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闇に飲まれる

作者: ウォーカー
掲載日:2026/05/17

 夜も遅く、終電も終わったばかりの深夜。

人気ひとけの無い住宅街の道を、一人の若い女が歩いていた。

その女の名前は渡辺わたなべ清子きよこという。

川を流れる清流のような清い子に育って欲しい。

そんな願いを込めて清子と名付けたと両親から聞いた。

清子はサラリーマン、いわゆるOLを務めている。

清子は心優しく、頼まれると断れない性格で、

職場でも他人の仕事を押し付けられがちで、

いつも帰りは終電間際になっていた。

「今日も疲れたな。いつまでこんな生活が続くんだろ。」

一人暮らしの清子には迎えに来てくれる人もいない。

真っ暗な道を一人で歩いていた。

その時、清子は、自分が一人ではないことに気が付いていなかった。


 清子は自分が住んでいるアパートの前に戻ってきた。

もう深夜なので明かりが落とされ、人の気配も感じられない。

さあ早く家に入ろう。

鞄から家の鍵を出そうとすると、急に喉元に冷たいものが押し付けられた。

・・・刃物だ。

この金属的な冷たさと鋭利な感触は刃物に違いない。

「動くな。静かにしろ。」

耳元で低い男の声がする。

いきなり刃物を喉元に押し付けてくるなんて、ただ事ではない。

しかし清子は気弱な性格と恐怖で大声をあげることもできなかった。

「俺と一緒に家の中に入るんだ。」

後ろから刃物を押し付けてくる男に、首を振って返事をして、

清子は玄関の鍵を取り出して鍵穴に挿し込んだ。

鍵を回すとガチャリという音がして、家の玄関の鍵が開いた感触がした。

いつもならホッとする瞬間なのだが、

今は不審な男に脅迫されているところだ。

清子は物音を立てないように玄関の扉を空けて、部屋の中に入れられた。


 部屋の中はまだ明かりがつけられていないので、

カーテン越しの外の薄明かりでしか様子はわからない。

ドン!

「きゃっ!」

清子は玄関に続く台所に突き飛ばされた。

そこでようやく、背後の男の様子を見ることができた。

清子の背後にいたのは、

黒いパーカーで顔を隠し、ジーパンを履いた男。

身長は中背といったところだが、体を鍛えているのか、

服の上から分かるほどに体に筋肉を蓄えていた。

男が玄関の鍵を後ろ手にかけて、ご丁寧にチェーンまでかけた。

これでもう、清子は部屋に閉じ込められたも同然だ。

男が嬉しそうに言った。

「俺はな、金に困ってるんだ。

 ついでに、飯と女にも困ってる。」

「あなた、強盗!?警察を呼びますよ!」

清子の気丈な言葉を、男はせせら笑った。

「どうやって?

 俺がお前をこの部屋から逃がすと思うか?

 もし、大声を出そうとしたら、その時は容赦なく殺す。

 金も飯も女も、その後でもいただけるからな。」

げっへっへと、男は下卑た笑みをこぼした。

清子は血の気の引く思いだった。

この男は強盗なだけではなく強姦魔なのだ。

そういえば、最近、新聞やニュースで聞いたことがある。

この近辺を含めた地域で、連続強盗強姦事件が起こっていると。

つまりこの男が、その事件の犯人なんだろう。

「あああああ、どうか助けてください。

 お金もあげます。食べ物も好きなだけ食べてください。

 でもそれ以上は・・・!」

「だからぁ、身体も寄越せって言ってるんだよ!」

男は清子の顔を平手で叩いた。

それだけで清子は吹き飛ばされ、鼻血が流れ出てきた。

「大人しくしてれば、やさしくしてやるからよ。」

「やめて・・・やめて・・・いやああああ!」

それから清子は男に服を破かれ、一糸もまとわぬ姿になると、

男に乱暴に抱き寄せられ、蹂躙されることになった。


 暗い部屋の中、清子の鳴き声がしくしくと聞こえている。

部屋は人いきれですっかり暑くなっていた。

ベッドで清子の横に寝ている男が言う。

「腹が減ったな。おい、お前、何か飯を作れ!」

しかし清子は弱々しく抵抗した。

「嫌です。私、初めてだったんです。

 それを奪ったひとの言うことを、どうして聞かないといけないの。」

男は清子の顔をまた平手で叩いた。

「いいから飯を作れって言ってるんだよ!」

二回、三回と、清子の頬を男の無骨な手が叩いていく。

止まっていた鼻血がまた流れ出てきて、清子は観念した。

「わかった!わかりました!

