謁見 x 晩餐会
ついに王子が帰ってきた。
隣国の王子も一緒で、今から帰国の報告と王様への顔合わせ。
私もこの国で唯一の『剣聖』と言う立場でお会い出来るみたいだけど、それより隣国の王子まで『剣聖』の噂を知っていて「ぜひお会いしたい」と言われているらしい。
その噂、何処まで広がっているの?
マリーさんに手伝って貰いドレスに着替え、マリーさん……コルセットは優しくお願いね……くっ……だから……なんか出る……。
引き攣った顔をしながら謁見の間まで移動、さすがに隣国の王子が一緒と言う事で、お会いするのは謁見の間となったようです。
そこにいたのは紛れもなく『王子 x 王子』の白の王子と黒の王子のお姿。
動いてるよ! 歩いてるよ! あーっ、見つめあって笑ってる。
あっ、こっち見た?! 白が黒に顔を寄せて何か囁いてる。
黒もこっち見て……。
あっ私に笑顔向けなくて良いですから、白と絡んで下さい。
ほらっ、その袖ツンってするやつ! 原作と同じ!!
めっちゃテンションが上がって食料問題の事を忘れてしまいそうになる。
第一王子、エルヴェシア・アルバス(白)・アースガルド
十五歳、まだ若干幼さも見える容姿だけれど間違いなく美男子。
隣国の王子、アポカリオン・エボルス(黒)・ノルトルンド
十五歳、いかにもエリートな見た目のイケメン王子。
挨拶が終わり、黒の王子が私と話しがしたいという事で近くに呼ばれた。
おほー、動いてる『白 x 黒』だー!
私の変なテンションを緊張していると勘違いしてくれたのか「大丈夫ですか?」と心配してくれる黒の王子。
私はドレス姿なのでカーテシーで挨拶、王子達は片足を引いて軽く頭を下げて挨拶を返される。
「……見た目は、予想と違っていた」
ん? 一瞬、頭の中が真っ白になった。
予想と違う? このドレス姿の私が? このふわふわスカートの私が? このコルセットで無理やり寄せた胸の私が?!
「え、あの……失礼な!」思わず声が裏返った。
黒の王子、アポカリオンくん(心の中でくん付け決定)は、わずかに眉を寄せつつ、淡々とした表情で私を見据える。
キョトンとした顔ではなく、静かに観察するような視線。
「失礼な意味ではない。剣聖の噂を聞き、もっと……武骨な戦士を想像していた。筋肉質で、背が高く、鎧を纏ったような」
……あー、なるほど。
確かに「剣聖」って響きだけだと、ゴリゴリの武人想像するよね。
私は……いまだに剣を構えるとへっぴり腰だとオーウェン隊長に指摘されるくらいだし。
でも!!
「私は見た目で剣聖やってるわけじゃないんですけど!?」
「……確かに、そう見える。予想外だった」
アポカリオンくん、クールにさらっと認めてくる。
褒め言葉のつもりなのか? でも「可愛い」みたいな軽いノリじゃなく、事実を述べるような冷静さ。
爆弾投下感が薄れて、むしろ分析的な感じ。
隣で白の王子、エルヴェシアくんがクスクス笑ってる。
袖を軽く引かれて、アポカリオンくんが耳元で何か囁かれて……。
あー!! これこれ!! この絡み!! 最高かよ!!……って、待て待て。
今は萌えてる場合じゃない。
「で、でも! 見た目で侮ったら痛い目見ますよ? 私、本当に剣聖ですから?」
「……証明できるか?」
アポカリオンくん、静かに腰の剣に手をやる。
ニヤリじゃなく、淡々とした視線で。
興味は本物らしいけど、感情が表に出ないクールさ。
おおおおお!! まさかの即バトル展開!? 謁見の間で!? 王様まだいるのに!?
「ちょっと待てアポ。いきなり剣を抜くな」
エルヴェシアくんがため息混じりに止めるけど、アポカリオンくんは静かに剣にかけた手に力を込める。
「……少し手合わせを」
「ここでやったら謁見の間が血みどろになりますよ?」
私が本気で言ったら、二人が同時に「……え?」って顔になった。
「いや、私が本気出したら、多分……この柱、3本くらいは吹っ飛びます」
……沈黙。
王様まで固まってる。
アポカリオンくん、ゆっくりと剣から手を離す。
表情は変わらずクールだが、目がわずかに細まる。
「……見た目は、関係ないようだ」
「ですよねー」
エルヴェシアくんが吹き出す。
「アポ、お前完全にナメてかかってたろ。剣聖の噂は本物だって俺言ったのに」
「……女の子が剣聖とは、想像しにくかった」
「また言いましたね!?」
「……事実だ」
もうダメだこの人たち。
でもクールになったアポカリオンくん、なんか余計にカッコいい……。
私はため息をつきながら、内心でガッツポーズ。
……よし、今日のところはこれで「白 x 黒」のイチャイチャをたっぷり堪能できたし、剣聖の威厳も守れたし、最高の日だ!!
(でも次に「普通」とか言われたら、本気で一発剣振ってみせようかな……ふふ)
謁見の間、なんだか妙に和やかな空気で終了したのでした。
その後は大広間に移動しての晩餐会。
今回の料理のプロデュースは私!
みなさんに色々と食べてもらおうと、この世界では珍しいビュッフェスタイルにしてみた。
広間に入ってくるなり、皆が入り口付近でたむろして中まで入ってこようとしない。
「みなさん、奥まで入って来てくださいねー。 後ろが詰まっていますよー」
こんな時は、年末のイベントで培った人員整理の知識を使って人を誘導する。
「あなたはあちらー、御婦人方はこちらはどうぞー、新作のデザートもありますよー」
「席が無いようだが、我々はどこに座れば良いのだね?」
「お疲れになられた方の席は用意してありますが、今回は皆様お立ちになってのお食事となります。色々な方とお話しを楽しみながらお過ごし下さい」
「どんなメニューがあるのかしら?」
「それぞれにシェフが立っておりますので、お尋ねになられて下さい。新しい料理も沢山ご用意していますので!」
今回用意したのは、お好み焼き! ピザ! 唐揚げ! ポテトサラダ! フライドポテト! カレー! ふわふわのパン! ハンバーグ! マヨネーズ! コンソメスープにプリン!
料理も大盛況でした! ビュッフェスタイルも特に奥様や御令嬢方に好評で、自分の好きな物を好きな分量ずつ食べられると言うのが良かったようです。
コース料理ってさ、美味しいと思って食べていると最後に「ソレが来るなら(お腹)空けといたのに!」という事があるからね。




