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カフェテラス  作者: 蒼
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カフェテラス 41

その日は綺麗な澄み切った青空で、すっきりと気持ちのいい春風がそよそよと吹いてた。

今日私はノブさんのお嫁さんになる。



「おはよ。ノブさん」

「おはよ。香織、覚悟はできたか」

「任せてよって感じかな」


昨日は実家に帰ってお父さんとお母さんと三人で寝た。

寝る前までに例の?挨拶しようと思ってたのに

お父さんの前に座った途端、早く寝なさいって拒否されてしまった。

お母さんはこっそり、照れてるだけだからって言って笑った。





重厚なドアが開いてノブさんが私を待ってるのが見える。

お父さんと腕を組んでバージンロードを歩いた。お父さんの目が少し赤くって

胸がいっぱいになった私は、歩きながらお父さんに小声で言った。


「長い間、お世話になりました。お父さん ありがとう」


聞こえてないかもしれないけど、それでもよかった。

きっとお父さんには伝わってると思うから。


お父さんがノブさんの前で頭を深く下げた。


「香織をよろしくお願いします」

「はい。必ず幸せにします」


私の花嫁姿を見てノブさんは耳元で囁いた。


「綺麗だぞ、香織。絶対に幸せになってやろうな」

「うん!」




この瞬間を私はきっと一生忘れない。





披露宴にはたくさんの人が来てくれた。

ノブさんの取引先の人はみんな私とも顔見知りばかりなので、そんなに気を遣うこともなかった。


そしていつもの面子も勢ぞろいしてた。

お式の後でみんなのところに言って話をしたけど、恵理子さんはずっと泣きっぱなしだった。

そういえば私も恵理子さんの結婚式の時、そうだったね。

ティッシュを渡しながら呆れ顔のまきちゃん。


「もう、なつみさん泣きすぎだってば」

「ちょっとぉ、私は恵理子なんだからねっ」



まきちゃんとえみちゃんは未だに私の事もゆかちゃんって言う。

私もつい反応して返事をしてしまうから仕方ないと諦めてる。


「まきちゃん、ありがとね。ノブさんに私の居場所、教えてくれて。もしあのままだったら 今日は無かったよ」

「ああ、それね。私じゃないよ」

「え?」

「えみだよ。犯人は」


知らなかった。

てっきりまきちゃんだとばかり思っていたから。

そういえばえみちゃんは?って見回したら、ちょっと細面のイケメンと楽しそうに喋ってる。

確かあの人、ノブさんの取引先の人だったかなぁ。


「えみがね。二人とも好き同士なのになんで離れてるの?そんなのおかしいって言ってさ。自分の事好きだって言ってくれる人そんなにいないんだからって。で、勝手にあんたの事、喋っちゃったんだよね。まあ、私もそりゃそうなのかもなって思ったからさ。最後には仕事場まで教えちゃったよ。結果良ければ全てよしって事でさ」


えみちゃん・・・あんなに苦労したのに・・・綺麗で純粋な心を持ってる子なんだよね。

私はえみちゃんに感謝した。


「しかしあんた、やっぱ変わってるよ」

「え?なにが?」

「普通呼ばないよ。元彼」


そう・・・実は私は今日、一組の夫婦を招待してた。


「別に変じゃないでしょ。旦那様のお友達でもあるんだからさ。元彼ってとこ、強調しないでよぉ」

「でもよかったね。あの二人仲良さそうだし」


やっと泣き止んだ恵理子さんがそう言った。


「そりゃそうでしょ。だってやっと・・・」


あれから吉永さんと話し合って

もう一度だけチャンスを与えた那美さんのお腹の中には今、赤ちゃんがいる。

二人で病院に通ってやっと授かった大事な大事な命。


「実はさ・・・私もどうやら二人目、入ったかも/////」

「えー!ほんとに?おめでとう。恵理子さん」

「でもあの痛みは尋常じゃないからなぁ・・・・・今から怖いよ」

「でも二人目は楽だって聞いた事があるから平気だよ。きっと」


何人でも欲しいなって笑い飛ばした私を見て、またまた呆れ顔のまきちゃん。


「みんな色々あって大変だねー。私はこのままが一番幸せだよ」

「まきちゃんも誰かいい人探してきなよ」

「だからー、私は今が一番いいってば」

「でもブーケ受け取ったのは確か・・・・・」

「勝手に飛んできたのー!」


まきちゃんにもきっと幸せがもうすぐきますように!



