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腐女子剣聖、騎士団でBL推し活始めました。  作者: 三上折紙


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25/43

間話 あかり x 秘密部屋

 ルナとマリーの新刊が完成した!


 これで十一冊目。

 嬉しい……この世界で初めての薄い本がどんどん増えてゆく。


 もっと他の誰かにも読んでもらいたい。

 ルナとマリーが一生懸命書いてくれた本だから。


 だけど、普通には見せられない本達なので私は王様に頼んでもう一部屋使わせて貰う事にした。


 その部屋は、腐女子会の秘密部屋。


 身バレしたくない人はマスク着用オッケー。

おかげで、ルナもフードとマスクを付けて何気に座って他のメンバーの感想を聞いたり、腐女子トークを楽しんでいる。


 ルールは簡単。

 名前は非公開、Xネームで呼び合う。

 本やグッズは持ち出し禁止。

 ここで会話した内容は外で話す事は禁止。

 違反した者は、袖無し服を着せる。


 ルナから罰則の話が出たとき「袖無し服なんてどう?」と軽く言ったのだけど、ルナとマリーから悪魔を見るような目で見られた――

 

 袖無し服は、この世界のファッションとしてはあり得ないとても恥ずかしい事。

 時には裸より恥ずかしい仕打ちとも言われる格好で、もちろん即採用された。


 本に関しては。

 ルナの文章もだが、マリーの絵も素晴らしい。

 既に神絵師としてルナよりも輝いて見えるほどで、表紙は額装して壁に飾ったりしている。


 私の分は『ガマぐちポシェットくん』から、自前のBL本を取り出して本棚に並べてある。


 しかし、受けているのはこの世界の薄い本。

 やはり実際に知っている人物のネタの方が腐女子の想像力を刺激するようだ。


 秘密部屋は毎日大好評。

 連日のように新規さんも増え、中には腐男子の姿もチラホラ。

 

 ある日、運営スタッフが慌てて私の事を呼びにきた。

 どうしても私に対応して欲しい方がいるとの事。


 本棚の影からラウンジを覗くと……。


 マスク姿で顔は隠されているけれど……その御婦人は王妃様に見える。


 私は、静かにその方の席へと向かう。


 私が側に立った事に気が付いた王妃様が、顔を上げて微笑まれる。

 間違いない――王妃様。


 相席させて貰い、王妃様との会話を試みる。

「初めてのお方ですね……どのような作品がお好みですか?」


 王妃様は、読んでいた薄い本の表紙を確認するように私に見せると。

 

「王様と執事の秘めた恋愛物が素晴らしいわ」

 そういって静かに息を吐くと、薄っすら頬を染めた。


 あ――この人、夫を腐な目でみてるよ!!


 王妃様の話しはさらに続き。

「この本では、この人(王)は攻めで書いてあるけれど、実は受けの面もあるのよ」


 王妃様の言葉が部屋に落ちた瞬間、部屋の空気が凍りついた。

 

――実は受けの面もあるのよ。


 マスク越しでも分かるほど、王妃様の瞳が妖しく輝いている。

 普段の優雅で気品あふれる王妃とは別人のような、腐女子特有の「獲物を見つけた」目だ。


 隣にいたメンバーの一人が、ぷるぷると震えながら小さな声で呟いた。


「…王妃様が…王様を受けに…?」


 その言葉をきっかけに、静まり返っていた部屋が一気にざわめき始めた。


 口を手で押さえながら肩を震わせる者、テーブルに突っ伏して悶絶する者、すでにスケッチブックを開いて猛スピードで描き始める者。


 マリーはすでに三ページ目に入っていた。


 ルナはフードの下で目を血走らせ、ペンを走らせている。


 タイトルは決まっているらしい。

『王の秘められた涙 ~執事の優しい檻~』


 あかりは必死に平静を保ちながら、王妃様に微笑みかけた。


「それは……とても興味深い解釈ですね。執事様が攻めで、王様が受け寄り……という設定は、まだ誰も書いていないと思います」


 王妃様は優雅に紅茶を一口すすり、満足げに頷いた。


「ええ、そうでしょう? あの方は普段は威厳たっぷりですけれど、時々見せるあの弱々しい表情……あれは完全に受けの顔よ。私が見てきた中で一番の受け顔だわ」


 部屋の隅で誰かが気絶した。

 気絶というより、興奮のあまり意識を手放したようだ。

 

「それにね」


 王妃様は声をひそめて続けた。


「寝室で私に甘える時のあの声……本当に可愛らしいの。あれを再現したら、素晴らしい受けボイスになると思いません?」


 もうダメだ。この部屋は崩壊する。


 あかりは慌てて立ち上がり、ルールを思い出した。


「あ……王妃様! その……ここでの会話は外に漏らしてはいけませんよ! 特に王宮関係の……」


「あら、王妃とは何方の事かしら?」

 

 王妃様はにっこりと笑った。


「私は、Xネーム『RoseThorn42』としてここにいるのですもの。秘密は守りますわ」


 その瞬間、マリーが完成したばかりのラフスケッチをそっと見せた。


 そこには、執事服姿の男性に優しく抱きしめられ、涙目で頬を染める王様の姿が描かれていた。


 完璧な受け顔。

 王妃様が言うところの「一番の受け顔」そのものだ。


 王妃様の目が輝いた。


「素晴らしい……! これ、まさに私のイメージ通り!」


 そしてその日の夜。


 王妃様は自室で、密かに新しい薄い本の原稿を書き始めた。


 タイトルは『私の可愛い王様 ~知られざるM属性~』

もちろん著者は匿名、Xネーム『RoseThorn42』。


 翌週の腐女子会でその本がこっそり回覧された時、部屋は過去最高の悲鳴に包まれた。


 そしてあかりは思った。

(この部屋……もう秘密じゃなくなっちゃうかも……)


 でも、王妃様が楽しそうにマスク越しに笑っているのを見て、そんな心配もどうでもよくなった。


 この、Xネーム『RoseThorn42』の作品に影響されてルナが大量に作品を投下。


 薄い本はますます充実され、腐女子の輪は確実に王宮の奥深くまで広がっていくのでした。


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