腐女子会 x 王子's
カップリング会議 ~腐女子ナイト~
──アースガルド王宮、私の私室。
月明かりの余韻がまだ残る夜。
秘密の恋物語を聞いた興奮が冷めやらないまま、私は急いで二人を呼び出した。
参加者:
・私(剣聖だけど今は完全腐女子モード)
・ルナ(腐女神、重度BL廃人)
・マリー(私の侍女。普段はおしとやかだけど、腐女子スイッチ入ると止まらない)
部屋はランプの柔らかな光だけ。
みんな寝巻き姿で、クッションに囲まれて円陣。
テーブルの上にはお菓子と紅茶、そして……
手描きの「白 x 黒」推しボード(私がさっき急遽作った)
「みんな、緊急招集ありがとう! 今日のあの出来事……ヤバすぎて一人で抱えきれない!!」
「あかりがこんな時間に呼び出すなんて、絶対アレでしょ? 王子 x 王子? 白攻め黒受け? それとも逆? 早く詳細教えて!!」
既にルナが鼻血を出しそうな勢い。
「私は……黒攻め白受け派だけど、絶対アポカリオン王子がエルヴェシア王子を独占してる感じが……(鼻血)」
あぁ、もたなかったか……。
「ふふ、ルナさんはお熱いですね。
私はどちらもいけるリバOKです。でも今日の袖ツンからの耳元囁き、あれは完全にフラグでした」
あの場で見ていたマリー、流石に見逃していなかったわね。
「では! まず報告します! 大広間のバルコニーでアポカリオンくん(黒)が私に告白したんだよ!! ……いや、王子への想いを!!」
「「きゃああああああああ!!!!」」
二人が抱き合って叫ぶ!
「『エルヴェシアは俺のものだ。誰にも渡さない』って、クールな顔でド直球宣言!!
しかも今日の『見た目は予想と違う』発言、あれ嫉妬だったって!!
白の王子が私に『可愛い子だな』って袖引いて言ったから、黒がヤキモチ焼いてわざと失礼なこと言ったんだって!!」
「嫉妬黒……最高……!! クール王子が内心独占欲MAXとか、ギャップ萌え死ぬ……」
「白の王子、袖ツンからの耳打ちで黒をからかってるんですね。
あれ、完全に小悪魔攻めです! 黒はツンツンしてるけど実はデレデレ……もう尊い……」
「ちょっと待って、じゃあ剣聖様はNTRフラグだったの!? でも剣聖様が強すぎて即撤退したの草――
柱三本吹っ飛ぶ女に王子もビビるわwww」
えっ、ルナもいつの間に見てたの?!
「失礼な! 私はただの観測者だから! このカップルは私が全力で守る!! 食料問題よりこっちが国家の一大事!!」
「カップリング名はどうする? 『白 x 黒』? 『エルアポ』? それとも『アポエル』?」
「私は『アポエル』推しね! 黒攻め感強いし! 今のトレンドは独占欲強めクール攻めでしょ!! 唆るわぁ!!」
「また秘密部屋でみんなと共有したいです……
『秘密の月下告白』とかタイトルで……はぁはぁ」
「みんな……最高の仲間だ……!!
よし、決まり! 私たちでこのカップルを全力応援する腐女子同盟結成!!
次はもっとイチャイチャイベント仕掛けて、原作超えの神展開作るよ!!」
「「「おおおおおー!!!」」」
深夜の王宮の一室は、腐女子たちの熱い叫び声でしばらく賑わった。
(食料問題? 明日考えよう。今は白 x 黒の未来だけが大事!!)