そのまきちゃんのお店を貸切にして二次会が行われた。

お互いの両親は披露宴の後に帰って行ったので参加者は友達ばかり。

お父さんは帰る前、何度も何度もノブさんのご両親に頭を下げてた。




結婚式の後、すぐに二人で市役所に婚姻届を出しに行った。

もっと感動するものかと思いきや、市役所のお姉さんの冷めた対応にちょっとがっかりした。

ノブさんに言ったら


「あんなもんじゃないか?あそこで役所中で拍手されてもなぁ」


ふむ、確かにそうかも、と納得した。

でもやっぱり婚姻届出した瞬間には、本当に奥さんになったんだなって実感が沸いた。

今日から私は「秋山 香織」になったんだ。





「ゆかちゃん、新婚旅行には行かないんだって?」

「行くよ。明後日から近場の温泉に二泊三日だけね」

「せっかくだからさ、ハワイとか行けばいいのにー」

「もったいないからいい。お家買わなきゃだし。無駄遣いはしないの。それに私はノブさんがそばにいてくれればどこでもいいんですー」


はいはいと両手をあげて降参ポーズの面々。

気持ちが高揚しているせいか照れくさいという気持ちがどっかいっちゃってる。



「あれ?うちのお姫様は少し酔ってますか?」

「あ、ノブさん。酔ってないよ。全然大丈夫」

「じゃあ人前でそんなに惚気るのはやめなさい」

「あぃ、すみません」


みんなが今日くらいはいいんじゃない?って言ってくれたので、だよね!って返した。

その時、ノブさんの後ろから声がした。


「香織!」

「まこちゃーん。きてくれたの?」

「当たり前でしょ。おめでとう。はい これ。私と隆志から・・・・・」


まこちゃんから渡されたブルースターの花束。


「ありがとう。まこちゃん」

「ごめんね。香織 私あまり長くいられなくて。隆志が待ってるから・・・・・」

「隆志・・・外で待ってるの?良かったら中に・・・・・て訳にはいかないか」

「ううん。私一人で来たから。隆志、今日仕事入っててさ。終わったら電話かかることになってるんだ」

「そっか。じゃそれまで、ゆっくり飲んでってね」


まこちゃんをカウンターにいる恵理子さんたちの所に連れて行って紹介した。

あっという間にみんなに打ち解けていくまこちゃん。

すぐに仲良くなれる彼女たちをある意味すごいと尊敬する。


「香織」

「ん?ノブさん、なあに?」

「ちょっと来て」


ノブさんに呼ばれてテーブル席に言ったら、吉永さんと那美さんがいた。


「那美さん、お腹大丈夫ですか?まさかお酒飲んでないですよね」

「飲んでないよ。でもちょっとくらいならいいってお医者さまに言われたんだけど・・・」

「馬鹿か。飲むなよ。万が一があったらどうすんだよ」

「だから飲んでないでしょ。もう、煩いなぁ」


なんだかんだ言って仲がいい二人の雰囲気に安堵した。


「香織ちゃん、もう少ししたら失礼するね。足が浮腫んじゃって。でね、帰る前に私もあっちのみんなとお話してみたいんだけど・・・やっぱり私の事ってみんな嫌かなぁ。だってさ・・・・・」

