アルバラード x カイル x 剣聖
「頭いたい……」
「何しに来たんだアイツは」
翌日、『アルバラード x カイル』の訓練を堪能(見学)していたのだけれど二日酔いのせいでしっかり楽しめない……。
訓練場の隅でクタッと横たわっていたら、
「剣聖様、回復魔法のキュアを使うと二日酔いは治りますよ?」
と、カイルくんから教えて貰いすぐにキュア試す。
「ふっか〜つ!」
二日酔いは、体に残った分解されていないアルコールが原因で起こるから、言ってみれば毒状態だという事。
なのでキュアが効くのだそうです。
もう! もっと早く教えてよ!
これで心置きなく『アルバラード x カイル』を堪能できる!
「さあ! もっと私に見せて頂戴!!」
「だから……何しに来たんだオマエは」
アルバラードさんには呆れられてしまったけれど、貴重な『アル x カイル』を楽しめるチャンスなのよ!
「いいから、次は何をするの?」
「次は……組み手の予定だけど……」
チラッとカイルくんがアルバラードさんを見る。
大丈夫だと頷くアルバラードさん。
「いいわね! 組み手!」
私は、用意してあった椅子にドカッと座ると、特等席で観戦体勢を整える。
「さっ! 始めてちょうだい」
マリーから差し出されたお茶を飲みながら、心ゆくまで『アル x カイル』の姿を堪能させて頂きましょう――
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アルバラードさんの緊張した息づかいが聞こえる。
受けるカイルくんは、少しでも負担にならないように意識を集中してすでに首筋から汗をかいている。
お互いが深く息を吐く。
流れるように絡み合う二人。
生々しく交錯する影。
吐く息と、足捌きの土の音。
ゆっくり、ゆっくりと行われる組み手に
お互いの汗が混じり、それぞれの体を伝う。
絡み合う肢体が、私の視覚に飛び込んでくる。
飛び散る汗が、私の嗅覚に呼びかける。
熱い吐息が、私の脳内を刺激する。
あっ……だめ……もうクラクラしちゃう……。
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「剣聖様……? 剣聖様?」
カイルくんの声でハッと我に返ると、私は椅子から完全に滑り落ちていた。
床に這いつくばったまま、他人には見せられない顔で「……もう一回……もう一回だけ……」と呟いていたらしい。
「あは、カイルくんだぁ……カイルくんさぁ……アルバラードさんのこと――」
私は、頭がボーッとして何を言っているのか理解していなかった。
(頭の中で、さっきの組み手が勝手に補完されていく――
「カイル、こうか?」
「……っ!……うん……大丈夫」
「もう少し、強くしてもいいか?」
「あっ……まって……」
「待てない……もう、抑えきれないんだ」
アルバラードさんの上気した顔がカイルくんに迫る。
「アル……何だか熱い……熱いのがくるよ」
「カイル!!」)
「だ、ダメです剣聖様! これ以上妄想が暴走すると本当に鼻血出ます!」
マリーが慌ててハンカチを押し当ててくれる。
その向こうで、アルバラードさんが完全に呆れ顔で腕を組んで立っている。
「……お前、本当に剣聖か?」
「剣聖ですけど何か?」
「いや……もういい。カイル、休憩にしよう」
「え、でもまだ組み手の途中ですけど……」
「いいから来い」
アルバラードさんはカイルくんの腕を掴んで、強引に訓練場の隅に連れて行く。
……あれ? なんか雰囲気、変わった?
私は鼻血を押さえながら、こっそり耳を澄ました。
「……アル、急にどうしたの?」
アルバラードさんの低く、掠れた声。
「……さっきの、お前の声が頭から離れねえ」
「え……?」
「“待って”って言ったよな。あれ、本気で言ったのか?」
カイルくんが顔を真っ赤にして――
「ち、違うよ! あれはただの組み手の……!」
「……俺は、本気だった」
……。 ……え? ……ええええええええええええ!?
私が立ち上がるより早く、アルバラードさんはカイルくんの腰に手を回して、壁際に押し付けた。
「ちょ、ちょっとアル!? 人目があるって……!
「見せつけてやるよ。あの変態剣聖に、俺たちがどれだけ本気か」
「え、え、ちょ、まっ……!」
次の瞬間、アルバラードさんがカイルくんの顔をぐっと近づける。
二人が見つめ合う距離、ゼロセンチ――!
私は、鼻血を噴きながら倒れた。
(現実が……妄想を超えたああああああああああ!!!)
マリーが必死で私の背中をさすっている。
「剣聖様!? 剣聖様しっかりしてください!!」
遠くで、アルバラードさんの低い笑い声が聞こえた。
「……次はお前が相手だ、剣聖」
……え、私!? いや待って、私もう満足したから!!
今日はもう帰ります!! 本当に!!!
(でも……もうちょっとだけ、見たいかも……)
というわけで、その日の訓練は「アルバラード x カイル x 剣聖(観戦席)」の三つ巴で、史上最高に意味不明な熱量で終了したのでした。
(私は……もう、戦わなくていいよね……?)




