表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腐女子剣聖、騎士団でBL推し活始めました。  作者: 三上折紙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/43

あかり x ?

 馬車が村の入り口に到着したのは、陽が傾き始めた頃だった。

 

「……あれ?」


 村は静かすぎた。

 

 煙突から煙が上がる家は数えるほどで、道端には誰もいない。

 

 鶏すら鳴かない。

 

 まるで人がいなくなった後の世界みたいだ。

 

「全員、警戒態勢!」


 オーウェン隊長が即座に声を張った。

 

 馬に乗っていた騎士たちが一斉に剣を抜き、馬車を守るように円陣を作る。


「……村人が一人も見えない。これは」

「まさか、誰も居ないの……?」


「誰か居ないか! 我々は王都から来た剣聖騎士隊だ! 誰か、返事をしろ!」

 

 隊員の一人が村人を探す声を上げた瞬間。


 ゴォォォォォォォッ!! 奥の森の方から、地を這うような咆哮が響いた。

 

「来るぞ! 全員、剣聖を守れ!」


 隊長の号令と同時に、森の木々がバキバキと折れる音が近づいてくる。


 現れたのは――

「うわ、デカッ!」


 体高二メートルは軽く超えてる。茶色の毛に覆われた巨体。

 額から生えた二本の角は、まるで槍みたいに鋭く反り返っている。

 

「あれが……ホーンベアー」

 

 しかも一匹じゃない。

 後ろからもう一匹、さらに小さいのが二匹……合計四匹。


「数は想定内だ! ガッツ、メルドの班は左右に展開、前衛! 残りは剣聖の護衛に専念!」


「了解!」

「了解しました!」


 ガッツさんとメルドさんの班が馬から飛び降り、即座に前進する。


 一班四人ずつで連携の取れた動き、左右から剣と盾を合わせて大きな音を出してホーンベアーを牽制すると、小さめの二匹がそちらに釣られて離れていく。

 

 ホーンベアーの一体がこちらに気づいたらしく、地面を蹴って突っ込んできた。


 ズドドドドドッ!!

 

「うわっ、速っ!」

「甘い!」


 オーウェン隊長が馬車から飛び降り、剣を抜く。


 そこにマクシス副隊長も続く。

 

 って、私も何かしなきゃ!

 

「私も行きます!」


「ダメだ! あかりはここに――」

「護衛されてるだけじゃ、私の存在意義がないじゃないですか!」


 私は馬車から飛び降りた。


 エアクッションのおかげで着地は完璧!

 

「……仕方ない、なら俺がすぐ横に付く」

 

 隊長が苦笑いしながら私の隣に立つ。

 

 ホーンベアーが目前まで迫った瞬間。

 

「「――ハァァァァッ!!」」

 

 隊員二人が左右から斬りかかる!

 けれど、ホーンベアーの前脚の一撃で二人は吹き飛ばされた。


「「ぐっ……!」」


「大丈夫!?」

 駆け寄って、すぐに回復魔法を掛けてあげる。


「馬鹿野郎! 一人で離れるな!」


 オーウェン隊長の声が聞こえて顔を上げると、そこにはホーンベアーの巨大な顔が迫っていた!!


 ガァアアアア!!


「キャァアアアアアアアアアア!!」


 思わず目を閉じて叫んでしまう。


 ドゴォォォォン!!

 

「……あれ?」


 もの凄い衝撃が来るかと思っていたけれど、一向に何も起こらない。

 恐る恐る目を開けると、そこには半透明な病院の防火扉がドーンと現れていた。

 

 ホーンベアーは、防火扉に衝突した衝撃でツノが折れヨロヨロとしている。

 

「す、すごい……これが剣聖様の魔法!」「助かった……のか?」騎士たちがどよめく。

 

 折れた角から血を流しながら怒り狂ったホーンベアーが今度は口を開けた。


 これは!!


 ゥゴァアアア!!


「!!」

 

 私は叫ぶより早く、脳に浮かんだ呪文を唱える!