 ご飯を用意するから、それ以上はもう叩かないで・・・!」

清子は泣きながら、ふらふらとベッドから起き上がると、

引き千切られた下着を体にまとい、台所へ向かった。


 真っ暗な中で料理をするわけにもいかないので、

清子は台所の明かりを点けた。

久しぶりに見た明かりは、穢された自分の体を照らしていた。

それを見て、いっそ台所の包丁で死んでしまおうかとも思った。

だが何故かそれはできなかった。

死ぬのが怖い。

食事を作れば、この恐怖から解放される。

そんな一縷の希望をかけて、清子はありあわせの材料で料理を作った。


 「あの、ご飯ができました・・・」

清子がおずおずと男に言うと、

ベッドで裸のままタバコを吸っていた男は、

小物入れの小皿でタバコをもみ消すと、嬉しそうに言った。

「腹が減って仕方がなかったんだ。

 これでようやく飯にありつけるぜ。

 おい、明かりをつけろ。」

清子は言われるがままに部屋の明かりを点けた。

そこでようやく、自分の純血を奪った男の顔を目にした。

男の顔はゴツゴツとした無骨な形で、鋭い目つきと大きな口。

首は太く、大きな喉仏が浮き出ていた。

その顔に見覚えは無い。

もちろん知人友人ではないし、警察でも顔まではわかってなかったようだ。

「どうぞ・・・」

清子が料理の皿をテーブルに置くや否や、

男は料理にがっつき始めた。

よほど腹が減っていたのか、まるで噛み砕くように料理を平らげていく。

「うめえ、うめえ!

 お前、身体だけじゃなくて料理も上手いんだな!

 おかわりはないのか?」

「ありますけど・・・」

「じゃあおかわり!」

そうして男は、清子の分まで食事を食べきってしまった。

もちろん、清子に食欲などあろうはずもなかったが。

料理を食べ終わった男は、ゲフッと下品なゲップをして、

大きくなった腹を擦って床に横たわった。

やがて静かな寝息を立て始めた。

その間に清子がそっと電話に手を伸ばすと、男の鋭い声が制した。

「お前、妙な事をしようとしたら、また犯してやるぞ。

 今度はあんなやさしくしてやらないぞ。

 二度と嫁に行けないような体にしてやる。

 それでもいいなら、電話するなり部屋を出るなりしてみるんだな。」

男の言葉に、清子は震え上がった。

この男の身体能力ならば、ただの女である清子など、

簡単にねじ伏せることができるだろう。

現にもう、そうされたばかりなのだから。

結局、清子は、助けを呼ぶこともできず、

一晩中、強盗と一緒に過ごすことになった。


 カーテンの向こうが明るくなって、小鳥の鳴き声が聞こえる。

清子にとって恐怖の夜が明け、朝がやってきたようだ。

しかし、状況は何も変わっていない。

部屋の真ん中では屈強な強姦魔が眠っている。

清子は助けを呼ぶことも何もできない。

死ぬ勇気もなければ、男に逆らう勇気もなかった。

清子は自分の脆弱な女の体を呪った。

朝が過ぎ、昼頃になって、ようやく男は目を覚ました。

この時間まで清子が出社しなければ、会社から電話があるはず。

そうすれば異常を外部に知らせられる、はずだったのだが、

しかしあいにく今日は清子は会社が休みの日だった。

いつもであれば仕事の疲れを取る休日が、

今は覚めない悪夢を見ているような状態だった。

「う、う~ん。もう朝か?」

部屋の真ん中で大の字になって寝ていた男が、ようやく目を覚ました。

男は首をごきごきと鳴らすと、清子に言った。

「どうだ?一晩経って。」

「どうだって、どういう意味ですか?」

「この状況に慣れたかって聞いてるんだ。」

「慣れるわけないじゃないですか!犯されて、命令されて!」

清子は涙ながらに怒りをぶつけた。

しかし男は涼しそうに清子の強い声を聞き流した。

「命令なんて、お前、いつも会社でされてることだろう?」

「あれは仕事です!」

「仕事だって一緒だ。金と地位、つまり欲望を目当てに、命令に従う。

 昨日、俺がお前にしてやったことと一緒だ。」

「仕事で身体を蹂躙されたりはしません!」

「でも、会社の男どもは、そういう目でお前を見てると思うぜ?

