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ep.40 終焉の迷宮

荒涼とした大地が果てしなく広がる中、一行は『終焉の迷宮』と呼ばれる場所に向かって進んでいた。

周囲には草木一本生えておらず、まるで生命そのものが忌避するかのような不気味な雰囲気が漂っている。


迷宮の入口は黒曜石のような光沢を持つ巨大な門で、近づくにつれて一行の耳には低い唸り声のような不気味な音が聞こえ始めた。


「ここが終焉の迷宮…か。」ヴァルノスが門を見上げて呟いた。


「嫌な気配しかしないわね。」エリスが眉をひそめた。


「やるしかないな。」グラーデが全員を見渡す。


リヴィアンが静かに頷き、杖を構える。

「ここから先は、相応の覚悟が必要になる。」


門をくぐると、中は一転して無音の世界だった。

壁や床は黒い石でできており、天井はまるで空間そのものが歪んでいるかのように見える。


迷宮の奥へ進むにつれ、一行を包む空気はさらに重く、鋭く淀んでいく。

黒い石壁には不気味な光を放つ古代文字が浮かび上がり、足元の床は不規則に振動していた。


迷宮そのものが意思を持つかのように、彼らを飲み込もうとする気配を漂わせている。


「ここが最奥部の入り口だな。」

ヴァルノスが剣を肩に担ぎながら前方の巨大な扉を見上げた。


扉には竜をかたどった彫刻が施され、その目には不吉な赤い光が宿っている。


「やけに静かだな……嫌な感じだ。」

グラーデが周囲を見渡しながら口を開く。


その鋭い目は、いつも以上に警戒心を滲ませていた。


「ここまで来て逃げるわけにはいかないわ。」

エリスが前へ一歩進み、杖を構える。


「慎重に行くぞ。」

リヴィアンが扉に手を触れると、小さな火花が弾けた。


「魔力の濃度が異常だ……」


扉がゆっくりと開き、その先には広大な円形の空間が広がっていた。

部屋の中心には、黒曜石でできた巨大な柱が立ち、その根元に一つの影が座り込んでいる。


影は重々しい気配を放ちながら、彼らの接近に応じて立ち上がった。


その正体は、全身を漆黒の鎧で覆った異形の存在だった。


鋭い角が頭から突き出し、手には長大な剣を握っている。

鎧の隙間からは赤黒い魔力が漏れ、周囲の空気を焼き焦がしているようだった。


「待ち構えていたわけか。」

グラーデが低く呟くと、肩の巨大な斧を力強く構えた。


「虚無を護る者、それが私の役割だ。」

異形の存在が低い声で語る。


「私はこの迷宮の最終守護者、アルハザード。この地を越えることは、誰にも許されない。」


「虚無を護る……ふざけた使命だな。俺たちがその使命ごと断ち切る!」

ヴァルノスが剣を引き抜き、地面に構える。


アルハザードが剣を振り上げると、凄まじい衝撃波が放たれた。

一行はとっさに跳び退きながら戦闘態勢を整える。


「こいつ、一撃が重いぞ!」

ヴァルノスが剣で受け流しながら叫んだ。


「重いどころじゃない、地形が崩れる!」

エリスが地面を睨みつけた。衝撃波の余波で床がひび割れ、大きな裂け目が広がっていく。


「俺が突っ込む!援護を頼む!」

グラーデが叫び、斧を振りかざしてアルハザードの懐に飛び込んだ。


その斧は敵の鎧に深々と食い込むかと思われたが、異形の鎧は驚異的な強度で彼の攻撃を弾き返した。


「くそっ、硬すぎる……!」

グラーデが歯ぎしりする。


「私の魔法で足止めする!」

エリスが炎と氷の複合魔法を放つ。


しかし、アルハザードはその場で立ち止まることなく剣を振り払い、魔法を霧散させた。


「厄介な敵だな。」

リヴィアンが結界を張りながら呟く。


「だが隙はある。次は私が仕掛ける!」

リヴィアンが全身から魔力を解放し、一瞬で複数の魔法陣を展開した。


複数の雷がアルハザードを直撃し、その巨体を揺るがせる。


「今だ、仕留めろ!」

リヴィアンが叫ぶと、グラーデが再び突進した。


斬撃は、アルハザードの剣を弾き、胸元に大きな傷を残した。


「……これで終わりだと思ったか?」

アルハザードの声が低く響いた。


突如、部屋全体が赤黒い光に包まれ、彼の身体から膨大な魔力が噴出する。


鎧が砕け散り、その下から現れたのは漆黒の闇そのものと言える異形の姿だった。


背中からは六本の魔力の翼が広がり、手に握る剣は黒炎を纏っている。


その威圧感は、先ほどとは比べ物にならない。


「奴の力がさらに増した……!」

エリスが息を呑む。


「関係ねえ!俺たちが奴を止めるだけだ!」

グラーデが握る斧が一瞬震えるが、彼はすぐに踏み出した。


アルハザードの力は圧倒的だった。

空間そのものを裂く斬撃、次々と放たれる魔力の波動が一行を追い詰める。


それでも、彼らは全力で立ち向かった。


ヴァルノスは正面から剣を振るい、エリスとリヴィアンが遠距離から魔法で援護する。


そして、グラーデはその巨体を活かし、アルハザードの動きを封じるために果敢に接近戦を挑んだ。


「これが最後だ、行くぞ!」

グラーデが吠え、全身の力を込めた一撃を繰り出した。


その斧がアルハザードの魔力の障壁を破り、その身体を大きく切り裂いた。


「ヴァルノス、今だ!」グラーデが叫ぶ。


「任せろ!」

ヴァルノスが渾身の力を込めた剣でアルハザードを貫いた。


「見事だ…我の力を持っても貴様らを止められないとわ…」


異形の身体は膝をつき、魔力の霧となり跡形もなく消えていった。


「……終わったか。」

ヴァルノスは剣を地面に突き刺し、荒い息をつく。


苦戦しながらもなんとかアルハザードを倒した一行は

迷宮を脱出し、ザラゴスの元へ戻った。


「よくやった。」

ザラゴスが彼らを迎え、微笑んだ。


「アルハザードを倒したことで、虚無の力は大きく弱まった。」


「だが、虚無の意志はまだ消えていない。」

リヴィアンが険しい表情で言う。


「次は人間界だ……だが、その前に問題がある。」

ザラゴスが重々しく告げた。


「新たな危機が近づいている。」


次なる試練が、一行の前に迫っていたのだった。

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