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ep.28 黒いローブの男

三人は虚無の書を手に入れ、ザラゴスの元へと戻った。

ザラゴスは彼らの帰還を歓迎し、書を手にした三人に満足げに頷いた。


「よくやった。これで儀式の阻止に必要な力が整った…だが、油断は禁物だ。」


ザラゴスの言葉に、三人は改めて決意を新たにし、次なる戦いへの準備を整え始めた。


次の戦いこそが最も過酷で、すべてをかけた決戦となる――


ザラゴスの元を後にし、三人は準備を進めた。

虚無の書がもたらす強力な魔力を手にしたことで、儀式の阻止はより現実的なものとなったが、その先に待ち受ける敵がこれまでとは比べ物にならない強敵であることも、三人は痛感していた。


準備を終え、三人が魔法陣に入ると、次元の裂け目から禍々しい魔力が溢れ出した。

「汝らを転移させる訳には行かぬ…ここで始末する。」


その時、聞き覚えのある声が聞こえた。

「ほお、我を始末すると?しばらく会わぬうちに随分と偉くなったではないか。」


声の正体は虚無の書の影だった。


「あ、あなた様は…!」

心なしか裂け目から溢れ出る魔力が弱まった気がした。


そして、虚無の書の影は続けて言った。

「命までは取らぬ。今すぐ去れ!!」


裂け目の魔力はまるで慌て逃げるように消え去った。


「あなた、そんなに恐れられているの?ってか、生きてたのね…」

エリスは独り言のように呟いた。


「我は虚無の書の影。この書物が破壊されない限り、滅びぬ。」

影は自信満々に言った。


「さっきは助かった。ありがとう…えっと…虚無の…」

ヴァルノスは探り探り話しかけた。


「我はリドーだ。」


「これからよろしくね。リドー!」

エリスは新しい仲間を迎え入れるように言った。


「・・・。」

しかし、リドーは黙り込んでいた。


転移すると、目の前に広がったのはかつての故郷とは異なる荒れ果てた光景だった。

儀式が着実に進行しているせいか、空はどんよりと暗く、赤黒い霧が漂い、空気には不穏な力が充満していた。


「これが…儀式の影響か…?」


ヴァルノスは周囲の荒廃を見渡し、眉をひそめた。

人々の気配はなく、街はまるでゴーストタウンのように静まり返っている。


エリスもその光景に心を痛めつつ、虚無の書を抱きしめるようにして言った。

「早く儀式を止めないと…このままじゃ世界そのものが壊れてしまう。」


そんな中、三人は不気味な気配に気づいた。

彼らの前に突如として現れたのは、黒いローブに身を包んだ複数の人影。


彼らはゆっくりと三人の前に並び、無表情な顔でこちらを見つめていた。


「待っていたぞ、侵入者どもよ。」

一人の男が冷たく言い放つ。


その目は人間ではありえないほどの暗い光を放ち、その声には異常な威圧感があった。


ヴァルノスが剣を抜き、エリスも魔法の準備を整える。

「お前たちは…何者だ?」


男は冷笑を浮かべ、ローブの中から手をかざした。


「我らは『儀式の守人』。儀式を妨害することは許されん。」


その言葉と共に、男が手をかざすと、足元の地面が黒く変色し、そこから数体の魔物が現れた。

異形の魔物たちは三人を囲むようにしてゆっくりと近づいてくる。


「これが儀式を守る者たちか…」グラーデが焦りを隠しきれない様子で呟いた。


ヴァルノスは剣を構え直し、仲間たちに声をかける。


「ここは突破するしかない!やつらの意図を知るためにも、一体でも倒して情報を得よう。」


エリスとグラーデが頷き、それぞれの魔法と武器を用意した。

黒いローブの男たちは同時に手を上げ、それに呼応するように魔物たちが一斉に襲いかかってきた。


ヴァルノスは剣を振るい、エリスは炎の魔法で応戦、グラーデは敵の動きを封じる呪文を唱えた。

だが、次々と現れる魔物の数は減るどころか増え続け、三人は次第に追い詰められていった。


「くそ、終わりが見えない…!」

ヴァルノスが叫び、汗を浮かべながら戦い続ける。


そのとき、エリスが虚無の書を片手に取り出し、意を決したように叫んだ。


「虚無の書の力を使うわ!少しの間、魔力を増幅させて、敵を一掃する!」


エリスが書を開き、力を解放すると、彼女の周囲に激しい光が溢れ出した。

その光は魔物たちを一瞬ひるませ、さらにエリスの炎の魔法が強力になり、次々と敵を焼き尽くしていく。


「やったな、エリス!」

グラーデが歓声を上げる。


しかし、黒いローブの男が不敵な笑みを浮かべた。

「虚無の書の力を解放したか。だが、それが我らに何の影響を与えると思っている?」


その瞬間、男が再び手を掲げ、周囲の空間が歪み始めた。三人は異様な圧力に押され、足がすくむ。


「何だ、何が起きているんだ…!」

ヴァルノスが驚愕し、剣を握りしめる。


