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どこか狂った世界と人とモノ

 文章が成っていないと思いますのでどんどん注意してください

 いつからだっただろう、僕が彼女のことを好きになったのは。


 そう、それに気づいてからは心が炎のように熱を持ち、彼女が人と対話するのを見るたび心が嵐のようにうねり、彼女が連れ去られていくのを見るたび心が千の破片に分けられてしまうようだった。


 彼女はいつもといっていいほど人に話しかけられている人気者だ。僕などとは違い簡潔な言葉で表現するから聞いているほうもわかりやすく聞けるのだろう。


 それに、外見も美しい、すらりと背中まで伸びた烏の濡れ羽色の髪に愁いを帯びたかのように細められた瞳、くっきりとした鼻立ち、そして薄く笑った口元のそのどれもがいくら金を出しても買えないだろうという美しさがあり、それでいてそのすべてが調和している姿は正に美の神が顕現しているといっても過言ではないほどだ。


 だから僕は彼女が欲しい、それはもう狂おしいほどの情となって僕を突き動かすのだ。


 例えるなら、殺してでも僕だけの物となって欲しいしできるならば彼女を生きたまま僕だけのものとしたいとこの感情は訴えてきてしまうのだ。


 しかし、僕は動けない、僕には足がないからだ。だからこそ、彼女と一緒に誰かに持ち去ってもらう他ないのだが、僕がいるのは日陰だ。誰も気づいてはくれないし来てくれたとしてもその手には彼女の姿はない。


 だが、だからこそ僕は願う、いつか彼女と一緒に持ち去ってくれる誰かのことを。


 そして、その願いが叶ったとき僕は――――。


 ◆◆◆


 私は彼のことが好きだ、大好きだ。


 いつからかなど関係ない、好きだからこそ好きなのだ。

 

 彼はいつもそこにいる。そこが彼の居場所であると主張するかのように。


 私は彼のことをまともに見ることができない。だからうつむいて目を細めて横目で見るのだ。


 何故かって?決まっている、はっきり見てしまったら彼のことをますます好きになってしまいほかの人と話したくなくなるからだ。


 そうなってしまうと、捨てられてしまう、私はそうして捨てられた仲間をたくさん見てきた。


 しかし、彼はかっこいい、たまに人と話しているときの理知的な態度、考え事をしているときの横顔の角度は思わずペロペロしたくなるくらいだ。


 だが、私は彼のところへ行けない、浮いて移動とか無理だし動こうとしても棚から落ちるだけだから。


 でも私は彼のことが好きだ、殺してしまいたいくらいに好きだ、この身が焼かれても、水に濡れても、穢されようとも彼のことが好きな気持ちは永遠に変わらない。


 どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして私は動けぬ体に生まれたのだろう。


 動ければ気持ちを伝えられるのに、こうして待ち続けている時間は甘美でたまらないのだろう。


 それでいて、こんなにも辛いのだろう。


 ◆◆◆


 その日、ボクはいつものように図書室に行っていた。


 その図書室は何も触っていないのに本が落ち、戻しても戻しても落ち続けるのでやむなく古本市で売ったり、朝来てみると本が散乱していたりするようなオカルトやそのうわさが絶えない図書室だ。


 だが、そのおかげかこの図書室には絶えず人が集まり、本が貸し出され生徒の成績向上に一役買っているのは皮肉な話か。


 文化祭で行われる古本市ではいわくつきの本を売っていることもあり売れ残る本は多い、ボクもいわくつきの本を中心に20冊ほどの本をこの学校に入学してからの古本市で買っている。


 ここから分かるようにボクはかなりの本好きだ、金とスペースがあるならこの世界にあるすべての本を買いそこに引きこもっていたいと思うくらいには。


 そんなボクだからこの図書室でオカルトを目撃したことも一度や二度ではない。


 最初こそ驚いたが、二度目にはその本を借りて持ち帰り読んだ後に隅々まで調べたし、三度目以降はこんなオカルトを起こせるのならボクを本の世界に連れて行ってくれるのではないか?と半ば本気で考え嬉々としてそれに近づき、考える限りの異世界に連れて行ってもらえる行動を実践しているのだが結果は空振りである。


