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ep.35 赤い瞳の男

大聖堂の闇の奥から響く声に、一行の心は一瞬にして緊張に包まれた。


「誰だ!」

ヴァルノスが声を張り上げる。


静寂を破るように、重い足音がゆっくりと近づいてくる。

その姿は闇に覆われており、はっきりとは見えない。


しかし、存在そのものが空間をねじ曲げるほどの威圧感を放っていた。


「よくぞここまで来た、弱き者たちよ。」

低く、重厚な声が大聖堂内に響き渡る。


「だが貴様らの努力は無駄だ。儀式を阻止したところで、この地に刻まれた闇の力は消えない。」


その声の主が姿を現すと、一行の目は驚愕に見開かれた。

男の外見は普通の人間に近いが、黒い炎が彼の体を包み込んでおり、その目は赤く輝いている。


彼は闇そのものを纏ったような存在だった。

「名乗る必要もあるまいが、我が名はナーダス。この儀式は、私が計画したほんの序章に過ぎぬ。」


リヴィアンが鋭い目つきでナーダスを睨む。

「どういうことだ?儀式が終わったのに、まだ何か企んでいるのか?」


ナーダスが冷たい笑みを浮かべる。

「終わった?いや、貴様らが儀式を妨害したことで、より強力な扉が開かれる準備が整ったのだ。」


その言葉に応じるように、大聖堂の祭壇から黒い光が漏れ始めた。


リヴィアンは魔法の杖を掲げ、分析を始めた。

「…これはまずい!封印が不完全なまま壊れた影響で、周囲の魔力が暴走してる!」


「どういうことだ?」

グラーデが焦った声で尋ねる。


「つまり、結界を壊して儀式を阻止したことで、封印の力が逆流しているということか。」

リヴィアンは舌打ちをする。


エリスが矢を構えたまま、ナーダスを睨みつける。

「あんた、それを狙ってたのね…!」


ナーダスは悠然と微笑みながら頷いた。

「その通りだ。貴様らのような愚か者が余計なことをしてくれるのは計算のうちだ。」


ヴァルノスが剣を抜き、前に進み出た。

「ふざけるな!お前の思い通りにはさせない!」


ヴァルノスの叫びと共に、ナーダスが動いた。

彼が手をかざすと、黒い炎が一行を襲いかかる。


グラーデが斧を振り回し、その炎を叩き落とそうとするが、炎はまるで生き物のように動き、彼の攻撃をすり抜ける。


「まずい…!この力、普通じゃない!」

グラーデが苦戦しながら叫んだ。


「炎そのものがナーダスの意思で動いてる!」

リヴィアンが防御の魔法陣を展開しながら答える。


「なら、一気に奴を叩くしかない!」

ヴァルノスが剣を掲げ、ナーダスに突進する。


エリスがヴァルノスを援護するため、精密な狙いで矢を放つ。

矢はナーダスの周囲を取り囲む炎をかすめ、少しだけ隙を作り出す。


「今だ!」リヴィアンが呪文を完成させ、ナーダスに向けて雷の魔法を放つ。


その雷が直撃したかと思われたが、ナーダスは微動だにせず、笑みを浮かべたままだ。


「無駄だ。」

彼が冷たく言い放つと、雷の魔力が黒い炎に吸収され、さらに強大な力となって彼に戻った。


「なに…!?」リヴィアンが驚愕する。


「貴様らの攻撃は、すべて我が力となる。」

ナーダスが手を広げ、全身から黒いオーラを放つ。


「絶望せよ。そしてそのまま滅べ!」


「こんなのどうしようもない…!」

エリスが歯を食いしばる。


だが、その時、ヴァルノスが冷静にナーダスの動きを観察していた。

「待て…奴の炎が吸収してるのは、魔法の力だ。それなら…!」


「何か策が?」リヴィアンが尋ねる。


「物理的な攻撃には、あの炎があまり反応していない気がする。」


ヴァルノスが剣を構え直す。

「つまり、俺たちの力で奴を叩き潰せる!」


グラーデがその言葉に反応して笑みを浮かべた。

「いいな、それ!力仕事なら任せろ!」


「援護は私たちに任せて!」

エリスが素早く動き出す。


一行は新たな戦略を立て、再びナーダスに挑んだ。

物理攻撃を主体とした連携が次第に効果を発揮し、ナーダスの黒炎が徐々に弱まり始めた。


「これは…!」ナーダスが初めて驚きの声を上げた。


「今だ!」

ヴァルノスが剣を振り下ろし、ナーダスの胸を貫いた。


黒炎が一瞬にして消え去り、ナーダスは膝をついた。


だが、彼は微笑みを浮かべたままだった。

「貴様らがこれほどの力を持つとはな…だが、この地の闇は止まらない…」


ナーダスが最後の力を振り絞り、床に刻まれた魔法陣を活性化させる。

周囲に再び闇の波動が広がる中、一行は緊張の面持ちで次なる行動を模索した。


「ここからが本当の試練だ…」

ヴァルノスが呟き、剣を握り直した。彼の目には、新たな決意が宿っていた。


ナーダスの消滅と同時に、大聖堂全体が激しく揺れ始めた。

天井から砂や石片が降り注ぎ、裂け目からは黒い瘴気が立ち上る。


「このままでは崩れるわ!」

リヴィアンが叫ぶ。


「とにかく外へ出るぞ!」

ヴァルノスが指示を出し、エリスとグラーデが周囲を警戒しながら出口へ急いだ。


外に出た瞬間、大聖堂の中心部が轟音を立てて崩壊した。

その瓦礫の中から巨大な柱のような光が天に向かって放たれる。


それは黒と赤の混ざり合った光で、空を裂くかのように伸びていった。


「これは…封印が完全に壊れた証拠だ。」

リヴィアンが震える声で言う。


「儀式を阻止したはずなのに、なぜこんなことに…」

エリスが混乱した様子で呟く。


「ナーダスが言っていた '強力な扉' ってのはこれか。」

グラーデが拳を握りしめた。


「どこまで性根が腐ってやがる…」

ヴァルノスが剣を地面に突き刺し、深呼吸をして落ち着こうとする。


「ここで動揺しても仕方ない。とにかくザラゴスに報告し、次の手を考えよう。」


一行は急ぎ魔界の拠点に戻り、ザラゴスの前で状況を報告した。

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