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腐女子剣聖、騎士団でBL推し活始めました。  作者: 三上折紙


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17/43

マリー x BL

 剣聖様……もとい、あかり様のお世話をさせてもらうようになって一月(ひとつき)余り。

 今日は、初めてあかり様がお城の外に遠征(魔物退治)へと出かけて行かれ、久しぶりに(わたくし)ひとりとなりました。


 あかり様が来られてからと言うのは、とにかく慌ただしくあっという間の一ヶ月でしたが、とても新鮮で楽しい時を過ごさせて頂いております。


 私が母の元でメイドの修行をしていた時には、凡そこんな経験が出来るだなんて思ってもみませんでした。

 良くて母の下で王城のメイド、下手すると何処かの下衆な貴族の目に止まってお呼びが掛かっていたかも知れません。

 まっ、そんな事は母が許さなかったと思いますが……。

 

 ……部屋の掃除を済ませてしまいましょう。


 ふとベッド横のキャビネットに目を向けると、そこにはあかり様が大事にされていた本が一冊置かれているではないですか。


 はて? 何故でしょう?


 あかり様は『ガマぐちポシェットくん』から取り出した品は、必ずマジックバッグへと閉まっておられるはず。

 

 そっと表紙を見てみると『幼馴染近衛騎士、二人の愛は闇より深し』。

 思わず手に取りそうになりましたが、これは剣聖様の大切な御本だと必死で抑えました。

(これは剣聖様の大事なご本、勝手に触ったり見てはいけない)

 

 ただそう思うと、余計に見たいと言う気持ちがものすごく湧き上がって参りました。


 気持ちを抑えるために部屋の掃除をしておりましたが、どうしても我慢できずに、その本の前にじっと立ち続けること数時間……。


 あかり様は、ここから三日ほどかかる村へ遠征に向かわれました。

 往復で六日、向こうで比較的にスムーズに用件が済んだとしても三日はかかるでしょうから、十日程はこちらに戻って来られないはず……。


 そう思うと、その本を手に取らざるを得ませんでした

 その表紙は写し絵とは思えないほど精細で美しい彩色の施された人物画、あかり様が時に目を止めて見ているアルバラード様とカイル様によく似ていらっしゃいます。


 その二人の男性がなぜか寄り添い、服の前をはだけさせ、肌に手が触れ合っているのです!!

 なんというハレンチな絵なのでしょう。

 しかし私はその絵姿から目が離せないでいました。


 そろそろと最初のページを開くと――


 扉絵とは違う、上半身裸の男性の絵が!!

 何故二人は抱き合っているのでしょう?!

 そして目が離せない私――


 これは禁書よ、禁書だわ。

 私がこのようなものを見てはいけなかったのよ。

 そう思っても視線をそらすことができず、その文章を読み止めることもできず、私は次々とページをめくっていました。


 すごい……こんな世界があったなんて。

 私はその書物に書かれた物語に没頭し、その日からあかり様が帰る日まで、何度も何度も読み返していました。


 それからと言うもの、私が日常の中で見る世界が変わりました。

 それまでは、他のメイドさん達の会話。

 あそこの騎士があそこのメイドにプロポーズしたらしいわよと言う話や、どこそこの侍女が◯◯伯爵の〜等と言った男女間の噂話恋話ばかりが聞いて聞こえてきていたのですが。


 その様な話には興味が無くなり、ふと目にするのが男性同士の騎士であったり、楽しそうに会話をしている男性の目線であったり、その仕草や行動が目に止まるようになったのです。


 私はどうしてしまったの? この気持ちは何? 

これは、恋と言うものとは違う気がする。


 ただこれまでも垣間見ていた、あかり様がアルバラード様とカイル様を見る目、時折り鼻血を出して倒れそうになっている姿を思い出すと、もしかするとこういう世界を見ていたのかもしれないと気がつきました。

 

 これがあかり様の見ていた世界?

私は、あかり様に少しだけ近づけた思いがして嬉しくなりました。



「マリーちゃん、ただいま!」


 あかり様と剣聖騎士隊の皆様が帰って来られました。

 あかり様も騎士隊の皆様にも怪我が無かったようで安心しました。


「あかり様、お帰りなさいませ。その子犬は?」


「わんっ!」


 あかり様の腕には、銀色の毛をしたとても可愛らしい犬が抱かれていました。

 もともと可愛いものが大好きだった私は、思わず手を伸ばしたのですが……。


「この子はね、女神ルナリニア様」


 あかり様のその言葉を聞いて、伸ばしていた手どころか全身が固まりました。


「でなくて、神獣フェンリル……的な?、子犬のルナよ」


 そこまで聞いても訳が分からず固まっていると。

 あかり様が、私の腕にルナ様をそっと載せられました。

 私はもう、その柔らかさとモフモフさにあっという間に魅せられてしまいました。


 あああああーっ! かわいい! ふわふわ!


