ep.34 黒炎
中に足を踏み入れると、空気は凍てつくような冷たさを帯びていた。
無数の魔法陣が床や壁に刻まれ、その中心には黒い炎が渦巻く祭壇が置かれていた。
祭壇の前には儀式を進行している魔術師たちが並び、その背後には異様な気配を放つ人物が立っていた。
「やっと来たか。」
黒いローブをまとった男が、一行に向けて嘲笑を浮かべた。
「お前たちの行動はすべて予想済みだ。」
リヴィアンが目を細めた。
「あれが…儀式の中心人物だな。」
「貴様らの抵抗が無意味であることを教えてやろう。」
男は手を掲げ、祭壇の黒い炎をさらに高めた。
「封印の力を我がものとし、この世界を支配する準備は整った!」
ヴァルノスが剣を構え、叫ぶ。
「ふざけるな!お前の儀式はここで終わりだ!」
男が一行を嘲笑う中、魔術師たちが動き出した。
それぞれが魔法陣を展開し、次々と魔力の波動を放ってくる。
「この連中、結構やるぞ!」
グラーデが斧を振り回しながら応戦する。
エリスが素早く後方から援護射撃を行い、矢を正確に魔術師たちに命中させていく。
「気を抜かないで!奴らの魔法は連携が厄介よ!」
リヴィアンは防御の魔法を展開しつつ、相手の魔法を妨害する。
「一人ずつ確実に仕留めるぞ!」
ヴァルノスが敵の中心に突撃し、剣を振るいながら叫ぶ。
「俺が先陣を切る!みんな、続け!」
魔術師たちは一行の連携に徐々に追い詰められていき、最後の一人が倒れた時、祭壇の黒い炎が激しく揺れ動いた。
「ほう、ここまで来るとはな。」
黒いローブの男が満足そうに笑みを浮かべる。
「だが、お前たちの勝利はここまでだ。」
男は両手を広げ、黒い炎をその体に吸収し始めた。
その瞬間、周囲の空間が激しく揺れ動き、彼の姿が徐々に変化していく。
身体が大きく膨れ上がり、漆黒の鎧を纏った恐ろしい姿へと変貌を遂げた。
「これが封印の力だ…!我が力の真髄を見せてやろう!」
エリスが弓を引き絞る。
「気をつけて!こいつはただの人間じゃない!」
グラーデが斧を構え直し、低く唸った。
「一筋縄じゃいかないってことだな。」
ヴァルノスが剣を握り直し、静かに呟いた。
「全力で行くぞ。ここで奴を倒さなければ、世界が終わる。」
黒炎の司祭は一行に向かって猛攻を仕掛けてきた。
その攻撃は広範囲かつ強力で、一撃でも受ければ致命傷となりかねない。
ヴァルノスたちは攻撃を避けつつ、隙を見つけて反撃を試みる。
リヴィアンが結界を張りながら叫ぶ。
「奴の力は圧倒的だ!でも、どこかに弱点があるはず!」
「なら、それを探すのは俺たちの役目だ!」
グラーデが突進し、斧を司祭の胸に叩き込んだが、その攻撃は弾かれてしまった。
エリスが矢を放ち、相手の動きを封じる。
「リヴィアン、何か見えた?」
リヴィアンが冷静に相手を観察し、叫ぶ。
「胸の中心に黒炎の核がある!そこを狙えば、奴を弱体化できる!」
ヴァルノスが剣を掲げ、全身の力を集中させた。
「よし!全員で一気に叩く!」
一行は息を合わせ、最後の力を振り絞って司祭に挑んだ。
核を狙った攻撃が成功し、司祭の体が一瞬止まる。
その隙をついて、ヴァルノスが渾身の斬撃を放ち、司祭の体を切り裂いた。
司祭が崩れ落ちると同時に、祭壇の黒い炎も消滅した。
周囲の闇の力が弱まり、大聖堂の中に静寂が訪れた。
「やったか…?」
グラーデが息を切らしながら呟いた。
リヴィアンが慎重に辺りを見回し、頷いた。
「儀式は…これで終わった。」
エリスが微笑みながら言った。
「終わったというより、始まりを止めたって感じだけどね。」
ヴァルノスが剣を収め、静かに言った。
「これで…世界は救われたのか?」
しかし、その言葉に答えるように、遠くから不気味な笑い声が響いた。
その声は、先ほど倒した司祭のものではなかった。
「終わりだと?愚か者どもめ…本当の闇は、これから始まるのだ…!」
一行は驚きと緊張を胸に、大聖堂を覆う闇の奥を見据えた。
その先には、さらなる試練が待ち受けていることを悟るのだった――。