 そんなことをしているからか、最近では図書室にいく度と言っていいほどの頻度でオカルトに出会っている。


 実際、毎日といっていい程オカルトを見ていると本が突然落ちてきたりする程度では驚きもしないのだが、流石に今見ているような物は見たことが無かったので少し驚いている。


 なんと本が這っているのだ。当たり前だが見間違いでも幻覚でも気のせいでもなくだ。


 それほどになったものは見たことが無い、だから僕は今度こそ本の国のような異世界に行けるのではないかと期待していた。


 そんな期待に高鳴る胸を押さえ本を捕まえる。これで今日借りる本の一冊目は決まりだ、もう一冊はこの本が向かっていた棚からひとりでに落ちた本、これで今日借りる本は決まりだ。はやる胸を落ち着かせカウンターでこの本たちを借りる。


 そのあと、急いで家路につく、歩きながら読みたい衝動に襲われたが今は我慢だ。きっと家に帰ってから読んだほうが楽しめるはずだ。そう思い走って帰る。


 そうして家につき玄関の扉を開けた瞬間、意識が途絶えた。


 ◆◆◆


 ああ、やっと願いが叶ったのだと思ったのは持ち去られる瞬間だったろうか。


 傍で寝ている彼女を見た瞬間そう思った。


 あまりもの辛さに彼のもとへ這って行き、あと少しだと思った瞬間に意識を閉じられ目が覚めたら彼がそこにいてあまりもの嬉しさに思わず抱きついてしまった。


 ボクが目を覚ました時、少し遠くに抱き合っている男女がいたのでここがどういう場所か聞いてみることにした。


 「すいません、ここは本の国でしょうか?」


 『いま大事なところだから邪魔しないでください!!』


 と、答えが返ってきた。ぴったりと息の合ったステレオの声にしばらく感心していると。


 『僕(私)だけの物になってください』


 なんか、告白が聞こえ二人とも間髪入れずにはいと答えていた。


 二人が会話している間に二人の近くに行き、二人の会話が収まったところでもう一度聞いてみる。


 「あの、ここはどこですか?」


 願望を入れず聞いたためか二人は話を聞いてくれた。


 「ここはおそらく物語が作られる場所だ。僕が生まれた時もここに来たことがある」


 「私たちが一つになりたいと願ったからここに来たのだと思うけれど、君も物語になりたいからここに来たんじゃない?」


 なぜだろう、女の人がボクに話しているのを見た男の人が嫉妬の炎をこちらに向けてくるのだが、ボクはそんな視線を向けられるような覚えがない。


 しかし物語になれるのか、それはいいなぁ一度物語そのものにも成ってみたかったんだ、本の国に行くよりも不可能そうだから諦めていたけれどできるのであればぜひそうしたいな。


 などと考えていると二人の話が物語になるとしてもどちらがどちらの中に入るかということで喧嘩していた。


 「僕が君を中に入れる、なぜなら君を誰にも触れさせたくないからだ」


 「それをするのは私だ、私とてあなたを誰にも触れさせたくない」


 こんな感じで延々とループし続けているからボクは二人にとって渡りに船ともいえる提案を出すことにした。もちろんボクがそうなりたいと思ったからでもある。


 「でしたらボクがあなた方を中に入れましょう。そうすれば全てが丸く収まります」


 「だが、いいのか?おまえは偶然ここに来ただけだろう?」


 「いいんです。ボクがそうなりたいと願ったのですから」


 「分かった、ありがとう。」


 そうして、ボクの意識は消えていった。


 ◆◆◆


 この時世界から二冊の本と人が一人消え代わりに一つの本が作られた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] →それに、外見も美しい、すらりと背中まで伸びた烏の濡れ羽色の髪に愁いを帯びたかのように細められた瞳、くっきりとした鼻立ち、そして薄く笑った口元のそのどれもがいくら金を出しても買えないだろう…
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