ep4
僕は、王女殿下と別れたあと、
今日から身を置くことになる宮殿の中庭を一人で巡回していた。
いざという時、身を隠せる場所はあるか。
あるいは、我々の動きを監視する者が潜んでいないか。
念のため、城の隅々まで目を光らせていたその時——
バンッ!
「うわっ!」
前方から大きな荷を抱えた少年が、勢いよく僕にぶつかってきた。
「し、失礼いたしました! お怪我は……!」
少年は慌てて膝をつき、深く頭を下げた。
元の色が判別できないほど汚れた布を服のようにまとっている。
おそらく明日の婚儀の支度のために、下働きとして城へ来ているのだろう。
「君こそ、大丈夫か?」
僕はしゃがみ込み、少年の顔を覗き込んだ。
泥にまみれたその顔立ちは驚くほど整っており、
粗末な身なりの中にも、どこか貴族の血筋を感じさせる。
——この顔。どこかで、見たことがある。
「お、お許しください……!」
再び深く頭を下げる少年。
僕は、しばらく考え込んだ後、静かに口を開いた。
「……まさか、お前は——レオなのか?」
その瞬間、少年の瞳が大きく見開かれた。
「え……? はい、私はレオですが……あなた様は、どなたで?」
気づけば、僕はその少年を強く抱きしめていた。
「レオ……! 生きていたのか……!」
「……っ、まさか、兄上……?」
震える声。僕の胸の中で、小さな体がかすかに震える。
「そうだ。俺だ、レオ。……ジュリアンだ。」
その言葉を聞いた途端、彼の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「兄上……! 本当に兄上なのですか……!」
十五年という歳月を越え、
二人の兄弟はようやく再びめぐり逢った。
互いの温もりを確かめ合うように、
長い沈黙の中で、ただ強く抱きしめ合った。




