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第17話 暴発の危険性

 机の上に砂糖とミルクをたっぷり入れた紅茶を置くと、フリーダは少し鼻をすすりながらティーカップに口をつけた。


「美味しいわ。さすがなんでもこなす秘書官ね」


 紅茶の淹れ方は、いつか王子に飲んでもらえたらと子どものときから練習を重ねてきた。王子の口に合うということは、よほどじゃない限りほとんどの人間の口に合うということだ。


「やっぱり、これもマリク王子のため?」


「ぶっ……」


 思わず咳き込んでしまった。ナプキンで口の周りを拭う。


「やっぱりね。もっと素直になればいいのに」


「何か誤解があるようだが……ちなみに。いいか、ちなみにだぞ。ちなみに聞くが、なぜフリーダは私が王子を、その好き……いや、好意を持って……その、お、お慕いしているのでは、と思っているんだ?」


 フリーダは紅茶に息を吹きかけると、首を傾げた。


「そんなの見てたらわかるわよ。たぶん、王子に直接仕えている人ならみんな知ってるんじゃない? アーダンのおっさんもそうだし、他の近衛兵も、執事もメイドも、バレバレだと思うけど。なんなら、私は街での戦いのときにもう気づいてたけどね」


「……なるほど、参考になった」


 じょ、冗談じゃない! 全員気づいているだと、そんなわけがあるか!


「とりあえず、王子の紋章のことについて話してもらえるか? 訓練のおかげで無事に魔法が使えるようになったのではと思ったが、何か問題でもあるのか?」


「まっ、そうね。私が本当に話したいのはそこじゃないけど、マリク王子に関わること。紋章の話からいきましょう」


 フリーダは紅茶を飲むと、やけに大人っぽく両手を組みその上に顎を乗せた。


「もし、王子が紋章の力を最後まで使おうとすればまず間違いなく魔法が暴発する」


 なんだと? 魔法が……暴発する!?


「どういうことだ? 魔法を披露したときしっかりと剣が現出してたはずだ」


「うん、魔法はできていた。けど、王子は魔法を中断したの、ティナならわかったでしょ?」


 中庭の場面を思い出す。あのとき、王子の剣の紋章が光り、魔法が発動した。複数の剣が何重にも回り始め、最後は……。


「そうか。王子は途中で止めたんだ。だが、あのとき人が多くいたために魔法を中断したと思っていたが」


「それもある。だけど、王子は訓練の中で一度も魔法を最後まで放ったことがなかった。言葉に出すことはなかったけど、たぶん、ためらいがあるんだと思うの。たまにいるのよ。周りを気遣うあまりに思い切り魔法を放てない人が」


「……王子は優しいお方だ。太陽の紋章は、創世の話にあるように強力な攻撃魔法なんだろう? 王子が躊躇するのもわかる気がする。でも、だからって暴発するとはどういうことだ?」


 フリーダは、髪を揺らしてティーカップに手を伸ばした。私も同様にカップに口をつける。


「太陽の紋章、始まりの剣の紋章は強力なんて言葉で済む魔法じゃない。9つの神の武器のうち、月の紋章と並んで最も重要な紋章と呼ばれている紋章だもの。上手くコントロールできなければ、その威力は世界地図を変えてしまうほどと言われているわ。もちろん、王子の扱える階層は最も低い階層だから、そこまでの力はないものの、今のマリク王子がコントロールできないままに魔法を放ってしまえば、何が起こるかわからない。この意味わかるわよね」


 〈アヌ〉国への訪問の旅はもうすぐに始まる。咎人の危険性もそうだが、旅先では何が起こるかわからない。


「元々王子の身の安全が第一ではあるが、万々が一にも王子を危険にさらすことはできないということか」


「そういうこと。それで、ここからが私の本題。ティナ。あんたの本当の力のことを教えてくれない?」


 カップを置くと、フリーダが私の目を真剣な眼差しで見つめた。

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