プロローグ2
西暦3226年……人類の一部が地球から他の惑星にに移住して10年の月日が経過した。
地球に残るという選択肢を選んだ人類は世界大戦の爪跡が残った国々の復興を最優先として生活を営んでいた。
崩壊した建物や兵器や魔法の爆発でボコボコになってしまった道路を修繕し、水道・電気のライフラインを完璧に回復させ、住居の確保や経済状況の把握、国々が一体どのくらいの規模にまで国力が縮小したのか調査が行われた。
建物や道路は土属性の魔法が使える土木作業員達が、水道・電気のライフラインは水属性もしくは雷属性が扱える水道局や電力社員が急ピッチで復旧を目指した。
住居の確保も昔と違って驚異的なスピードで行われた。
20世紀の頃はマンションや一軒家などを建造するために1~5年の時間が必要としていたが、今は1カ月もあれば建造できるようになっていた。そんなに早期に作ってしまうと様々な問題が起きてしまうのではないかと思うもしれないが、近年で建物の耐震性や耐久性が大幅に上がり早期建造でも20世紀に作られた建物よりも頑丈な建物を作ることができるようになっている。
地球の環境、生活水準は10年間でほぼ元通りになったといっても過言ではない状況であった。
一方、惑星に移住する選択を選んだ人類は生物が宇宙服なしで地球のように生活することが出来る土地を作ることを最優先とした。
地球から宇宙船に乗って移住してきた人類は始め、自分たちが移住先の惑星まで乗ってきた超大型宇宙遊泳船を人類の拠点としていた。この宇宙船は一見普通のジャンボジェット機のような形をしている。しかし、ジャンボジェット機とは全く別の代物である。
まず、大きさが規格外だ。全長はなんと1000メートルもある。通常のジャンボジェット機の約50倍の大きさだ。機内は4階建て。こちらも小さなマンション並の高さくらいに設計されている。搭乗可能人数は操縦士、スタッフを含め1万人。内装は通常の飛行機の内装とほぼ同じ。すべての座席がプレミアムエコノミークラスで移住者が移動中に極力ストレスを感じないようにデザインされている。さらに移住先の惑星で当分の間拠点として利用できるようにジャンボジェット機の形から小さなホテルとして利用できるように仮設ホテル変形機能がついている。この変形機能は機内に人が乗っていても変形できるように細かく設定されていて、さらにホテルに変形しているときに他の変形した宇宙船と連結できるようになっており移住者同士でのコミュニケーションを取ることもできる。
この規格外の宇宙船が移住者のために……一つの星につき25万機
8つの星への移住計画だったため200万機が生産された。
惑星・準惑星移住者はこの宇宙船から新生活をスタートした。
始め数カ月は宇宙船内での活動のみだったため作業に手間取りなかなか活動範囲を広げることが出来なかった。しかし、食料生産環境、娯楽施設の建築、人口日光の完成が進んでくると人々の生活水準が向上し、宇宙服を着ていないといけないという条件があったが活動範囲を5~9年目にして8つの星が全域まで広げることに成功した。全域を活動範囲にするまで星々で誤差が出てしまうのは仕方がなかった。特に木星は他の惑星よりも直径が大きくその分時間がかかってしまった。それでも9年で全域を活動範囲にすることができたというのは驚きだ。
そして10年目のほぼ同時期に地球以外の惑星である計画が実行された。
環境改造計画である。
これは自分たちの新たな生活の場となる惑星を地球と同じ環境にするために惑星内にある氷を一気に熱で氷を溶かし、それによって発生した水蒸気で雲を発生させ雨を降らす。その雨によって出来た海のなかに光合成を効率よく行ってくれる植物を投入する。すると植物は光合成を始め酸素を放出し始める。海の中で大量に生成された酸素が大気中に放出されやがて集めりオゾン層を作りだすという地球誕生から生命陸上進出の環境変化を大幅に時間短縮し再現する計画である。
惑星に移住する前……地球での惑星移住準備の頃から環境改造は計画されていた。
最新鋭の技術と卓越した魔力を持つ人間たちがいれば実行することができるとスーパーコンピューターのシュミレーション結果が示したため8つの惑星にシュミレーションに当てはまる人材が平等に行き渡るように調整してきた。
この計画が成功すれば惑星に移住した人類も地球と同じような生活ができるようになるだろうと期待されていた。
西暦3226年から3227年の1年間の間に8つの惑星で計画がスタートした。
結果は……ぎりぎり成功した。
まず、太陽から近い水星、金星、火星、木星が比較的早めにオゾン層の形成に成功した。
オゾン層形成から5カ月で惑星全域がほぼ地球と同じ大気成分になったことが確認された。
地球より太陽に近い水星、金星は紫外線問題が特に重要課題だったためこの成功は水星民、金星民の希望となった。木星に関しては太陽系の惑星の中で最も多きにので全域をオゾン層で覆うことが出来るのか不安視されていたが杞憂だったようだ。
問題が起きたのが土星、天王星、海王星、そして準惑星の冥王星である。
この4つの惑星は太陽からかなりの距離があり、太陽からの光が上手く届かず、植物がうまく光合成することが出来なかったのだ。
しかし、この4つの惑星は不測の事態のために対策を立てていた。
太陽からの日光がうまく届いていないことが判明した段階で4惑星は人工太陽を複数個宇宙に打ち上げたのだ。
人口太陽とは簡単に言うと核融合炉で作った疑似太陽である。
大きさは直径5キロメートルの50個ほど連結させた大きさである。地上で連結してしまうと宇宙に打ち上げることが出来ないため宇宙空間で連結し完成させた。ドーナツのような形をしている特殊な装置に磁場コイルを巻き付けて超強力な重力ゲージを作り、水素原子融合に必要な超高温の気体を封じ込める構造を作る。そして点火し放電させプラズマを生成、その過程で生まれた膨大なエネルギーを使い不足している太陽光の代わりとなる光を作り出した。
水星、金星、火星、木星に遅れること数か月……土星、天王星、海王星、冥王星もついに惑星全域にオゾン層の形成に成功。
それと同時に後々問題になるだろうと懸念されていた日照問題も解決することに成功。人類はこの超大規模な計画を完遂して見せた。
西暦3227年7月……人類はついに太陽系惑星7つと準惑星1つで液体、気体、日光そして領土を手に入れた。