 病院で見た、消火用の巨大な泡。

 

「消火!!」

 

 ホーンベアーの口に、大量の消火泡が詰め込まれる。

 

「グボッ!? グボボボ……!」

 

 ファイヤーボールどころか、泡しか吐けなくなったホーンベアーが苦しそうにもがく。

 

「今だ! 全員でかかれっ!」

 

「「「おおおおおっ!!」」」

 

 騎士たちが一斉に斬りかかる。

 

 残った一体が、仲間が倒されたのを見て怯えたように後退り始めた。

 

 ――逃がさない! 私は深呼吸して、思い切り叫んだ。


 「ちょっと待ちなさいって! 逃げるなんて許さないんだから!」

 

 イメージは――

 昔見たアニメで、『どこに堕ちたい?』で有名な九人の戦士。

瞬き(まばたき)する間も無くホーンベアーに追い付き、追い抜きざまに剣を振る。

 剣を振るイメージは、何でも切ってしまう必殺の刀。

 

 逃げようとしたホーンベアーの体を、本人クマ?が意識する間も無く切り裂いていた。


 ドサッ……最後のホーンベアーが倒れる。


 静寂が戻った。

 

「……終わった?」


 私が呟くと同時に――


「「「剣聖様ーーーっ!!」」」


 騎士たちが一斉に歓声を上げた。


「ふぅーっ」


 皆んなの歓声を聞いて、ほっと肩の力を抜く。


「!!」


 急に膝がガクガク震え、全身から汗が吹き出す。

 自分では立っていられなくなり、目の前が真っ暗に……。


「おいっ、あかりっ……」


 遠くでオーウェン隊長の声を聞きながら、私は意識を失った……。

 

◯◯◯●●●◯◯◯●●●◯◯◯●●●


「やあ、窓乃朱里さん。やっと来てくれたね――」

「ああっ! あかりさん! やっときたわね。ささっ、早くコレの、この本の続きを出して頂戴!!」


 気を失ったと思ったら、突然見知らぬ場所に立っていた。


「……あれ? ここ何処? 隊長さんは? 皆んなは?」


「ほら! ボーッとしていないで、早く!」

「お前は少し黙ってろ!」


 真っ白な空間……

 

 目の前には、存在は感じられるのだけれど姿がハッキリと認識出来ない人物が、ゴチャゴチャと雰囲気ぶち壊しで叫んでいた。


 あー、これってやっぱり……。


「そうだよ。いわゆる“神様登場”ってやつさ」


 視界がゆっくりと焦点を合わせていく。

 

 そこに立っていたのは、予想外に普通の……ってか、めっちゃ美形の青年と、座り込んでイジケて……いや……何か本を読みながら人に見せちゃいけない表情をしている美女……?

 

 白いシャツに黒のスラックス、銀色の髪を無造作に流して、片手にコーヒーカップ。

 どう見ても二十代後半くらいの、ちょっとだらしない感じのイケメン。

 

「え……神様って、もっとこう、輝いてたり、髭生やしてたりしないんですか? ……で、あとそちらの残念な美女さんは?」

 

「髭って……ステレオタイプすぎるだろ。現代の神はミニマリストなんだよ。

 それと……そっちは一応女神……な、今は腐女神って呼んだ方が早いがな……で、窓乃朱里――いや、もう“あかり”でいいか」

 

 彼はニヤリと笑って、指を鳴らした。


 パチン。


 すると白い空間に、さっきの戦闘シーンがホログラムみたいに浮かび上がる。

 

 防火扉でホーンベアーを跳ね返す私。

 消火泡で口を塞ぐ私。

 そして、最後に……あの、明らかに“やりすぎ”な斬撃。


「いやー、正直言って笑ったわ。病院の防火扉に消火泡って……お前、異世界転生もので一番ヤバい方向に才能開花してるぞ」

 

「そ、そんなこと言わないでくださいよ……! あれしか浮かばなかったんですから!」

 

