ep.39 撤退
ようやく外へと飛び出した瞬間、大聖堂全体が崩壊し、巨大な土煙が立ち込めた。
一行は息を切らしながら地面に腰を下ろし、それぞれの無事を確認する。
「生きてる…か?」ヴァルノスが荒い息をつきながら呟いた。
「何とか、ね。」エリスが肩を叩きながら答える。
「でも、この光は一体何だったの?」
周囲を見渡すと、大聖堂の中心から噴き出した光が空へと伸び、天上の雲を切り裂くようにしてさらに広がり始めていた。
その光の中には、まるで何かが形を成し始めているように見える。
「これは…まさか!」ザラゴスが目を見開く。
「何か知ってるのか?」ヴァルノスが食い気味に尋ねる。
「虚無の宝珠が破壊されたことで、力が拡散したのだろう。しかし、その力が完全に消滅することはなかった。むしろ、この光は新たな存在を呼び寄せようとしている可能性が高い。」
「新たな存在って…それってまた敵が現れるってことなの?」
エリスが不安げに叫ぶ。
「可能性は高い。」ザラゴスが重々しく頷いた。
「そして、それがただの魔物ではないこともな。」
一行が混乱している間にも、光はさらに強まり、その中から巨大な影が浮かび上がってきた。
影の輪郭は不明瞭であったが、その威圧感は距離を隔てていてもはっきりと感じられる。
「今は戦う時ではない!」ザラゴスが声を張り上げた。
「撤退するぞ!この状況を解析し、次の手を考えなければならない。」
「けど、こんな状況を放置していいの?」エリスが疑問を口にする。
「放置するわけではない。ただ、今の我らではこの事態に対応しきれない。」
ザラゴスがきっぱりと答える。
「一度拠点へ戻り、策を練る。」
一行は名残惜しそうに大聖堂の跡地を見つめながら、その場を離れた。
魔界の拠点に戻ると、ザラゴスが既に待ち構えていた。
「ザ…ザゴラスが二人?」一行は驚きを隠せなかった。
ザゴラスの表情は険しく、一行の帰還を待ち望んでいたことが伺えた。
「まずはご苦労だった。」ザラゴスが一行を迎え入れる。
ヴァルノス、エリス、グラーデは状況を呑み込めていないようだったがリヴィアンだけは笑みを浮かべていた。
「ザラゴス、まずは三人に分身体の説明をすべきかと…」
リヴィアンは諭すように口を開いた。
「ああ、そうだったな。お前らに同行したのは我の分身体だ。能力値は1/10程度に落ちるが、視覚、聴覚、嗅覚、痛覚など、あらゆる感覚は全て共有される。」
三人は説明を聞き、ようやく理解できたが。
「では本題に入る。」ザラゴスが厳かに言った。
「虚無の支配者が完全に覚醒する前に、その核を破壊しなければならない。」
ザラゴスからの指令を受けた一行は、疲労を抱えつつも再び立ち上がった。
「休む暇もないな。」ヴァルノスが苦笑いを浮かべる。
「世界を守るって、そういうものよ。」エリスが肩をすくめる。
「で、次の場所はどこ?」
「虚無の支配者の核が安置されているのは、『終焉の迷宮』と呼ばれる場所だ。」
ザラゴスが地図を広げながら説明した。
「そこには、虚無に関連する最強の防衛機構が配置されていると言われている。」
「また難関だな。」ヴァルノスが息を吐いた。
「だが、これが最後の戦いになる可能性が高い。」ザラゴスが力強く言った。
「全力で挑むぞ。」
「やるしかないってことね。」エリスが拳を握り締めた。
「行こう。」ヴァルノスが剣を背負い直す。
「今度こそ、全てを終わらせるために。」
次なる目的地『終焉の迷宮』への旅立ちを胸に、一行は再び闇の中へと足を踏み入れるのだった。




