表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

神社

作者: 座頭

 森の、かなり深い所に、その神社はある。

その神社は昔から色々な噂があった。

境内に入ったら病気が治っただの、賽銭を盗もうとしたら鬼に追い回されただの、とにかくその手の噂には事欠かない、実に不思議な神社だった。


 ムシムシとする深い森を、かなりの時間を掛けて進むと、その神社が見えてくる。

朝起きたらここまで来るのが、私の日課だ。

境内は誰も居ず、ただ蝉の声が森の中に木霊しているだけだ。

お賽銭箱に五円玉を入れ、鈴を鳴らす。

カランカラン、と心地の良い音が森に響き、吸い込まれる。

暫くその余韻に浸った後、ゆっくりと、前だけを見て歩き出す。

鈴が勝手に鳴ろうとも、木の陰から、何かがこちらを見ていようとも、前だけを見る。

“ヒュー” という音と共に、突然辺りが暗くなる。

「あっ」

森の向こうに、見事な花火が上がった。

思わず振り向くと、狐が一匹、こちらをじいっと見ていた。

「あ〜あ、今日も一本取られたな。」

私はお賽銭箱の前に戻ると、その前に油揚げを置く。

そして、今度は振り返らずに神社を後にする。

そこには夜空も、花火の余韻もなく、夏空に入道雲、蝉時雨がやかましい森の中。

あの神社は実に奇っ怪。そういう噂には事欠かない神社である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