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カフェテラス  作者: 蒼
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カフェテラス 8

その日から数日も経たないうちに私は夜のバイトを辞めた。

彼と、吉永さんと少しでも一緒に居たいから

ただそれだけの理由だったけど

なつみママには昼夜両方の仕事が辛くなったからだと説明した。

みんなは引き止めてくれたけど 

吉永さんが嫌がる仕事はしたくなかった。



昼の仕事はそのまま。

吉永さんは本当はそれもあまり気に入ってはいない。

こんなに独占欲の強い人だと思わなかった。

でも毎日会いたいから。ここにいればお昼に毎日会えるから。

なるべくお店の中でも 他のお客さんと喋るのは控えるようにした。

もちろんママさんにも気づかれないように気をつけた。



彼中心で回っている私。

私の中は彼のことでいっぱいで

他の事は何も見えなくなっていく。




それからの私達は急速に距離を縮めていった気がする。

きっと今までこれでもかってくらい

お互いに我慢をしていたから。



三日と空けずに二人きりの時間を持った。

でも抱き合うばかりじゃなくって

時々は食事して、夜景を見に連れて行ってくれたり

二人で車の中でハンバーガーを買って食べながら夜明け近くまで話をしたり

睡眠時間が少なくて、二人でいつの間にか車で眠ってしまったり。

いつも先に目を覚ますのは彼の方だけど・・・。



明け方近くに必ず吉永さんは家に帰る。

そして週末は会えない。

不倫ってもっと辛くて淋しいものだと思っていたけど実際はそうでもなくて

きっと吉永さんが二人の時間を本当に大切にしてくれるから・・・。

一緒に居る間に、ほとんど奥さんの事を考えることがなかった。

彼との付き合いに罪悪感を感じる事すらなかった。





ここ何日かの間に何度も隆志からの着信がある。

吉永さんと一緒の時には携帯の電源は落とす。

だって必要ないから・・・。

でも会えない夜に家に一人で居るときも隆志からの電話には出ない。

今日も家の電話と携帯が交互に鳴っている。

さすがに怒ってるんだろうな。こんな事今までなかったしね。

それでも私は無視を決め込んだ。

隆志とは 別れるつもりだから。



直接会って話せばいいし、そうするべきだと思うけど

隆志に何て言えばいいのかわからない。

本当のことは絶対言えない。吉永さんに迷惑かかるかもしれない。

隆志はそういう人だ。

いつもは野放しの癖にそういう時には何するかわからない。

でも私のこと、昔のようにはきっと想っていないはずだから

意外とすんなり別れてくれるかもしれないけど

それでもやっぱり不安は消せない。



隆志は必ず連絡してからここに来る。突然やって来たりはしない。

留守なのに来たって仕方ないと前に言っていた。

それでも最初の一年位は外で待ち合わせしてあちこちデートした。

クリスマスには街のツリーを見て歩いたり

車で夜の海にドライブして一緒に花火したり・・・。



それが今では、私の事など欲求不満の捌け口みたいなものなんだろう。

でもこれだけ連絡つかないんだから確かめにきてくれてもいいのに。

出逢ったあの時の情熱が今の隆志にあったら、もっと私も熱くなれたかもしれない。

矛盾してるのは私の方なのに、そんな勝手な事を考えていた。

吉永さんには彼のこと前に話しているから知っているはずだけど

その事には何も触れてこなかった。

そりゃそうだよね。言えるはずないよね。



別れてくれなんて・・・・・・



吉永さんは私を送った後も部屋には絶対にあがってこない。

何となく理由はわかっているから

私もうちに来てと言ったことはない。







その日は仕事が終わって吉永さんと食事して夜の街に出掛けた。

なつみママたちに会いたいと思っていたら

久しぶりに行ってみようって言ってくれたから。



「こんばんは。今日はお客さんだよー。」

