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早すぎる再会

次の日のことである。凛音は寝不足だった。昨日はホテルを探して春を運ぶのに時間がかかり早く寝れなかったし、朝は春に叩き起こされた。見知らぬ部屋と、春を運ぶのに力尽きて床で倒れたように寝ている凛音たちに驚いたらしいが、もう少し優しく起こしてくれ。冬希も似たような状態なので、一番怪我をしたはずの春が一番元気だという謎の状況になっている。


「普段から鍛えてないからすぐへばるんだよ」


「うるさい。お前が筋肉ムキムキすぎて重かったんだよ!」


「はいはいそれは悪うございました」


やれやれと首を振る春を見て今更ながら寒気がやってきた。もしもあの時少年が助けてくれなかったら、春は間違いなく死んでいた。致死量の血を流してどんどん冷たくなっていく彼の身体の感触を今もはっきり思い出せるのだ。


「……?どうした凛音」


急に黙った凛音を不思議に思った春が尋ねてくる。いつもの、そっけないけど確かに優しさが感じられる低い声に泣きそうになって聞いた。


「…なんであの時俺を庇ったんだ?」


もしあの時春が死んでしまったとする。それが誰のせいだと聞かれたら、凛音は間違いなく自分のせいだと答えるだろう。あの時彼は刺されそうになっていた凛音を庇ったのだ。その身を挺してまで。春が優しいのはとっくの昔に知っている。施設にいた時から面倒を見てくれて、凛音が急に探偵をやりたい!とか言い出しても、最初は止められたが本気だと分かるとついてきてくれた。よく怒っているが、それも理不尽なものではなくちゃんと納得できるものなのだ。だからといってすぐに謝れる訳でもないが。とにかく、春は凛音にとってとても大事な兄貴分で仕事仲間で家族なのだ。庇われたくなかった。自分のせいで彼が死ぬなんて耐えられなかった。じっと春を見つめていると、彼はあきれたようにため息を吐いた。


「理由なんているか?お前は大事な弟分なんだから守るのは当然だろ。それにあの胡散臭かった依頼を受けようって言ったのは俺だしな」


わしゃわしゃと頭を撫でられる。幼い頃泣いている時によくこうして慰めてくれた。大して年も変わらないのになんであんなに大人びていたのだろうか。懐かしいのと嬉しいのとほっとしたので胸がいっぱいになって、思わず抱きついてしまう。彼の鼓動を聞いて生きていることを実感しながら凛音は決意する。もっと鍛えて強くなろうと。もう絶対に庇われないように、自分のせいで大切な仲間が危険にさらされないように。






「ちょっとトイレに行ってたらいつの間にか感動シーンに入って仲間はずれにされてた」


ごめんよ冬希。




✼✼✼✼✼✼✼



ホテルから帰っている途中のことである。そろそろ事務所が見えてきたというところで誰かに腕を引っ張られた。


「うわあ!」


全く気配を感じなかったので思わず叫んでしまう。引っ張ってきたのはあの美しい少女だった。早すぎる再会に驚いている間もなく淡々と話しかけられる。


「…私たちのせいかもしれないから一応教えておこうと思って」


「え?」


「事務所」


「え?」


「行かないほうがいいと思うよ」


彼女が真っ直ぐ指差したのは凛音たちの家兼事務所。今は誰もいないはずだが、何かが動いているのが窓から見えた気がした。冬希がすぐに防犯カメラをチェックするとそこには、いかにもな真っ黒いスーツとサングラスの男たちとあの時の紫の集団が映っていた。


「目、付けられちゃったみたいだね」


少女の声が冷たい風に乗って消えていった。

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