 いずれはその中の誰かとヤることになる。

 ちょっと順番が変わっただけだ。」

「あなた、何が言いたいんですか?

 もう用は済んだでしょう?早くここから出ていって!」

「そうはいかないなぁ。俺の用はまだ終わってない。」

「まだ私を穢すつもりですか!?それとも食事?」

「それもある。しかし、俺はお前に相談があるんだ。」

「相談?強盗が私に何の相談が?」

すると男は服を着て、襟を正して真剣な顔になった。

「これも何かの縁だ。多少強引だったのは謝る。

 俺の名前は、豪田ごうだつよし

 これは偽名でもない本名だ。

 警察に言いたければ言うがいい。

 しかしその前に、俺の話を聞いてくれ。」

清子は疑いの眼差しを向けながらも、烈と名乗った男の話の続きを待った。

「実はな、俺も少し前までは、お前と同じようなサラリーマンだったんだ。

 ところがな、会社の金を使い込んでいる奴がいたのが公になってな。」

「それがあなた?」

「いや、違う。俺は誓って会社の金に手をつけたりはしない。

 毎日真面目に働いていたんだ。時には体を壊すほどにな。

 しかし会社の中には、そうではない奴がいたってことさ。

 使い込みの金額はかなりのもので、会社が傾くほどだった。

 もう今までのように多数の社員を養っていくわけにはいかない。

 そうして俺は自分がしたことでもない罪が原因で、

 会社をクビになったってわけさ。」

「それは・・・気の毒な話ね。」

「そうだろう?

 それで、俺は決意したんだ。

 サラリーマンどもに復讐してやる。

 会社に復讐してやる。

 この社会に復讐してやるってな。

 それから、空き巣や強盗で生計を立てるようになったんだ。」

「自分勝手な話ね。

 それこそ、あなたの会社の人以外に罪は無いでしょうに。」

「ところがそうでもないんだよ。

 会社の金の使い込みは単独犯じゃなかった。

 他のいくつもの会社の連中と共謀してやっていたことだった。

 だけど、誰もそれには気が付かなかった。

 いや、中には薄々気が付いて、警告した奴だっていたんだ。

 だけど会社の連中は、騒ぎになるのを嫌って、それをもみ消した。

 そして事件が明るみになった途端、無関係の俺のクビを切った。

 これはもう、強盗や強姦と同じじゃないか?」

「会社は強盗や強姦をしたりはしない。」

「俺の心は大いに傷ついたよ。それこそ強姦されたように。

 なぜなら、会社の金を使い込んでいたのは、俺の友人だったからだ。

 しかしその友人は会社の重役の親戚だったので、

 警察には突き出されなかった。今も会社にいる。

 代わりに会社を追い出されたのは俺だ。

 こんなことってあるか?

