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ep.5 共存

翔がザラゴスの拠点に迎えられてから数日が経過した。


最初のうちは、その不安と恐怖で眠ることすらままならなかったが、少しずつ生活にも慣れ始めてきた。


相変わらずザラゴスの態度は冷徹だったが、翔を無闇に害することはなく、意外にも世話焼きな一面もあった。


拠点も、見た目の異様さを除けば、内部は意外にも整然としており、居心地が悪くはなかった。

石造りの広い部屋には、焚き火が灯り、魔族の使う奇妙な道具や装飾品が並べられていた。

床には高級感のある絨毯が敷かれており、物々しい雰囲気とは裏腹に、温かみのある空間だった。


翔はここで何をすべきか、日々悩んでいた。

ザラゴスが言う「ルール」とは何なのか、彼に従うことが本当に自分にとって最良なのか。


その答えは、まだ見えなかった。

ただ、今はとにかく生き延びること、そして彼が示す指示に従うことが、最も重要だと感じていた。


ある日、ザラゴスは言った。「お前にはこれから、俺のためにある仕事をしてもらう。」


その言葉に、翔は戸惑いを隠せなかった。

「仕事」という言葉を、良い意味で捉えることができるのか、それとも単なる使い捨ての存在として扱われるのか、予想がつかないからだ。


「何をすればいいんですか?」翔は震える声で尋ねた。


ザラゴスは冷静に、しかし少しだけ眉をひそめて答える。

「この拠点の外にある廃墟の街に行き、物資を調達してきてもらう。」


その仕事がただの物資調達であればいいが、翔は内心で警戒心を抱いた。

なぜなら外は危ないという話を他の魔族が話しているのを聞いていたからだ。


「でも、拠点の外は…」


翔が言いかけると、ザラゴスは冷たく言い放った。

「お前は俺の命令に従うだけだ。無駄な言い訳は不要だ。」


その言葉は強い命令口調で、翔の心に重くのしかかってきた。


ザラゴスの言葉に逆らうことはできない。

翔はその場で頷き、言われた通りの準備を始めた。


ザラゴスはさらに続けた。


「もし、お前が無事に帰ってこられたなら、報酬を与えてやろう。」


翔は渋々、ザラゴスの命令を受け入れ、出発の準備を始めた。

道中に何が待ち受けているのかを想像しながらも、心の中で決意を固めた。


今は無事に帰ってきて、報酬を得ることだけを考え仕事を遂行するしかない。

そうでもなければ、まともな精神でいられないからだ。


廃墟の街に向かう道は、思った以上に険しかった。

途中、森の中に何度も見たことのない不気味な生物が現れ、翔をじっと見つめていたが、彼は必死にその目を避け、ただ前に進むことに集中した。


周囲は風の音と、木々がざわめく音だけが響いていた。

やがて、翔は廃墟の街にたどり着いた。


その場所は、かつて繁華街であったと思われるが、今では荒れ果て、家々は崩れ落ち、道路は草に覆われている。どこか異様な静けさが漂い、翔の背筋に冷たい汗が流れた。


翔は周囲を警戒しながら、ザラゴスに言われた場所に向かって歩き出した。


途中、何度も不安に駆られながらも、物資を探し、見つけることに成功した。

しかし、時折耳にするかすかな音に、翔の心は何度も跳ね上がった。


ひょっとすると、誰かがこの街に潜んでいるのかもしれない。

そんな不安が胸をよぎるたび、彼の足は自然と速くなった。


翔が必要な物資を集め、戻り始めたそのとき、突然、街の奥から不気味な音が響いた。


それは、まるで地面を這うような低い音で、翔の足が止まった。

その音がどんどん近づいてくるように感じ、彼は恐怖に震えながら、背後を振り返った。


すると、そこには見慣れぬ生物が現れた。

それは、半分人間、半分獣のような姿をしており、鋭い爪と牙を持っていた。


翔は驚きと恐怖で息を呑んだ。

生物はゆっくりと近づいてきたが、翔はただ立ち尽くしているわけにはいかなかった。


翔はすぐに振り返り、逃げ道を探し始めた。しかし、その生物は確実に翔を狙っていた。

無駄に動いてしまうと、逃げられなくなってしまう。

翔は冷静さを取り戻し、静かに足を動かして一歩後退した。


その時、背後から声がした。「下がれ、翔。」


振り向くと、ザラゴスが立っていた。


その冷徹な顔に、翔は一瞬安堵の気持ちが湧いたが、すぐに冷や汗が流れた。

ザラゴスの周囲には、魔族の気配が漂い、強力な魔法が放たれた。


「その魔獣は俺たちが倒す。」


ザラゴスが冷静に言うと、魔族の一団がその生物に向かって進み、次々と魔法を放った。魔獣はそれに抗おうとしたが、あっという間に力尽き灰になった。


「お前が無事に戻ることが最優先だ。だが、これでお前も少しは俺を信用する気になっただろ。」

ザラゴスは翔を見て、冷ややかに言った。


翔は息を呑みながらも、彼が自分を助けてくれたことに感謝し、この世界で生きていくための希望を少しだけ感じ取った。

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