「まあいい。それよりさ、ちょっと聞きたいんだけど」


 神様がコーヒーを一口飲んで、急に真顔になった。


「お前、本当に“剣聖”でいいの?」


「……え?」


「だってさ、さっきのあれ、完全に“病院聖”じゃん。いや、“現代施設聖”とか“消防設備聖”とかさ」


 私がムッとして睨むと、彼は肩をすくめた。


「冗談だって。でもさ、ちょっとマジで聞くけど――お前、この世界で何がしたい?」


 突然の質問に、言葉に詰まる。


 何がしたい……か。


 ……正直、まだちゃんと決めてない。


「BLよねっ!? あかりちゃんは、この世界でもBLを謳歌したいのよねっ?!」


 突然割り込んできたこの女性は……って、ええええーっ!?

 貴女が手に持ってるそれって、私が『ガマぐちポシェットくん』に封印しておいた『婚約破棄された転生侯爵令嬢が、腐女子拗らせて王子と王子を全力でカップリングします』じゃないですか!?


「何でそれがココにっ?!」


「私が『ガマぐちポシェットくん』にアッチの世界と繋がるマジックバッグの機能を付けてあげたのだから、私達にも閲覧・利用が可能なのよ。だけど安心して、その中から無くなることはないから」


 いや、そんな事じゃなくて……あ……。


 思い出した……あっちの世界で死ぬ直前、「助けてあげようか?」って言われて、なんか勢いで「はい!」って答えたけど……あの時の声って、この人だったの?

 

「私は……」


「ほら、正直に言ってみなよ。俺、嘘はすぐ分かるから」


 神様は、私の目を見て、本当に優しい笑みを浮かべた。


「――みんなを、守りたいんです」

 

 自分でも驚くほど、素直に言葉が出た。


「騎士団の人たちも、村の人たちも……私を信じてくれた人たちを、二度と失いたくない」


 すると神様は、静かに頷いた。


「そっか……それでいいよ。それが、あかりの“聖”の形だ」


 そして、彼は私の前に手を差し出し。


「じゃあ、約束しよう。あかりがその想いを貫く限り、俺は全力でバックアップする。

 ……ただし、ちょっとくらいは派手に行けよ? 地味だと面白くないからな」

 

「は、派手って……これ以上どうしろって言うんですか!」


「さあねー。次はエレベーターで敵を閉じ込めるとか、自動販売機で回復ポーション量産するとか? 可能性は無限だよ」


「私は、貴女のBL妄想を楽しみにしているわねっ!」


 私が呆れるのを見て、彼は満足そうに笑った。


「さあ、そろそろ戻る時間だ。騎士団の連中、心配してるよ。特にあのオーウェンってやつ、めっちゃ泣きそうな顔してた」


「えっ、隊長が!?」


「うん。『あかりが死んだら俺はどうすれば……』とかブツブツ言ってた。かなり重症だな、あれ」


 ちょ、ちょっと待って!?


「じゃあな『あかり』。また面白いことやってくれよ」

「あかりちゃん! 本、本だけヨロシク!」


「ちょっと! 説明が――」


 白い世界が、ぐにゃりと歪む。


 次の瞬間。


◯◯◯●●●◯◯◯●●●◯◯◯●●●

 

「は、あれ?」

 

「「「剣聖様ーーーっ!!」」」


 騎士たちの上げる歓声が聞こえてくる。


「あかりっ!」


 駆け寄ってくるオーウェン隊長。


「すごいなあかり! さっきのは何て技だ!?」


「あれ? オーウェン隊長、泣いていたんじゃ?」


 隊長はキョトンとした顔で私の肩をバンバン叩く。ちょっと痛いよ!


「泣く? 何で俺が泣くんだ?」


「え? あれ? おかしいなぁ?」


 私は、何故か噛み合わない話しに首を捻りながら、オーウェン隊長と一緒に歓声を上げる隊員達の方へと歩いていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 神

太陽の神、アポロータス

 

月の女神、ルナリニア


いつも作品を読んで頂きありがとうございます。

続きが気になりましたらブックマーク、リアクション、評価をして頂けると作者が大変喜びます。

是非、よろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