 今まで仲間だと思ってた奴らが、

 俺がサラリーマンでなくなった途端、俺をゴミのような目で見るんだ。

 この恨み、復讐せずにはいられなかったんだ。」

「じゃあ、あなたは、いつもサラリーマンばかりを狙って強盗強姦を?」

「ああ、そうだ。警察はまだ気が付いていないようだがな。」

「そう。それで、あなたの身の上話をして、私にどうしろと?」

「俺はな、サラリーマンでなくなって、社会から爪弾きにされて、

 初めて気が付いたんだ。

 この世の中で本当に一人っきりでいるのは、こんなにも辛いんだってな。

 お前、名前はなんて言うんだ?」

強盗強姦魔に名前を聞かれて答える者などいない。

ましてや脅迫もされてない状況では。

でも、この時の清子は、何故か烈に一種の共感を覚えていた。

本人も気が付かず、口を開いていた。

「私は、渡辺わたなべ清子きよこ

 あなたが穢した女の名前を知って満足?」

すると、烈は正座して頭を下げた。

「そのことは済まなかった。

 俺は昨日お前を、敵たるサラリーマンの一人として襲った。

 その事は謝っても取り返しがつくものじゃない。

 その上で、お前に頼みがある。

 俺の仲間になってくれないか?」

「強姦魔の仲間!?」

清子の声は素っ頓狂とは言えない、真っ当な反応だと言えた。


 連続強盗強姦魔の豪田烈。

その烈の被害に遭った清子は、烈から仲間になって欲しいと言われた。

到底受け入れられる話ではない。

だが。清子の心に何かが引っかかっていた。

それは清子の好奇心か、あるいは怖いもの見たさか。

清子は烈に先を促した。

「仲間になるって、どういうこと?」

烈は顔を上げて清子の顔を真剣に見た。

「俺はもう、一人っきりには耐えられそうもないんだ。

 かと言って、警察に行くつもりは無いし、

 サラリーマンへの復讐を止めたくはない。

 だから、一緒に強盗をしてくれる仲間になって欲しいんだ。

 もちろん、お前が捕まるようなヘマはしない。

 お前には手伝いと家を提供して欲しいんだ。」

強盗に強姦にと被害に遭ったばかりで、その手伝いなど冗談ではない。

しかし。清子は思う。

清子と烈は似ている。

清子も会社では他人の仕事を押し付けられ、給料にも反映されず、

理不尽な生活を送っている。

会社やサラリーマンに恨みがないと言えば嘘になる。

どうせもう自分は日常から一歩はみ出してしまっているのだ。

もしも警察にこのことを話しても、それ自体が辱めになるし、

強盗強姦の被害者として後ろ指をさされる生活が待ってるだろう。

もしかしたら今の会社にはもういられなくなるかもしれない。

それだったら。それだったら、烈の生き方に乗ってみるのもいいかもしれない。

許されざる決断、言語道断、社会の一員としての責任。

そんな言葉に縛られないところもまた、清子と烈は似ていたのかも知れない。

だから清子の口から出た言葉は、邪悪なものだった。

「わかった。私、あなたの仲間になってあげてもいい。

 ただし、条件がある。私にも女の尊厳プライドってものがある。

 私はあなたの仲間ではなく相棒。だからあなたは私を好きにしていい。

 この家にも自由に住まわせてあげる。

 ただし、他の女への強姦はもう金輪際止めて。

 あなたは私のものなのだから。それでいい?」

「あ、ああ!いいとも!俺はお前のもの、お前は俺のものだ。

 これから一緒に、サラリーマンたちに復讐していこう。」

清子と烈は握手をした。

そこに笑顔はない。ギラギラと光る欲望の眼差しだけだった。


 それから烈は、清子の家に住まうようになった。

昼間は強盗はやり辛いので、家の中で強盗の計画を立てる。

そして夜になれば、家を出て強盗の仕事を始めるのだった。

その間、清子はサラリーマン生活を続けていた。

急に態度が変わったら、会社の連中に不審に思われるからだ。

そしてたまに、会社から帰る途中の夜道で、

烈から強盗の得物を受け取ったり、道具のやり取りをしていた。

そうすることで、烈の荷物が減って外見が自然になり、

また強盗を連続で行うこともやりやすくなった。

清子が会社でふと新聞を見てみると、

連続強盗強姦魔の行動が複雑になって、警察の捜査は混乱しているようだった。


 烈の指導の下、清子は強盗としての腕を上げていった。

簡単な鍵なら開けることができるし、金目のものを見極める目も養った。

強盗の腕を上げていった清子は、

とうとう自分が強盗の実行犯になることもあった。

そこには一片の罪悪感と、大きな解放感が広がっていた。

「なんだ、強盗なら私でもできるじゃない。

 どうせこの金も、サラリーマンが稼いだ汚い金なんでしょう。

 私と烈が使ったところで大した違いはないでしょ。」

清子は金庫から奪った札を鞄に押し込み、玄関から堂々と出ていった。


 その日の仕事ごうとうは、普段より大掛かりなものだった。

この周辺の地域でも、特に豪華で大きなお屋敷に強盗に入る。

烈が事前に警備計画を調べていて、この日は警備員がいない日だと知っていた。

しかも大人たちは出払っていて、夜のお屋敷はほぼ無人。

絶好の強盗日和だった。