男は冷たく告げた。


「お前たちが虚無の力を手に入れたことで、儀式の進行も加速する。いずれ、虚無の力は自らの存在さえ飲み込むだろう」


三人は息を飲んだ。

この敵は、虚無の書の力を利用し、儀式をさらに加速させるつもりだということが分かったのだ。


「急がなければ、世界は本当に滅びてしまう…!」

エリスが焦燥に駆られながら呟く。


ヴァルノスは、仲間たちに向かって力強く頷いた。

「ここで諦めるわけにはいかない。やつらを打倒し、儀式を完全に阻止するんだ!」


三人は再び気を引き締め、全力で守人たちに挑む覚悟を固めた。


三人は守人たちを前に、決死の覚悟で再び戦闘態勢に入った。

それぞれが持つ力の限りを尽くして攻撃を繰り出すが、黒いローブの男たちはまるでこちらの攻撃を読んでいるかのように動き、的確に対処していく。


特にそのリーダー格の男は、虚無の書の力を利用する方法さえ見通しているようで、冷酷な微笑を浮かべていた。


リーダー格の男は、手に持つ黒い杖を掲げ、その先端に緋色の光を宿らせた。

その光は、虚無の力そのものであり、彼が虚無の書に関しても何らかの知識を持っていることをうかがわせた。


「愚かな者どもめ。虚無の力を引き出しても、それはお前たちの首を締めるだけだ…」


男が杖を振ると、空間が歪み、三人の足元に黒い霧が渦巻き始める。霧は彼らを引きずり込むように動き、その中に潜む無数の影がまるで意思を持つかのように腕を伸ばし、三人に迫った。


「ここは逃げられないのか…!」

ヴァルノスは焦りつつ剣を振り、迫りくる影を切り裂いたが、切り裂かれた影は瞬時に再生し、再び迫ってくる。


グラーデも冷静さを保ちつつ呪文を唱えるが、影の力が強すぎて彼の結界もすぐに破られてしまった。


「くそ…この影は何なんだ…まるで無限に湧いてくる…!」


エリスは虚無の書の力を再度使おうとしたが、影に絡め取られ、動きを封じられてしまう。


「こんな…ところで…」


守人たちは、三人をじわじわと追い詰めるかのように動きを制限し、絶望的な状況に陥れる。


その時、ヴァルノスは一瞬だけ思考を巡らせた。対抗するには、普通の戦い方では到底敵わない。

何か別の方法を見つけなければならないと悟った。


ヴァルノスは深く息を吸い込み、仲間に叫んだ。


「エリス、虚無の書の力を…逆転させられないか!?この影に対抗するために、同じ力をぶつけるんだ!」


エリスはヴァルノスの言葉にハッとし、虚無の書を握りしめた。

「…わかった、やってみる!」


エリスは虚無の書を開き、今までとは異なる呪文を唱え始めた。

その声はまるで虚無の力そのものと共鳴するかのようで、闇の中に微かな光が現れた。


すると、再びリドーが目を覚ました。


「我の眠りを妨げるのは…って、また貴様らか。ふむ…状況は理解した。」


リドーはそう言うと、エネルギーを放出し、影たちを覆い尽くした。

その力に触れた影たちは、断末魔のような音を立てて消えていく。


リーダー格の男は一瞬だけ驚いた表情を浮かべたが、すぐに冷酷な笑みに変わり、杖を振り上げた。


「なるほど。ならば、虚無の力を極限まで引き出してみせよう…」


その瞬間、男の体から黒いオーラが溢れ出し、彼の姿が変貌を遂げ始めた。

彼の体は闇そのものに包まれ、より巨大で威圧的な存在に変わっていく。


「我が真の姿を見せてやろう…」男の声は異様に低く、凍りつくような響きが込められていた。

その変貌により、男はさらなる力を得たかのようで、周囲の空間さえも黒く染め上げていく。


ヴァルノスとグラーデは再び武器を構え、エリスも虚無の書の力を解放する準備を整えた。

三人は心を一つにし、この最後の強敵に挑む覚悟を決める。


リーダー格の男は、黒いオーラを纏った手を伸ばし、ヴァルノスに向けて突進してきた。

ヴァルノスはその攻撃を受け止め、全力で剣を振りかざす。


だが、男の力は尋常ではなく、一撃ごとにヴァルノスの体が悲鳴を上げる。


「くっ…まだだ、俺たちは負けるわけにはいかない…!」


エリスは、再び虚無の書の力を引き出し、仲間たちに声をかけた。

「二人とも、私が彼の力を封じる間に、全力で攻撃して!」


グラーデは頷き、呪文を唱え始め、ヴァルノスも剣を握りしめ、力を込める。

そしてエリスが虚無のエネルギーを解放し、リーダー格の男の動きを一瞬だけ封じた。


その瞬間、ヴァルノスとグラーデは渾身の力を込め、同時に攻撃を繰り出した。


その一撃が、男の黒いオーラを打ち砕き、彼の体に深く突き刺さる。

男は断末魔の叫び声を上げ、闇の力が急速に消え去っていった。


そして、やがて彼の体は完全に消滅し、静寂が訪れた。

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