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カフェテラス  作者: 蒼
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カフェテラス 27


どんなに彼に愛されても、やっぱり一人の夜の寒さは消えなくて

そんな時にはなつみさんと一緒に飲んだりして淋しさを紛らわせた。

どうしてもなつみさんを本名の恵理子さんと呼べなくて

お互いに練習中だ。



「そういえば吉永さんもゆかちゃんのこと香織ちゃんって、ちゃんづけだよね」

「うん。私もずっと吉永さんだしね。何か今更、達也 なんて呼ぶのもね」

「でも香織って呼んで欲しかったりしない?」


ほんとはそうして欲しいけど、でも何となく言えなくって。


「いいの このままで。呼び捨てで呼ばれたら照れくさいよ」

「私はずっと恵理子って呼んでもらうんだー。子供生まれてもさ。ママとかパパとか呼び合うの嫌だもん。いつまででも恋人同士みたいでいいじゃん。」


恵理子さんは最近プロポーズされたらしくうきうきしている。

最初は私に言いにくかったみたいだけど

気を遣われるほうがよっぽど嫌だよって言ったら

それからはもう惚気っぱなし。

でも本当に良かったと思えるから。

やっぱり彼女は私の大好きな人。

ひがんでいる訳でもなく、妬む気持ちもなく

心から祝福していた。





そして雪がちらつく寒い季節

恵理子さんはお嫁に行った。

結婚式には吉永さんと一緒に出席してくれと頼まれた。

最初は縁起が悪いからって断ったんだけど


「そういう事言うと友達やめるよ」


・・・って怒って言われたので、それは困ると思い

吉永さんに声をかけたら、ちょっと困った顔をしたけど

なつみちゃんの結婚式なら行くしかないなって、結局二人で仲良く出席した。

絶対に"なつみちゃん"って呼んだら駄目だよって釘を刺した。


純白のウエディングドレスを纏った恵理子さんは、今までで一番綺麗で

私は式の間中ずっと泣いてた。絶対幸せになってほしいと心から願った。


指輪の交換の時、彼は私の指から一度指輪を引き抜いて

耳元で私の大好きな声で、愛してるからって言いながら 

もう一度私の左の薬指に嵌めてくれた。

一番後ろの席に座ってて良かった。

それから私たちは誓いのキスをした。



どんなに私たちが愛し合っていても

お正月に生まれためでたい彼の誕生日を当日私が祝えるはずもなく

形の残るものをあげることに最初は戸惑いもあったけど

なるべく目立たなくて、いつも身に付けてもらえるようにと

ブルガリのキーホルダーをプレゼントした。

彼はとても喜んでくれていつもポケットに大事そうにしまってる。




桜が舞い散る季節になって気持ちのいい風が吹く頃になって仕事にもだいぶ慣れてきた。

といっても、私の仕事は簡単な書類作成と留守番くらいなんだけど。

これでお金貰うなんて申し訳ないくらい楽させてもらってる。

もう他の所で働けなくなりそう。



ノブさんの会社はそこそこ順調にいってた。

仕事もある程度入ってくるし、経理の面でも贅沢しない限りは問題なかった。

資金繰りはノブさんがやってくれてるし。

最近では結婚の話も段々本格的に進んでるらしい。

当の本人は独身を謳歌したいようだけど。

お陰でまるでマリッジブルー入ってる。

そこは男も、まぁやっぱり色々あるんだろう。



それよりも私にとって問題なのは

最近吉永さんの会社に入った新しい事務員さん。

吉永さんの話の中に必ずと言う程頻繁に登場してくる。

別にそれがどうと言うことはない。彼は変わらず私を好きだと言ってくれるし

もちろん私は今のままで何の不満も無かったから、やきもちなんて妬いたりしない。

だけど吉永さんの口から出てくる他の女の子の名前はいつも私を不安にさせる。


それにここ何日かの吉永さんはちょっと違う気がする。

何となく心ここにあらずって感じ。

電話は毎日あるけど、仕事が忙しいとか何とか言って中々顔を見せない。

まるで浮気してる旦那さまのようだ。



私はノブさんのデスクの横に椅子を持って行って

図面を引いている彼に話しかけた。


「それって何書いてるの?」

「聞いてもわかんないでしょ?平面図っていうんだけど・・・・・」

「・・・・・やっぱいい。わかんないから」

「って・・・・・・おまえなぁ・・・・で?何がしたいのかな?君は」

「最近さ、 吉永さん おかしいと思わない?」

「全然思わない。ってか、欲求不満かよ。だいたい君たちはくっつきすぎ」

「そんなことないよ。ちゃんと早めに帰らせてるし。でもこの頃会ってくんない・・・」

「仕事じゃねぇの?ていうか最後いつ会ったんだよ」

「えっとねぇ、火曜日かな」

「喧嘩売ってるのなら買わないぞ。今日金曜日じゃないかよ」


まあ、確かにまだそんなに経ってないかな。


「んー・・・でも何かおかしいんだよね」

「何かって?」

「電話の話し方とかさ。何か隠してるような・・・・・女の勘ってやつかな」

「女はこれだよ。勘で言われちゃたまらないっつーの」

「何となくだよ。もしかして浮気してるとかさ・・・・・」

「お前さー。自分は何なんだ?よーく考えてから言いなさい」


わかってるよ。私自信が浮気相手だって事ぐらい。

でも自信がない。私だけを愛してくれてるという実感がなくなってる。

シュンとしょぼくれてしまった私の頭を軽くポンポンと叩いてノブさんは言った。


「俺から何となく探り入れとくから。香織ちゃんは俺に美味しいコーヒーを淹れてくれない?」


ノブさんは本当に優しくしてくれる。

私の淹れたコーヒーを吉永さんと同じように旨いって言ってくれるから

私はいつも感謝を込めて淹れてあげる。

最近ではノブさんに淹れる回数のが多いくらいだ。



とにかくもう少し様子を見よう。ほんとに忙しいだけかもしれない。

考えたらどんどん悪い方へ考えてしまうから。

私の勘なんて当たった試しもないし・・・・・。


だけど結局その日も吉永さんは会いに来なかった。



それからも吉永さんの連絡は徐々に間隔があくようになっていった。

ノブさんに聞いても何も知らないと言う。こんな時、男同士の友情は固いから厄介だ。

でもどう考えたっておかしい。私の事、もう嫌になったの?



久し振りにうちにきた彼に思い切って聞いてみた。

ほんとはこんな事聞いたりするタイプじゃないんだけどな、私。


「ね、もしかして私の事飽きた?」

「何いってんだか。んな事あるわけないだろ」

「でも・・・・・最近あまり会ってくれないじゃん。淋しいよ」

「ん、ごめんな。ちょっと色々あってさ」

「まさか・・・・・奥さんに何か言われたの?」

「いや、あいつは何も言わない。相変わらず会話も少ないけど」


じゃあ一体何があったの?って聞けばいいのに、何となく怖くて聞けなかった。


「ね、私のこと好き?」

「確認しないとわかんないか?」

「ちゃんと言ってほしいだけだもん」

「愛してる。香織ちゃんが大好き」

「そんな仕方なく言って貰っても嬉しくないもん」

「じゃ、態度で示しましょうか」



私の大好きな彼のキスが耳に項に胸に降ってくる。

こうしているだけでまた何も考えられなくなる。


だけど・・・・・



あたった試しのない私の勘はその時に限って・・・・・。



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