ep.27 虚無の守護者
三人はさらに奥へと進み、次々と現れる魔獣や罠をくぐり抜けていった。
動く石像や幻影のような亡霊など、禁忌の地には常軌を逸した数々の挑戦が待ち受けていた。
そして、ようやく広間の中心にたどり着いたとき、そこには異様な存在が待っていた。
薄暗い空間の中央に、青白い炎に包まれた浮遊する書物があった。
それが「虚無の書」であった。
「やっと見つけた…これが虚無の書ね…」
エリスが一歩前に進み、手を伸ばしかけたそのとき、虚無の書の前に突然、黒い影が立ちはだかった。
その影は人の形をしていたが、目には冷酷な光が宿り、無限の深淵を思わせるようなオーラを放っている。
「我を起こすのは誰だ…虚無の書は渡さぬ。我が使命は、これを守ることにあるのだ。」
その言葉と共に影が動き出し、激しい魔力の波が広間に渦巻いた。
影を前に、三人は戦闘体制に入った。
「行くぞ! この敵を倒して、虚無の書を持ち帰るんだ!」
ヴァルノスが声を張り上げ、仲間と共にその影へと向かっていった。
影の守護者は、静かに手を掲げると、黒い炎がその掌に渦巻き始めた。
その炎は見たこともないほど冷たく、闇そのものが具現化したかのような禍々しい気配を放っている。
広間がその闇に包まれると、空間全体が重く圧迫され、三人は一瞬息が詰まるような感覚に襲われた。
ヴァルノスが剣を構え、エリスが魔力を集中させる一方、グラーデは詠唱を唱えていた。
だが、その直後、影の守護者が黒い炎を彼らに向けて放ち、広間全体に凄まじい力が走った。
三人は咄嗟に防御態勢をとり、各々の魔力で防ぎながらも、黒い炎の激しさに苦戦を強いられた。
「なんて力なの…!」エリスが驚愕の表情を浮かべる。
「油断するな!この相手はただの幻影じゃない…これまでとは次元が違う!」
ヴァルノスが必死に声を張り上げ、再び剣を構えた。
グラーデは守護者の様子を観察しつつ、攻撃の隙を探った。
「まずは奴の動きを止める必要があるな…少しでも隙を作れれば!」
その瞬間、守護者が再び黒い炎を集中させ始めた。
ヴァルノスはそれを察知し、エリスに指示を飛ばす。
「エリス、結界を張って防御を固めてくれ!グラーデは攻撃の準備を!」
エリスはすぐに魔法陣を描き、三人を包み込むように防御結界を張った。
すると、黒い炎が再び三人に向かって押し寄せてきたが、エリスの結界がその一部を防ぎ、ヴァルノスとグラーデは辛うじて立て直すことができた。
「よし、今だ!」
ヴァルノスは一気に前に出て、剣を影の守護者に振り下ろした。
守護者はそれをかわそうとするが、エリスとグラーデの魔力で一瞬その動きが封じられ、剣が守護者の黒い体に深く突き刺さった。
だが、守護者はまるで何事もなかったかのように冷笑し、さらに強力な黒いオーラをまとった。
ヴァルノスが驚愕する間もなく、守護者の手から再び黒い炎が溢れ出し、ヴァルノスを吹き飛ばした。
「ヴァルノス!」
エリスが叫び、彼に駆け寄る。
ヴァルノスは苦しそうに立ち上がり、ふらつきながらも剣を構え続ける。
「大丈夫だ、まだやれる…だが、このままじゃ埒が明かない。この守護者、俺たちの魔力をも吸収しているみたいだ…」
グラーデが焦りの表情を浮かべながら言った。
「つまり、攻撃すればするほど、相手が強くなるということか…!」
その言葉にエリスも絶望的な表情を浮かべた。
だが、ヴァルノスはその目に再び闘志を宿し、仲間たちに微笑んだ。
「いや、弱点はあるはずだ…この敵も虚無の書を守るための存在だ。書そのものが何かしらの鍵になるかもしれない」
エリスとグラーデが頷き、守護者の隙をついて虚無の書に近づいた。
すると、守護者が怒りを露わにして彼らの動きを阻もうとしたが、ヴァルノスがその間に立ち塞がった。
「ここは俺が引き受ける!お前たちは虚無の書を手に取るんだ!」ヴァルノスが叫ぶ。
エリスがその言葉に一瞬戸惑ったものの、すぐに決意を固め、虚無の書に手を伸ばした。
彼女がその書を手に取った瞬間、広間が強烈な光に包まれ、守護者が苦悶の声を上げ始めた。
「今だ…!これが守護者の弱点だ!」
グラーデが叫び、エリスと共に守護者へと集中攻撃を仕掛けた。
虚無の書の力により、守護者は徐々に力を失い、ついにその姿が霧散して消え去った。




