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ギルド心臓部の町ルナールシティ 闘技場

「さぁもっと来いよ。まだ終わりっていうわけじゃねーだろ?」

 バルザード目掛けて何度の剣を振り下ろすが一向にダメージどころかすり傷1つ付けられないユーリ。そんな時バルザードの口から謎の言葉が。


「正直に言え。魔法を使うために嬢ちゃんをそんなにしたんだろ」


 とある昼下がりの帝国付属高等訓練校ていこくふぞくこうとうくんれんこうの訓練場。私の視線の先には騎士学科教官に指導を受けている幼馴染の姿が。


 「おっらぁぁ!もう1回やってみろぉぉユゥゥゥリィィィ――!」

 獣のような雄たけびでユーリを指導しているバニッシュ教官。治癒学科生の私にはあまり関わりのない教官だ。この光景を見るとちょっとホッとする。


 「ふっ!」

 吐息と共に帝国式剣術の型に入るユーリ。そして技を放つ、が。


 カランカラン


 技の途中で持っていた剣を落としてしまう。剣技は得意な方であるユーリが剣を落とすなんて珍しい。


 「ユゥゥゥリィィィ――!なんだそれはぁぁぁ!そんな技教えた覚えはないぞぉぉぉ!勝手に技を作り変えるなぁぁぁ!」

 顔を真っ赤にして怒るバニッシュ教官。私だったら怖くて委縮してしまう。だがユーリは


 「えー、いいじゃないですか。どう考えてもこっちの方が効果的ですって。相手の意表を付けますし」

 委縮するどころか食ってかかる。ここまで傲慢な帝高練生はユーリぐらいのものだと思う。


 「バッカヤロォォォそう言うのはちゃんと技を完成させてからいうものだぁぁぁ!」

 もうこれ以上真っ赤にならないと思われた顔が更にもう一段階赤くなる。


 「えっじゃぁ完成させてもいいんですか?」

 その言葉を最後にユーリはバニッシュ教官の鉄拳によって地面へひれ伏し、再び起き上がることはなかった。

 

 「さぁもっと来いよ。まだ終わりっていうわけじゃねーだろ?」


 「もちろん、今のうちに余裕ぶっこいてろよ、おっさん」

  再び正面からバルザードに斬りかかる。だが


 「無駄だ」

 ギャーン

 やはり剣はバルザードを切り裂くことなく体の表面で止まってしまう。だが気にせず何回も剣を振り下ろす。

 

 「はぁはぁはぁ…」

 もう十分は同じことを繰り返しているだろうか。頭目掛けて、腕目掛けて、足目掛けて。背後に回り込みもした。だが結果は同じ、どれもこれもバルザードの肉を切り裂くには至らなかった。


 「なぁ俺も動いていいか。そろそろ魔法を使わねーと死ぬぞ?」

 攻撃宣言と不可解な言葉を発し、初めて自ら歩を進めるバルザード。だがその足取りは重く、走らずに歩いている。思わず見入ってしまう。その時


 「行くぞ」

 その掛け声と共にバルザードの体が消えた。と思った次の瞬間、突如目の前に現れ、すでに木刀を右斜め上へと振り上げ、俺の左脇へと狙いを定めている。相手の狙いを確認し、すかさず防御の構えを取る。その防御目掛けて木刀が振り抜かれる。


 ギャリリリイィィ 

 剣と木刀が衝突し、衝突音が鳴る。普通ならそこで剣撃は止まる、のだが。

 

「ぐぅっ!?」

 バルザードの木刀は俺の剣の防御ごと俺の体を勢い衰えぬまま押し、そして吹き飛ばした。


 「ぐっはっはっ…ふぅ」

 20メートル程地面を転がり、ようやく止まる。あのおっさん、ただの一振りでここまでとは。やはり只者ではない。


 「まだ続くぞ」

 ようやく立ち上がり、剣を構えた矢先、後ろから声が聞こえてきた。すぐさま振り返り防御態勢を整えたと同時に俺の体が再び宙に浮き、吹き飛ばされる。


 「これは連撃だ」

 宣言をするほど余裕なのか。そうだろう。俺はいまだにバルザードにダメージを与えられていないのだから。


 「ぐっう」

 防御をしようとも威力がけた違いに強く、体が宙に浮く。転がる勢いが止まりかけたその時


 「連撃って言ったろ」

 大勢を立て直す前にはすでに俺の停止地点で構えていたバルザード。再び防御をすべく体を無理に捻じ曲げ剣を構える。


 「ほう、これに間に合うとはボウズ、なかなかやるな」

 相対して初めて称賛の言葉を漏らすバルザード。だが余裕綽々な顔で言われてもそんなの嫌味にしか聞こえない。続けて2撃3撃4撃…


 「本当に大したものだ。10撃全て防いだのは片手で数え切れるほどの人間しかいないって言うのに。こんなボウズに防がれるとはな」

 片手で数えるほどの人間しかいないというのは本当なのだろう。闘技場に来ていた観客たちの罵詈雑言が止まり、闘技場は今や静寂が包み込んでいた。


 「さぁ、俺の番は終わりだ。再びボウズの番。次は攻撃で俺を驚かせてくれよ」

 剣を下ろし、一見無防備な姿になるバルザード。だが先ほどの言動や実際の防御力から見て、あれが構えなのだろう。


 「なぁおっさん、おっさんが改造人間じゃなく、魔法も使っていないんならどうやって剣撃を防いでるんだ?」

 取りあえずダメージを与えられなければ勝てない。相手はアクリアを勝負を受けなければ処分するとまるで物のように扱ってきた輩だ。負ければ何をされるかわかったものじゃない。例えどんな手を使っても、敵に弱点を聞こうとも勝たなくてはならない。