「マリーにもお土産があるから、後で食べてね」

 その言葉すら遠い彼方に聞こえる程に、その柔らかさとルナの可愛さにのめり込んでしまいました。


 ・

 ・

 ・


「村はどうでしたか?」


 やっと意識を取り戻したマリーが淹れてくれたお茶を飲んでいると、マリーが遠征の様子を聞いてきた。


「すごく大きなホーンベアーが出て来てとてもびっくりした。でも無事にやっつけて帰ってきたよー」


 私は、わざとチェストに置いて行った本を横目で確認する。

 触れていない? いや、チョットだけ動いてる!

 だけど、お掃除の時に動いただけかも知れないし……マリーが読んだかどうか分からない。


「おいあかりっ! 王の執務室に行くぞ!」


 そのとき、オーウェン隊長がノックもせずにドアを開けて入ってきた!


 こらっ! 乙女の部屋にノックもせずに入って来るな!

 着替中だったらどうするのよ!


 オーウェン隊長を見て、頬を染めるマリー。


 その姿を見て確信した! これは恋の顔じゃない、われわれの同志が腐な妄想をしてる時の顔だと。


 ああーっ聞きたい! マリーちゃんも同じ界隈なのって聞きたいーっ!


 私がマリーちゃんの事を考えて悶えていると、オーウェン隊長からガッと腕を掴まれ、左手ではルナを持ち上げて連れ出されてしまった。


 スタスタと先を歩くオーウェン隊長。


「ホーンベアーの報告なら態々私が行かなくてもいいんじゃないですか?」


 ピタッと立ち止まり、お前の所為だと言いたそうな顔で睨むオーウェン隊長。


「それだけなら俺も書類一枚で済ませられたん()()()! 誰かさんの所為でこんな面倒な報告をするハメになった」


 それも私の所為と言うより、この腐女神の所為だし……。

 私の腕の中で、我関せずと丸まっている犬を見る。


「何だと?!」


「何でもありませーん」


 王様の執務室の前に到着すると、事前に知らせてあったのかすぐに入り口の兵士が中に声を掛けて扉を開けてくれた。

 アルとカイルを剣聖騎士隊に貰っちゃったから、ここも新しい近衛騎士さんに変わってる。


「失礼します国王陛下、遠征の報告に上がりました」


 書き物をしていた王様が手を止めて顔を上げる。

 オーウェン隊長を見て頷き、私を見て不思議そうな顔をして、抱かれている犬を見て驚いた顔をしている。


「一応、話しは聞いているが。報告を聞こうか?」


 オーウェン隊長が一歩前に出て、今回の遠征の報告を始める。


「ボルド村に出現した魔物の討伐に付いては、書類でも提出しておりますのでそちらをご確認頂きたいと思います。

 本日は、別件で内密に報告しておきたい事柄がございまして……」と、ここでチラッと室内にいる騎士の方へ目線を向ける。


「それほどか?」


「知るものは少ない方が賢明かと」


 王様が頷くと、後ろに控えていた執事さんが近衛騎士を連れて部屋を出ていく。


「これで良かろう、それで?」


 オーウェン隊長の目線が天井を見るけれど、何なに暗部の人とかもいるのかな?


 振り返ったオーウェン隊長が私を呼んでルナの説明をさせる。

 

「えー、では。見てもらった方が早いですかね? ルナ」

 

 ルナが人の姿に戻る――


 姿を見て、慌てて机から飛び出しひれ伏する王様。

 天井からもガタッという音が聞こえた、暗部の人もまだまだだね。


「そこまでする必要はない、面を上げよ王よ」


 それでも中々顔を上げようとしない王様。


「もう月の女神としての力は抜けておる、ここに居るのはあかりの友人の『ルナ』じゃ。これからはあかりと同じ様に接してくれて構わん」


 そろそろと顔を上げて、体を起こす王様。

 ルナが執務室のソファに腰掛けたので、皆でソファへと移動する。


「……それで、ルナ様はこれからどうなさるおつもりで?」


 恐々と尋ねる王様。

 そうだよね、それ気になるよね!


「どうもせん……あかりと一緒にBLを楽しませて貰うだけじゃ」


「「びー・える?」」


 ギャー!! 何言ってるのこの腐女神は!

王様とオーウェン隊長の頭にハテナが浮かんでいる。


「め! めめ! 女神としての力はほぼ失ったと聞いていますから! 普段は私のペットとして過ごさせます!!」


 慌てて腐女神を引き寄せて、子犬の姿に変わらせる。

 とにかく普段は絶対コレ! この姿なら誰も女神だなんて思わないでしょ?!


「まあ……その御姿なら?」


「王様……甘いですよ、子犬の姿をしていますが。その姿も神獣フェンリル様ですから……」


 ボソッと王様に告げ口するオーウェン隊長。


 それを聞いて固まる王様。


 もう、オーウェン隊長も要らない事教えないでよ!



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