「あれ。二人お揃いなんだ。」

「ご飯食べに行ったからその帰りです。」

「もしかして・・・そういう関係とか?」


茶化すようにえみちゃんが言った。


「さあ どうかな。そんな風に見える?」

「そんな風以外には見えないよ。ていうか吉永さん、ちっとも来ないしさ。」



久しぶりにみんなと話したけど、吉永さんとの事は私からは何も言わなかった。

みんなも そして隣の吉永さんも何も言わなかったし

堂々と言えるわけ・・・・・無いし・・・。

それにわざわざ言わなくても普通分かるよね。

だってずっと手繋いだままなんだもん。

この世界ではこういう関係について誰も責めたりはしないだけ。


なつみママにオーナーとの惚気話を無理やり話させたりして楽しい時間を過ごした。

なつみママは照れながらも、とても幸せそうだった。

私もね 同じ立場になったの。なつみママ。

心の中でそう呟いた。



その日はみんなと話し込んでしまい

遅い時間になってそのまま真っ直ぐ家に帰った。

帰りもずっと手を繋いだまま、車の中でも信号で止まる度にキスした。

本当はもっと一緒にいたいな。





家の前に着いて驚いた。隆志の車がある。

それまでのふわふわした感情が一気に不安へと変わる。


嘘・・・。


どうしよう。吉永さんと一緒にいるとこ、見られてしまった。

体が震える。

吉永さんがそんな私に気がついたみたいで



「まずいよな。あれか?」

「ごめん。今日は帰ってくれる?」

「一人で大丈夫か?俺が話してもいいけど・・・」


私の声が震えている事に気づいたのか吉永さんはそう言ってくれたけど


「平気。私が話するから。心配しなくていいから。」


そういって私は車を降りた。

そして吉永さんの車が行くのを待ってから

隆志の車の窓を指でコツコツと叩いた。

合鍵持たせてるのに・・・。

車の窓が開いて乗れと一言だけ言われた。間違いなく怒ってる。

やっぱり吉永さんには帰ってもらってよかった。

黙って助手席に乗った。

座席を倒して横になっていた隆志は、腕を目の上にのせて黙っていた。

私の顔も見てくれない。



「ごめんなさい。」

「何考えてんだ?お前は。で さっきのあれ誰?」

声が低い。相当頭にきてるんだ。



・・・・・・怖い・・・・・


「・・・・・友達・・・・・」

「今何時だと思ってんだ?その友達とどこいった?」

「飲みに行っただけ・・・あのさ・・・」

「今日は帰る。明日朝早いから。」

「待って。話あるから。すぐ済むから聞いて。」

「何?やっぱりさっきのと何かあんの?」

「そうじゃなくって・・・・・私たち・・・もう・・・別れよ。」

「・・・・・・・・・それは無理。別れる気ない。」

「なんで?もういいじゃん。私のこと もうそんなに好きじゃないくせに」

「とにかく今日は帰る。お前も部屋入れ。明日またくるから。」

「嫌。別れてくれるって言って。お願い」

「なんでそんなに急ぐ必要あんの?」

「だって・・・」

「帰れ・・・・・怒らせるな。」


これ以上はもう無理。今日は話ができそうにない。

私は仕方なく俯いて、もう一度ごめんといって車を降りた。


部屋に入って力がいっぺんに抜けていった。

暫く玄関で靴も脱がずに座り込んでしまった。



怖かった。ほんとに・・・。

もっと早く話すべきだったのはわかってる。でも言えなかった。

好きな人ができたからと言えばそれで済んだかもしれないけど

どこかでこの恋愛がいけない事だと自覚してるから・・・。

そんな後ろめたさがあったから、隆志にちゃんとした理由が言えない。

どうしよう。別れてくれないって言ってた。

私のことまだ好きでいてくれたの?それとも便利な女を逃がしたくないだけ?

でも吉永さんを好きになってしまった今は隆志の事を恋人だとは思えない。

自分勝手だよね。それもよくわかってるけど・・・


もう・・・・・・無理だよ



隆志 ごめん・・・・・

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