星・準惑星の周りを周回する衛星の管理や他惑星籍の宇宙船が自惑星周囲の領域として定められている宇宙空間に無断で侵入しないように監視することである。



 今回、マクレーンとアルベルトが訪れたのは地球にある惑星管理局本部である。ほかの惑星に存在する管理局は支部という形で設置されており、その支部が管轄している惑星の管理や監視のみを行っている。しかし、地球に設置されている管理局は地球とその周辺領域、さらに支部から送られてくる周辺領域のデータを参照に太陽系全域を管理・監視しているのだ。なのでほかの惑星に設置されている管理局よりも規模が大きい。



 リムジンから降りた2人が建物に入る。惑星管理局本部は1階に総合受付があり、地上70階地下10階という構造で1階から地上30階位まで吹き抜けになっており建物内を明るく見せる仕組みになっている。

 とりあえず、今日の会議場所を確認しようと総合受付に向かおうとした2人に管理局職員数名が近づいてきた。その中の一人の男性が一歩前に出て深々とお辞儀をした。



「炎帝ローグ・マクレーン様と補佐官ウェスタ・アルベルト様ですね。本日の定例会は地下10階の会議室で行われる予定です。会議開始時刻まで少々お時間ございますが……VIPルームをお使いになりますか?」


 「いや、先に会議室でこれからの準備をしておこうかと思ってな。案内してもらえるか?」


 「承知しました。おい! エレベーター抑えておいてくれ!」



 マクレーンの指示を受けた職員の男性は別の職員の女性に指示を飛ばす。その指示を受けた女性は頷き急いでエレベーターの方に向かっていった。



 「お待たせしました。こちらへどうぞ!」



 二人は職員の先導に従い、地下10階の会議室へと繋がるエレベーターに向かう。エレベーターに向かう途中ですれ違う職員たちが炎帝達の姿を見るや否や立ち止まり深々と頭を下げてきた。炎帝はそれに「ご苦労さん」と声を懸けて応えた。


 職員が用意してくれたエレベーターに乗り、地下へと向かうマクレーンとアルベルト。そのエレベーター内でマクレーンは案内してくれている職員に声を懸けた。



 「他の帝達はどのくらいで到着する予定だ?」


 「水帝様、風帝様が約15分、雷帝様、土帝様、氷帝様が約20分、そして天帝様と地帝様はご一緒にこちらに向かっていると先ほど連絡がありました。約25分ほどで到着です。」

 


 職員は若干緊張した面持ちでマクレーンの質問に答えた。炎帝と補佐官との3人で狭いエレベーターの中にいるのだ緊張しないわけがない。もちろんマクレーンも職員が緊張していることには気が付いている。だが、マクレーンはあえて緊張をほぐすためのフォローはしない。こればかりは経験を積んで慣れてもらわなければいけない。


 せめて心の中でこの職員を応援することにしたマクレーンだがひとつ気になることがあった。



 「……なあ、冥帝はどうした? さっき教えてくれた到着予定メンバーには入っていなかったようだが?」


 「……!? 申し訳ありません! お伝えするのを忘れていました。」



 職員は慌てて二人にぶつからないように静かに頭を下げた。



 「いやいや、謝ることじゃないって。頭も下げなくてもいい。で、冥帝はどうしたんだ?ありえないと思うが急病か?」



 苦笑いを浮かべながらもマクレーンは職員に続きを話すように促す。



 「いえ……冥帝様は炎帝様が到着する10分前にすでに到着されています。これから向かう地下10階会議室の方で補佐官と一緒に待機されていると先ほど冥帝様を案内した職員から連絡がありました。」


 「一足先に到着してたのか……」



 マクレーンは目を丸くして驚きの声を上げた。自分より早く到着している帝がいたこと。そしてその帝が冥帝だということに驚いた。冥帝は普段会議などに出席するときは開始時刻10分前~5分前ぐらいに来て、あまり誰とも話さずに会議が始まるのを静かに待つような性格の持ち主だ。



 そんな冥帝がいち早く到着し、VIPルームも使わずに会議室に待機しているという状況。実は今回の会議でかなり重要議題を取り扱う予定を自分が確認し忘れているという最悪な状況を想定したマクレーンはアルベルトに確認を取った。



 「アルベルト、今回の定例会で何か特別な議題を取り扱う予定入っていたか?」


 「私も確認し忘れを考慮し、もう一度全てのメール・資料を確認しましたがそのような趣旨の文章・メールを見つかりませんでした。」



 タブレットを操作し確認作業を行っていたアルベルトの報告にマクレーンは不思議そうに首を傾げた。



 「だったらなんで冥帝はこんなに早く到着してるんだ……?」



 しばらく、思考の海に沈んでいたマクレーンだが、エレベーターが地下10階に到着したことでその思考を一旦中断した。マクレーンはエレベーターから降りると数歩歩き腕を組みながら突然立ち止まった。立ち止まった彼に降りようとしたアルベルトと開閉ボタンを押している職員は不思議に思いながらも黙って彼を見守っていた。


 マクレーンが立ち止まった理由はありとあらゆる可能性を脳内で想定しそれぞれの対処を考えるためだ。帝に帝位してから今までの間にその思考時間はわずか1分



 「……よし、脳内整理完了。悪いな手間とらせちまったな。」



 思考が終わったマクレーンはまだエレベーターに乗っている二人を向きながら謝罪した。



 「い、いえ……大丈夫です。はい」


 「このくらいの時間なら手間とは言いませんよ。」



 職員はまさか炎帝に謝罪されるとは思っていなかったのか少し動揺していたが、アルベルトは何度かこういう経験があったのだろう、真面目な表情でマクレーンに謝罪に応えた。



 「で、では炎帝様、こちらです。今日の会議はこちらの部屋で行われます。今回の会議で使われる部屋は帝様方と補佐官以外の入室が禁じられているので私の案内はここまでになります。申し訳ありません……」



 職員の男性はどうにか動揺を抑え込み、炎帝たちを会議室の前まで案内した。基本的に帝達の間で行われる会議は防犯上の理由で帝と補佐官以外の立ち入りを禁止している。なので職員のこの男性が案内できるのは扉の前までだった。



 「充分だ。自分の仕事もあっただろうに悪かったな。ありがとさん。」



 マクレーンは職員の前に右手を差し出した。握手を求めてるのだと分かると男性も右手を差し出し握手した。かっちり握手を交わしたあと、職員は二人に深々と頭を下げてエレベーターに乗って去っていった。



 「アルベルト、車内で話した方針に変更はない進めてくれ。それと、想定外の議題が今回の会議で話し合われる可能性がある。すぐにその内容に合う資料を用意できるようにしておけ。」


 「分かりました。」



 会議室の扉の前でマクレーンはアルベルトに最後の方針確認を行う。これから行われる会議を円滑に進めるために絶対に必要な確認だ。惑星の代表でこの場に招集されているのだ。二人の行動でその惑星の品格が決まるのだ。



 「よし!行くか!」



 マクレーン自ら会議室の扉の前に立ち、そして勢いよく扉を開けた。



 


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