ep.30 ルヴァーク
ヴァルノス、エリス、グラーデの三人は、目の前に立ちはだかる精鋭部隊に視線を据えた。
その中心に立つ男は、冷たい瞳で三人を見据えながら、不気味な笑みを浮かべている。
背中にまとわりつく黒いオーラは、明らかに通常の魔族とは異なる強大な力を物語っていた。
「俺の名はルヴァーク。この儀式を守るために選ばれた者だ。お前たちが守人を全て倒したと聞いて、この目で確かめに来たが…期待通りだな。」
ヴァルノスは剣を抜き、目の前の敵を冷静に見据えた。
「儀式を阻止するのが我々の使命だ。たとえお前たちが立ちはだかろうと、止めることはできない。」
エリスも弓を構えながら静かに呼吸を整える。
「あなたがどれほど強大な力を持っていようと、私たちは屈しない!」
グラーデは斧を肩に担ぎ、鋭い眼差しでルヴァークを睨んだ。
「どんな強敵でも、俺たちは乗り越えてきた。お前も例外じゃない。」
ルヴァークは興味深げに彼らを観察しつつ、ゆっくりと手を上げた。
その瞬間、彼の背後に控える部隊が一斉に動き出し、三人を包囲する形で襲い掛かってきた。
敵の精鋭たちは、守人たちを思わせるほどの強大な力を持っていた。
それぞれが特異な魔法や戦闘技術を駆使し、ヴァルノスたちを追い詰めていく。
ヴァルノスは剣で次々と敵を倒していくものの、その動きには徐々に疲労の色が見え始めた。
「…強いな。全員がまるで、守人クラスだ。」
ヴァルノスが息を切らしながら呟く。
エリスも弓矢で敵の魔族を一掃するが、数の多さに圧倒されつつあった。
「これではきりがない…!何とか突破口を見つけないと…」
グラーデは大斧を振り回し、次々と敵を叩き伏せるものの、敵の魔法攻撃を受けて膝をつく。
「クソッ…俺一人じゃ食い止めきれねえ…!」
その時、ヴァルノスは冷静に戦場を見渡し、一つの策を思いついた。
「エリス、グラーデ!俺が前衛を引き受ける!お前たちは敵の魔術師を集中して狙え!」
エリスとグラーデは即座に頷き、それぞれの役割を果たすために動き出した。
エリスの放つ矢が敵の魔術師たちを貫き、グラーデの大斧が盾持ちの戦士たちを叩き伏せる。
そして、ヴァルノスは剣技と身軽な動きで敵の注意を引きつけ、仲間たちを守り抜いた。
戦場が激しさを増す中、ルヴァークは不敵な笑みを浮かべたまま三人の動きを観察していた。
「なるほど…これが守護神を倒した力か。だが、所詮は手駒に過ぎない部下たちに手間取っているようでは、この先は厳しいだろうな。」
彼は静かに腕を広げ、その体から黒い霧のような魔力が溢れ出した。
「さて、遊びはここまでだ。真の力を見せてやる。」
その言葉と共に、ルヴァークの姿が変貌を遂げた。
全身を覆う鎧が禍々しい光を放ち、背中からは黒い翼のようなものが伸びている。
彼の目は血のように赤く輝き、そのオーラは圧倒的な威圧感を伴っていた。
「これが…本気の姿というわけか。」
ヴァルノスが低く呟き、剣を強く握りしめた。
ルヴァークは静かに手を掲げ、一言呟くと巨大な魔法陣が三人の足元に展開された。
その魔法陣から溢れる魔力により、三人は動きを封じられるような感覚を覚えた。
「さあ、どうする?この力を前に、絶望するがいい。」
ルヴァークの声は低く響き渡り、彼の指先から強烈な闇の波動が放たれた。
ヴァルノスたちはその波動に飲み込まれそうになるが、契約書から授かった力が彼らを支えた。
封じられた体の中から、魔族の力が湧き上がり、彼らは再び立ち上がる。
「こんなところで終わるわけにはいかない…!」
ヴァルノスが叫びながら剣を振り、ルヴァークの闇の波動を切り裂いた。
エリスはその隙を突いて矢を放ち、グラーデは大地を揺るがすような一撃で敵のバランスを崩す。
三人の連携が次第にルヴァークの優位を崩していった。
ルヴァークは苛立ちを隠せない様子で歯を食いしばった。
「この私をここまで追い詰めるとは…だが、貴様らの勝利はここで潰える!」
次の瞬間、ルヴァークはさらに強大な魔力を解放しようとするが、彼の体には明らかに無理が生じていた。
三人の反撃により、彼の魔力は制御を失い始めていた。
「今だ!これで終わらせる!」ヴァルノスが叫び、三人はそれぞれの力を合わせて最後の一撃を繰り出した。
光と闇が交錯し、激しい衝撃が戦場を包み込んだ。
その余波が収まった時、ルヴァークの姿は地に伏しており、その強大なオーラも完全に消えていた。
「やった…のか?」
グラーデが荒い息をつきながら呟いた。
ヴァルノスは剣を鞘に収め、仲間たちを見渡した。
「ああ、だが、これで終わりではない。儀式そのものを阻止しなければ、全てが無意味になる。」
エリスは静かに頷き
「今の戦いで感じた。あの儀式には、まだ何か大きな秘密が隠されている。」
三人は再び気を引き締め、ザラゴスに報告するため、そして儀式を完全に阻止するため、次の一歩を踏み出した。
彼らを待ち受けるのは、さらなる試練と運命だった。