──最強の腐女子チーム、活動開始。
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~二人の出会いと、始まりの約束~
──五年前。
国境近くの古い城塞都市、ヴァルハラ。
当時十歳だったエルヴェシア・アルバス(白の王子)は、父王の命で隣国ノルトルンドとの和平交渉の場に初めて同行していた。
まだ幼さが残る金色の髪と、透き通るような青い瞳。笑顔が可愛らしい王子として、周囲の大人たちから可愛がられていた。
一方、同じく十歳のアポカリオン・エボルス(黒の王子)は、すでに完璧な「王子」だった。
黒髪に深い紫の瞳。
感情をほとんど表に出さず、常に背筋を伸ばし、言葉少なく、冷たく見える。
ノルトルンドの次期後継者として、すでに厳しい教育を受けていた彼は、大人たちからも一目置かれていた。
二人は公式の謁見の後、子供同士ということで大人たちから解放され、城塞の庭園で「少し遊んでおいで」と放り出された。
エルヴェシアは嬉しそうに庭を駆け回り、花を摘んだり、噴水に手を入れたりしていた。
「ねえ、アポカリオン! こっち来て! 見て、この花きれいだよ!」
明るく手を振る白の王子に、黒の王子は少し離れたベンチに座ったまま、静かに首を横に振った。
「……俺はいい」
声は低く、どこか距離を置いている。
エルヴェシアは少し困った顔をしたが、すぐに笑顔に戻って近づいてきた。
「どうして? つまんないよ、一人でいるの。
一緒に遊ぼうよ! ほら、鬼ごっこでもしよう!」
「……王子同士が、鬼ごっこ?」
アポカリオンは呆れたように眉を寄せた。
「俺たちはもう子供じゃない。
そんなことより、明日の交渉の資料を……」
「えー! まだ十歳なのに、そんなのつまんないよ!」
エルヴェシアは突然アポカリオンくんの袖を掴んで引っ張った。
「ちょっとだけ! ね!」
「離せ」
アポカリオンは冷たく言ったが、エルヴェシアは笑って離さない。
二人はもつれ合うように庭を走り回り、結局エルヴェシアが転んでしまった。
「いたっ……」
膝を擦りむいたエルヴェシアを見て、アポカリオンは一瞬目を丸くした。
「……お前、本当に王子か?」
「うん? 王子だよ?」
エルヴェシアは痛そうにしながらも笑った。
「アポカリオンは? 王子なのに、笑わないの?」
「……笑う必要がない」
アポカリオンはそう言いながらも、ポケットからハンカチを出して、エルヴェシアの膝にそっと当てた。
「痛いか?」
「ううん、大丈夫! ありがとう!」
エルヴェシアはにっこり笑って、アポカリオンの手を握った。
「ねえ、アポカリオン。僕、友達になりたいな」
「……友達?」
アポカリオンは初めて、少し戸惑った顔をした。
「俺は……友達なんていらないと思っていた」
「どうして?」
「王子は孤独でいい。感情は邪魔になるって、ずっと教えられてきた」
エルヴェシアは少し悲しそうな顔をして、それから急に立ち上がった。
「じゃあ、僕が教えてあげる! 友達って、すごく楽しいんだよ!」
そして、彼はアポカリオンの前で大きく手を広げた。
「約束しよう! これからも、ずっと友達でいようね!」
アポカリオンは黙ってそれを見つめていた。
夕陽が二人の影を長く伸ばす中、黒の王子は小さく、ほんの少しだけ口元を緩めた。
「……約束、か」
そして、ゆっくりと手を差し出す。
「……いいだろう。約束だ」
二人の小さな手が重なった瞬間、それがただの「友達」の約束ではなく、もっと深い何かの始まりだったことを、まだ誰も知らなかった。
──それから五年。
あの約束は、いつしか「友達」以上のものに変わっていった。
袖をツン、と引くのはいつもエルヴェシア。
耳元で囁くのも、笑顔を向けるのも。
そして、アポカリオンはもう「笑う必要がない」とは言わなくなった。
エルヴェシアの前だけで、本当に笑うようになったから。
(私、こんな過去エピソード知ったら、もう死んでもいい……!! 白 x 黒の原点が尊すぎて、腐女子心が爆発する……!!)




