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Dream Note  作者: 御衣黄
19/22

19)ロボット

 徹は大金の入った袋の口を両手で持って股の下にぶら下げながらカニ歩きで銀行を出てきた。ちょっと勇者としてはかっこ悪い。大金の入った袋を荷台のクマ夫に渡して、彼にスティワートから貰った巾着袋にお金を補充してもらう。


 馬車は輸入雑貨の店が立ち並んでいる区画へ向かう。そこは、大型のホームセンターのような店舗や小さな専門店などがズラリと立ち並んでいた。まずは大きなホームセンターのような建物に入る。キャッスルタウンの店と同じようにいろいろなものが売られている。まずテント二張、移動用かまど、ビニールシート、ランタン、寝袋、毛布などなど。何処かへ探検にでも出かける装備だ。

「そうだ、時計も買っておこう」

 寄付のお金だから、比較的に安くても高級時計はやめ多機能のデジタル腕時計にした。――これで時間の表現がしやすくなる!

「これ買おうぜ」

 例のごとくクマ夫がおねだりする。それはすぐ写真が出来上がるインスタントカメラだった。この世界には電気が無いのでパソコンもプリンターも役に立たないた。デジタルカメラで写してもプリントアウトできない。インスタントカメラならその問題が無かった。クマ夫の提案に徹も相槌を打つ。

 馬車の中は荷物で半分埋め尽くされた。その店での買い物が終わると、早速インスタントカメラで記念撮影をする。

「私、メイド服で写して欲しかった」

 可奈は残念そう自分の姿を見ながら言ったが、メイドの衣装はお城に置いてきていた。

「ハイ、チーズ」

 馬車を背景にクマ夫が写すと、今度はゴズが写し方を教わって三人を三回写す。これでみんな一枚ずつ写真を手にした。

「お城に戻ったら、またみんなで写そうよ。今度はメイドの衣装にするから」

 可奈は写真を見ながら笑を浮かべた。


 写真撮影が終わってゴズに馬車の番を任せ、三人は他の店を見てまわる。他にも剣や防具の店や衣料品の店、書籍の店などある。徹はひとつの専門店の前で足を止めた。その店には銃が売られていた。

「ちょっと入ってみようよ」

 徹は可奈とクマ夫を誘った。日本ではまずお目にかかれない。徹は興味本位で店の中に入っていく。店の中にはライフルやマシンガンが壁に飾られ、ショーケースには拳銃などが陳列されている。むせの店主「いらっしゃい」と気軽に声をかけてきた。徹はあれこれと、それらを指さして店主から受け取っては一応に銃を構えてみる。もちろん弾は入っていない。

「よかったら、裏に射撃場があるから試し撃ちしてみるかい?」

 徹はその言葉にやる気満々だ。色々と品定めをしていく。

 徹はサブマシンガンを二丁に両手に持って銃口を天井に向ける。映画スターの真似だろうか。可奈にその勇姿を披露する。

「ねえ、どうかな?」

「徹、それ使えるの?」

 もちろん素人の徹は銃を扱えるわけはない。可奈は呆れた顔をして徹を諌めた。接近戦では不利になることも多い。

 徹は渋々諦めてそれらを店主に返す。それでも戦いには武器が必要とばかり、徹は店内を物色する。目に止まったのが、サバイバルナイフとパイナップル型の手榴弾だと迷彩塗装された防弾チョッキ(ボディーアーマー)だった。手榴弾は安全ピンを抜いて投げるだけ、徹にも使えそうである。防弾チョッキは金属の鎧では徹は重く感じていたためだ。

「可奈は防具を準備しているか?」

 徹は可奈に問う。

「私は特注の鎧を馬車に積んであるから、いざとなったらそれを着るわ」

 徹の剣術卒業試験で着用したそれである。それに可奈は盾も使える。

 ライフルは野鳥の狩りの道具として一定の需要があるが、この世界で銃が武器として普及しないのは、ぬいぐるみだと一発や二発では穴が開くだけで、致命傷にならないからだ。そんな理由から買い手も少なく、こんなお店で簡単に売られている。――こんな店とはなんだと店主に言われそう!

 可奈は不満そうであったが、徹は防弾チョッキ一着と手榴弾を10個入りの木箱ごと購入した。「毎度ありー」店主のうれしそうな声を聞いて徹たちは店を後にした。

 ――何か役に立つだろう。練習もしないといけないな

 徹は思った。


 その後、日用雑貨の店に入り細々としたものを購入する。ロープやガムテープ、タオルやライターなど。徹は人が持ち運べるものなら地球で売られているものはこの街でも手に入りそうな気がした。――自動車などは売れていない。世界観が崩れそうなものは排除!


 三人が馬車に乗り込んで次の場所に出発しようとしたとき、徹はお城の街とこの街の歩く人物の違いに気がついた。お城の街では徹たち意外は全て動物のぬいぐるみであったが、この街ではぬいぐるみ以外の人物も何人か混じっている。その人物とはブリキのおもちゃのロボットみたいな人物であった。

「あのロボットのような人は?」

「隣の国の人よ。ロボットの国なの。そう、魔女の城がある国の住民なの」

 可奈が冷静に答える。

「隣の国の人がこの街にも商品の買い付けに来たり、ロボットの国の物産品を売り込みに来たりもしているの。両国の戦争が休戦になってお互いの行き来があるの」

 徹はお城で説明を受けていたが、また新たな種族の人物を目にすると新たな驚きを感じた。

 徹にはまだ知らないことがこの世界まだまだある。


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