「那美さん、大丈夫ですよ。あの人たちみんなほんとにいい人達だし、ついでにかなり単純ですから。これまでの事なんてたぶん話題にも上りませんから。安心してください」



それでも不安そうな那美さんをみんなの連れて行った。苛めちゃだめだよって言ったらまきちゃんから頭を小突かれた。

そんな事するわけないでしょって。痛いってばぁ。


「ありがと。香織ちゃんさ、その間うちの旦那と話してやってくれる?」

「え?」

「少しだけ・・・達也に言い訳させてやって。お願い」


那美さんにそう言われて、仕方なく吉永さんの所に戻った。

ノブさんはノブさんで、あっちにいるからと言って違う席に行ってしまった、

通りすがりに耳元で、長話するなよって言われた。

そう思うならノブさんも一緒にいればいいのに。


「・・・・・吉永さん、今日は来てくれてありがとう」

「香織ちゃんに礼言われるとなんか複雑な気持ちだよな」

「はは、だよね。かなり微妙だよね」

「言っとくけど・・・言い訳なんかしねーよ」

「うん。わかってる。そんなの聞く気もないし」

「・・・那美のこと、ありがとうな」

「私は何もしてないよ。那美さんが我慢強いだけ。もうだめだよ。浮気は!って私が言うなっての、ねぇ」


この人の事が本気で好きだった。

人生の中でこんなに人を好きになる事はもうないって思ってた。

吉永さんさえいれば他には何もいらないとさえ思っていた。



「・・・香織ちゃんさぁ・・・」

「ん?なに?」

「・・・・・ふっ、今更だな。何を言っても始まらねーよな」

「意味わかんないし・・・・・」

「ノブなら大丈夫だから。あいつ、前からお前に惚れてるからな」

「前からって?」

「さあな、いつごろかな。もう忘れた」


その時ノブさんが、もういいか?って言いながらやってきた。

吉永さんは立ち上がって私の耳元で一言だけ囁いて、カウンターの那美さんのところに行った。



吉永さんが最後に私にくれた言葉




「幸せにしてもらえ」




吉永さんのその言葉に、心が震えたような気がした。

彼への想いはとっくに終わらせたはずだったから、そんな自分に驚いた。

もしかしたら自分の中で、燻ってた何かがあったのかもしれない。

あんなにも愛してた人だから。

この時本当に吉永さんと終われた気がした。




「そろそろ俺ら、帰るから」

「香織ちゃん、みんなとっても楽しい人たちだね。面白い話いっぱい聞いちゃった。ふふ」

「どうせ俺の悪口だろ。ったくもう・・・」

「残念でした。達也の事なんて話題にもならなかったよ」

「それもどうなんだって感じだな。まぁいいか。帰るぞ」

「うん」


ノブさんとふたり並んで、今日のお礼を言ってから二人を見送った。



「香織、隆志に電話したら、もうそこまで来てるらしいから、私も行くね」

「まこちゃん、隆志にもお礼言っといてね。今日は本当にありがとう」


まこちゃんは、またねって手を振って帰って行った。

それをきっかけにノブさんの友達もぞろぞろと帰っていって

気がついたらいつものメンバーと・・・あとは・・・あれ?

もしかしてえみちゃん、さっきの人と?

うまくいくといいね。


「そろそろお開きにしようか。ゆかちゃんも今日は疲れたでしょ」

「まきちゃん、みんなも、今日は本当にありがとうございました」

「さっ、新婚さんはどうぞさっさとお帰りください!」


追い返されるようにノブさんと二人で店を出て、そのままタクシーで私たちの新居に帰った。


「今日はさすがに俺も疲れた」

「結婚式って疲れるもんだね。でも幸せな疲れって心地いいけどね」

「でも香織、夜はまだこれからだって知ってる?」

「何かいやらしいんですけど?ていうかそんな元気あるの?」

「夫婦ですから、いやらしくはないでしょ。ていうかその元気はとってあるから」


それはさておき、とりあえずお風呂だけには入りたいよねって事で

私はバスタブにお湯を入れに行った。


「今日は一緒に入ってくれるとかのサービスあり?」

「//// え・・・っと・・・いいけど」

「もちろん電気はつけたまま」


断ることは許されず二人で明るいバスルームでゆったりと湯舟につかった。


「なんか、やっぱ恥ずかしいかも・・・」

「そっか?俺はまったく恥ずかしくなんか無いぞ」

「だってさ・・・・・」

「温泉も一緒に入ろうな」


ふと・・・・・昔の事が頭をよぎった。

あの日、一緒に温泉に入ったなって・・・・・何で今頃そんなこと思い出すんだろ。



「今日の香織・・・めちゃくちゃ綺麗だったぞ」

「今日だけ?いつもは?」

「いつも可愛いけど 今日は特別って事でしょ。」

「ずっとそう言って欲しいな。おばさんになっても」

「可愛いおばさんってのもなぁ。」


それってどんなのだろうって考えてたらノブさんは笑ってた。



お風呂から上がって二人でワインを飲んだ。

疲れも手伝って私は少し酔ってたみたいで夢見心地でノブさんの肩にもたれてた。



「香織・・・・・・・さっきさ・・・・・まぁ・・・・・いいか。」

「何?言ってよ。気になるからさ 」

「いや・・・・・・達也とさ・・・・・・何話してたのかなって。」

「・・・別に・・・・・たいしたことは何も話さなかったよ。」

「そっか・・・・・・・・」

「もしかして・・・・・・・妬いてるの?それなら傍にいてくれたらよかったのに。」

「那美がさ ちょっとぐらいいいでしょって言うから・・・・」


那美さん・・・・・・やっぱり彼女には適わない。

吉永さんと私のこと きちんと終わらせるつもりで・・・・・・・



「正直ちょっとだけ妬けた。でも達也を信じてやりたかったからさ。」


男同士の友情を複雑にしてしまったのはこの私・・・・・・

それに関しては責任を感じてる。



「私の事も信じてくれてるんだよね。」

「当たり前。でも・・・・・お前があいつのことどれだけ好きだったかも知ってるから。」

「もう・・・・・・終わったことだよ。」

「・・・・・・・・・そうだな。」

「うん・・・・・・・・・遠い昔の恋の物語ってとこかな。」




吉永さんに恋をしたこと 後悔なんてしてない。

彼との出会いがあったからこそこうしてノブさんの傍にいられる・・・・・



「・・・・・・・幸せだな 俺。今人生の中で一番かも。」

「私も同じ。怖いくらいの幸せってあるんだね。」

「もっともっと幸せにしてやるからな。覚悟しとけ。」

「ノブさん・・・・・・愛してるよ。ずっと・・・・・」

「俺も・・・・・香織だけずっと愛してるから。」





今日までいろいろな事があった。

たくさんの恋もした。


いっぱい笑って いっぱい泣いて

傷つけたり 傷ついたりして・・・・・



今はノブさんを心から愛してるといえる。これが最後の恋だ。

これからは何があってもこの人を信じてついていく。

ノブさんと一緒に同じ道を歩いていく。




私たちの物語はこれからずっとずっと続いていく・・・・・・・




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