「清子、いくぞ!」

「うん!烈こそ、ヘマをしないでよね。」

玄関を軽々と飛び越えて、清子と烈はお屋敷の敷地に入っていく。

二人のコンビネーションはもう慣れたものになっていた。

警備装置が付けられていないルートを通り、風呂の窓から屋敷の中へ。

全ては予定通り。これは大儲けの予感。

屋敷に入ると、清子と烈は、予定通り別行動に入った。

屋敷が広いので、一晩になるべく多くの金品を奪うためだった。

清子は豪華な装飾品が詰められた部屋を見つけた。

「うひゃー。これは大物だねぇ。

 売れば高いだろうけど、こんな大物は持ち歩けないね。」

清子は持ち歩けないような大きな装飾品は諦めて、

現金や指輪、ネックレスなどを物色していった。

さて次の獲物はと屋敷の廊下を忍び足で進んでいると、

どこからかしくしくと鳴き声のようなものが聞こえてきた。

それは、すぐそこの部屋から聞こえているようだ。

その部屋だけは明かりがついていて、半開きの扉から明かりが漏れている。

人がいるかも知れない。

最大限の警戒をして、清子は部屋の中をそっと覗き見た。

そして、見てしまった。

そこには、人がいた。

まだあどけなさの残る十代くらいだろうか、少女が一人いた。

高そうなドレスを着ているところから、この家の人間なのだろう。

いや、ドレスを着ていた、というのが正しい。

高そうなドレスは引き千切られ、床に放られていた。

衣服を奪われた少女の上には人の姿。

はっきり見なくても分かる。それは相棒の烈の姿だったからだ。

烈は少女を強姦していた。

廊下に漏れた声は、犯されすすり泣く少女の声だったのだ。

自分でも信じられないくらい冷たい声で、清子は言った。

「烈、あんた何してるの?」

すると烈は汗だくで少女を抱き寄せたままで返事をした。

「ああ、清子か?

 どうやらこの子、この家の子らしいんだ。

 久々の得物に我慢できなくなってな。

 身体を頂いてるところだよ。」

「・・・あんた、強姦はもうしないって私と約束したの、忘れたの?」

「覚えてるさ。

 だけどな、連続強盗強姦魔が、急に強姦だけ止めたら不自然だろう?

 だから、たまにはこうして女の身体も頂いてるんだ。」

「・・・そっか。

 あたしも女なんでね、あたしの身体は許すけど、それ以外はね。」

「ああ?何だって?それより見ろよ。

 こいつも初物だ。ついてるぜ。」

獣のように少女の身体を貪る烈の背中に、清子が迫る。

ズッ、ズッ、ブシュッ。

烈の体がビクビクと跳ねた。

烈の背中には、清子の持つナイフが何度も突き刺されていた。

「清子、お前、何を・・・!?」

「約束したでしょう?強姦は止めてって。

 あたしも女なんだよ。穢され悲しむ女は増やしたくないんだよ。」

氷のような清子の言葉は、烈にはもう届いていなかった。

烈の体が力なく床に倒れ込む。

破れた衣服にしがみついてガタガタと震えている少女に、

清子はやさしく語りかけた。

「怖かっただろう?もう大丈夫だからね。」

これでもう連続強盗生活ももう終わりだ。

そう思った清子に、震える少女が語りかけた。

「あの、助けていただいて、ありがとうございます。

 なにかお礼でもできれば・・・」

「お礼だなんて、私だって強盗だよ。

 ・・・そうだ。

 あなたにお願いがあるんだけど、聞いてくれるかな?

 まず、今夜、私のことは見なかったことにして欲しいんだ。

 そして、今後、手伝ってもらいたいことがあるんだけど・・・」

烈の死体と、怯える少女とを前にして、清子はある計画を立てた。

それは決して贖罪や懺悔とは言えない行為。

「私を犯した烈も、こんな気持ちだったのかな。」

清子はおぼろげにそんなことを考えていた。


 それからも、連続強盗事件は続いている。

しかし一件の事件では殺人事件が起こっていたこと、

その被害者の身元が現場の家の住民と一致しないこと。

強姦の被害が無くなったことなどから、

連続強盗強姦魔の何かが変わったのではないのかと、

警察の捜査はさらに難しくなっていた。

今夜もこの世に復讐せんとする悪の所業が始まる。

それは世の中を変える行為なのか。

はたまた、個人的な恨みによる悪事なのか。

断罪されるのは誰なのか、まだ今はわからない。

今日も闇に紛れた二人の影が、夜の街を物色していた。



終わり。


 悪事にはいろいろなものがあります。

それぞれ悪事には罪があるのですが、

悪事に共通する罪として、伝搬性が挙げられると思います。


盗みを見た人は、犯人が罰せられなければ自分も盗みをするでしょう。

強姦をした犯人を十分に罰しなければ、模倣犯が出てくることでしょう。

悪事は簡単に得になる分、模倣犯を生みやすいものです。

それを止めることもまた取り締まりと同じく重要なことです。


劇中でも烈の悪事は清子の悪事を生み、清子の悪事も伝搬していきました。

悪が悪を呼ぶ。この連鎖を止めることはできるのでしょうか。


お読み頂きありがとうございました。


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