となりの星空
「見てよこんなに綺麗な星空久しぶりじゃない?ああ、そうか今の君はもうこの空を見ることができないんだね…でも安心して僕がしっかりと見せてあげるから、だから君の全てをいただくよ」
「ねぇ!お母さん何でなの!?どうして私は外にも出れないの?」
「落ち着いてラヴェンデル、あなたはきっと良くなるわ」
「そう言ってもう何年経つと思ってるの!もう十年よ!…こんな事になるならもう産まれなければ良かった…」
私の身体は十年前に謎の病気に感染し太陽の日に当たるだけで皮膚がただれるようになり、次第にその症状が悪化し地下室へと移されていた。
「ラヴェンデル…辛い思いさせてごめんなさい…」
「何がごめんなさいよ!私をこんな牢獄に閉じ込めておいて!みんな影で笑ってるんでしょ?私のことで笑ってるんでしょ!」
「そんな事ない!」
お母さんは声を荒げてそう叫ぶ。
「……お母さん1人にして…」
「わかったわ………」
お母さんは、この牢獄から出ていった。
「可哀想に思うなら殺してよ…」
私は布団をめくり自分のほぼ骨と皮しか残ってない足を見る。
「いつ見ても醜い足だ…」
この足がどうも私には悪魔に見える。
この病気の象徴のようにも思えた。
もう随分と歩いてない、この足じゃもう歩けないだろう。
「……きっと治るか…私に言ってるの?ただの願いを私に押し付けてるだけじゃない」
いつ見ても殺風景な灰色の部屋になにかおかしな者の気配がした。
「?何もない…」
私はなんだか怖くなり、布団にうずくまりそのまま目を閉じた。
「ラヴェンデル…ラヴェンデル起きて?」
私を呼ぶ声がする…お母さん?
私は目を開けるとそこは殺風景な牢獄ではなく幻想的な森が広がっていた。
「??どこ…」
「こっちこっち、ここだよ君の下」
私は下を覗き込むそうすると、灰色の毛並みの整った猫がいた。
「え?あなたは?」
「僕は君の守護霊みたいなものだよ、そしてここは精霊界僕みたいな精霊がいっぱいいるんだよ」
精霊…どう見てもただの猫じゃ?
「君は猫を見たことがあるのかい?」
「え?」
「それは本当に猫だったのかい?」
そう言われると当たり前の事でも不安になってしまう。
「そう緊張しないでいいよ、ここは自分が何なのかそれだけをしっかりとわかっていれば安全だから」
「じゃあ自分を人間以外だと思ったときどうなるの?」
「ここは夢みたいなものだ、君の好きな姿に変われるよ」
よし…じゃあ、私は歩ける…私は歩ける…私は歩ける私は歩ける私は歩ける!
私はそう念じて、黒猫をどかす。
そうすると、枯れた木のようにしぼんだ足は至って健康な綺麗な足に戻っていた。
「ほらね?この世界なら君は、自由に動けるし何でもできる」
「この世界は夢みたいなものって言ったわね、じゃあいずれ現実に戻るの?」
「君が望む限り、ずっとここにいられるよただしその分戻ったときのショックは大きいと思うよまたいつものような生活に戻ってしまう」
あの灰色の部屋の景色がフラッシュバックする。
もう、あんな牢獄に戻るのなんて嫌だ…
「あなたの名前は?」
「君の精霊…としか言いようがないね」
「それじゃあ呼びづらいね…じゃあローグでどう?」
「どういう意味なんだい?」
「んーなんかかっこいいから!」
目の前の黒猫は、あきれたように伸びをし始めた。
「まあ、いいよローグで」
「じゃ、ローグ何しようか?」
「君は何でもできるんだ何かしたいことはないのかい?」
私のしたいこと…
「じゃあ、えい!」
私は、指を振って指から火の玉を出す。
「おお!本当に使えた!」
「魔法だね、君たちの歳の子はみんな使いたがる」
じゃあ今度は…
私は、普通だったらできないこと、普通じゃなきゃできないこと、私が想像できることは全てやった、残り一つを除いて…
「よくそんなに思いつくね?」
「十年分もあと残り1つよ」
私は、指を振りあたりを夜空にする。
その空をみていると脳裏に過去の記憶が一気に流れ込んで来る。
まだ歩けたあの時の記憶が…
え?私は、今も歩けているはず…記憶の中の私の足は、もう歩けない状態の足だった。
嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!
私は何も感じなくなり辺りが灰色に変わる。
動けない、何も見えない、喋れない…私ってなんなの?
「見てよこんなに綺麗な星空久しぶりじゃない?ああ、そうか今の君はもうこの空を見ることができないんだね…でも安心して僕がしっかりと見せてあげるから、だから君の全てをいただくよ」
………
「僕は君の守護霊、君を守るどんな事があっても死なせなんてしない」
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リーラーより