ep.31 聖光の祭壇
再び、ザラゴスのもとに戻ったヴァルノスたちは、ルヴァークとの激戦の顛末を報告した。
三人の疲労は隠しきれなかったが、その中には確かな達成感があった。
ザラゴスは彼らを冷静な眼差しで迎えた。
「よくぞ戻った。儀式の中心地への道を切り開いたお前たちの働き、見事と言うほかない。しかし、まだ油断するな。儀式は、単なる戦術の一部に過ぎない。」
ヴァルノスは眉をひそめた。
「単なる戦術…?」
ザラゴスはゆっくりと口を開いた。
「確かに儀式は重要だ。だが、その本質は我々がこれまで知っていたものとは異なる。儀式は、ただの『鍵』に過ぎないのだ。」
「鍵…?」エリスが疑問の声を上げる。
ザラゴスは一呼吸置いてから続けた。
「この儀式が完成すると、『大いなる扉』が開かれる。その扉の向こうには、我々魔族でさえ触れるべきではない禁忌の力が封印されている。だが、人間どもはその力を利用しようとしているのだ。」
グラーデは大斧を握りしめ、険しい表情を浮かべた。
「そんなもんを解放したら、何が起きるか分かったもんじゃねえ。で、その扉を開けるには何が必要なんだ?」
ザラゴスは厳しい声で答えた。
「その扉を開くには『七つの儀式』が必要だ。今、お前たちが阻止しようとしている儀式が七つ目のだ。」
「最後の儀式…」ヴァルノスは小声で呟いた。
「つまり、他の六つの儀式はすでに完了しているということか?」
ザラゴスは無言で頷いた。
「そうだ。そして、その六つの儀式は各地の魔族を利用して行われたものだ。人間たちは魔族の内部にまで侵入し、私の知る限り、何人かの上位魔族が共謀している可能性もある。」
「魔族の内部に…裏切り者がいるのか?」
エリスの声には驚きと怒りが混じっていた。
「その通りだ。儀式の情報が人間に漏れたのも、我々の動きが奴らに読まれているのも、全て内通者の仕業だ。」
ザラゴスは冷ややかな口調で答えた。
「そんな奴、叩き潰してやる!」
グラーデは拳を固め怒りを露わにした。
「焦るな。」
ザラゴスが制するように言った。
「内通者を特定することも重要だが、今は儀式そのものを阻止することが最優先だ。扉が開かれれば、魔族も人間も共に滅びる危険がある。」
ザラゴスの指示を受けた三人は、儀式の場所である「聖光の祭壇」へと向かうことになった。
その地は、光と闇が交わる特異な空間だと言われている。
「道中に人間側の妨害が入る可能性が高い。気を抜くな。」
ザラゴスはそう告げると、最後にこう付け加えた。
「そして、内通者の動きにも注意を払え。奴らは儀式を成功させるために、どんな手段でも取るだろう。」
ヴァルノスたちは覚悟を新たにし、聖光の祭壇へ向けて出発した。
彼らの頭には、それぞれの不安がよぎる。
果たして、自分たちだけで儀式を阻止することができるのか。
そして、内通者とは一体誰なのか…。
聖光の祭壇へ向かう途中、三人は道中で一人の若い魔族と遭遇した。
彼は痩せた体つきで、一見弱そうに見えたが、その目には鋭い知性と決意が宿っていた。
「君たちがザラゴスの部下か?」若い魔族はそう問いかけてきた。
ヴァルノスは剣に手をかけながら警戒した。
「そうだが、お前は何者だ?」
若い魔族は胸に手を当て、軽く頭を下げた。
「名はリヴィアン。ザラゴス様からの密命を受けて君たちに協力するよう命じられた。」
「協力…?」エリスが怪訝そうに眉をひそめた。
「そうだ。」リヴィアンは真剣な表情で続けた。
「儀式を阻止するためには、どうしても君たちだけでは足りない部分がある。特に祭壇の仕掛けについては、私の知識が役に立つはずだ。」
グラーデは彼をじっと見つめた後、苦笑した。
「ま、助けが増えるのはありがたいが、信用できるかどうかはこれからだな。」
こうして、リヴィアンという新たな仲間を加えたヴァルノスたちは、聖光の祭壇へと足を進める。
だが、その道のりにはさらなる困難と、予想外の真実が待ち受けていた…。