 「あー、そう言うのって普通戦っている敵に聞くかぁ?ボウズ、お前ってそこまで世間知らずだったのな。まぁいいぞ。俺の連撃を防いだ報酬だ。特別に教えてやる、いいか」

 闘技場が更に静寂に包まれる。恐らくここにいる観客たちも知らなかったことなのだろう。誰もが一語一句聞き漏らすまいと身動きひとつしない。


 「強化したいところに氣を集める。それだけだ」


シーン

 闘技場には未だに静寂が続いている。だがその種類が変わった。言葉を聞き逃すまいとする静寂から、理解不能、思考停止の静寂へと。そして


 「ふざけてんじゃねーよバルザードさぁん!そんな訳の分からない力で剣を防げたら鎧なんかいらねーよ!」

 1人の観客が罵声なのかツッコミなのかよく分からないが声を上げる。


 「そうだよ、アンタの不死身の秘密がやっと聞けると思ったのになんだそりゃぁ」

 「まだなにか隠しているんじゃないかぁ!?」

 それを皮切りに闘技場のあちらこちらからバルザードに向けて非難が浴びせられる。


 「うっせーな。俺だって知らねーよ。ただ俺の地元では男も女も昔から氣を使っているんだよ。女が魔法を使うのと同じだ。お前ら自分の体が何で動いているのか説明できるのかぁ!」

 観客に向かって怒鳴るバルザード。今だ!


 ギャァァン


 「ちっ、気づかれたか」

 バルザードの体に剣がぶつかる直前、防御態勢を取られ木刀で防がれてしまった。


 「あっぶねー。ボウズお前、今のはちょっと卑怯じゃねーか?アヴァタイト帝国の騎士様のやることじゃねーな」

 知ったことか。俺は何が何でもおっさんに勝つ。だがその前に


 「なんで俺がアヴァタイト出身だと分かった?」

 バルザードはおろかメリルにも俺の出身地の話はしていなかったはずだ。


 「何でってお前、自分の左胸を見てみろよ。それじゃぁ裸で歩いているのと同じだぞぉ」 

 俺の左胸を指さし、指摘する。その顔はあきれ返っていた。ちょっとイラッと来たが言われた通り視線を自分の左胸に移す。


 「あぁそう言えばそうだった」

 現在の俺の服装は左胸に帝国の紋章が付いたワイシャツ、赤いネクタイを巻き、その上におじいさんから貰った黒色の布。下は黒のスラックス、ソックス。一見黒布で帝国の紋章が付いたワイシャツは隠されている。だが俺はメリルによってギルド心臓部の町ルナールシティに連行され、椅子に拘束されていたのだ。いつだって布の下を見るチャンスはあった。それにアクリアは現在無防備だ。何をされても身じろきひとつしないだろう。


 「現在ユーロシオ大陸とサウスガント大陸は国交断絶していたはずだぜ。そのユーロシオ大陸のアヴァタイトの人間がわざわざギルド大国であるサウスガント大陸に来た目的は何だ」

 飄々とした態度から真面目な態度に変わる。


 「それは…アクリアを治すために…」

 過去から来たとは言えず、言葉を濁しながら説明する。


 「それはメリルから聞いた。だからなんでって話だ。魔法関連の疾患の治療なら恐らくアヴァタイト帝国が1番進んでるだろう。クローンを使って攻撃魔法を実現させていたほど狂ってはいるが、間違いなく世界で最先端の魔法知識を持つ国だ。なんでそこに住んでいる奴がわざわざ国交断絶中の大陸まで渡ってきて治す手段を探しているのかって聞いているんだ」

 確かにその通りだ。だがアクリアを魔力を産む機械へと変えようとしたアヴァタイト帝国に頼るわけにはいかない。例え100年経っていようとも。


 「アヴァタイト帝国は信用できない」

 今の俺にはこれしか言う事は出来ない。


 「まぁ口では何とでも言えるよな。ボウズ、その嬢ちゃんをそんなにしたのはお前じゃないのか?」

 俺と後ろにいるアクリアを見ながら核心を突いてくる。


 「それは…その通りだ。あの時、俺がもっと強ければ、躊躇しなければアクリアを救えた

 いくらアクリアを救える可能性が見えて、光が差したと言ってもそれは微かな光。少しの衝撃を与えられるだけで簡単に曇る。


 「それは本当か。それとも嘘か。正直に言え。魔法を使うために嬢ちゃんをそんなにしたんだろ」

 俺の言うことを信じないバルザード。それよりも先ほどから引っかかる。


 「魔法を使うため?」

 先ほども言っていた。魔法を使うためにと言うのはどういうことか。


 「とぼけるなよ。その降魔の剣の素材には術者が思い描いた魔法を瞬時に魔法式に変換してくれる素材が入れられているって言う話じゃねーか。まぁ現在じゃ存在しない素材だっていうらしいが。つまり、その剣に魔法発動に必要な魔力とその魔力を補給する女性の精神が入ってりゃ永久的に魔法を使えるってわけだ」

 思いもしない情報に驚きが顔に出てしまう。思い描いた魔法を魔法式に変換する。そんなの何でもありじゃないか。だが


 「例えそうだとしても、幼馴染をこんな姿にしてまで得たい力じゃない!」

 背中に背負うアクリアの精神が入った剣の重みを改めて感じながら答える。アクリアの精神を削るくらいなら魔法なんか使わない。


 「言っておくが俺はアヴァタイト帝国の剣術を全て知っている。そろそろ魔法を使わねーと死ぬぞ?」

 まるで俺が魔法を使うように仕向けてくる。だが俺は断固として使わない。それに


 「使わなくたって俺はおっさんに勝つからな」


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