ep.25 守護神 バデル
ヴァルノスたちは、ついに守護神の最奥へとたどり着いた。
そこには他の守護神とは異なる、異質な雰囲気を持つ巨大な石像が待ち構えていた。
その石像は静かに、まるで彼らが来るのを待っていたかのように目を開け、冷たい輝きで彼らを睨みつけている。
「最後の守護神…こいつが、最後の試練か。」
ヴァルノスは剣を握りしめながら低く呟いた。
グラーデとエリスもそれぞれ構え、いつでも攻撃に移れる体勢を取っている。
石像がゆっくりとその巨体を動かし始めると、部屋全体が振動し、凍てつく風が彼らの肌に突き刺さるように感じられた。
守護神の目が赤く光り、口元がゆっくりと開くと、低く威厳に満ちた声が響いた。
「よくぞここまで来た、挑む者たちよ。我はバデル...我が力を前にお前たちの覚悟が揺らぐなら、ここで終わりを迎えることになるだろう。」
ヴァルノスたちはその威圧にひるむことなく、速攻で攻撃を仕掛けた。
ヴァルノスが闇の力を込めた一撃を放ち、グラーデが渾身の槍で石像の膝を突き崩し、エリスが光の魔法で石像の視界を奪った。
不意を突いた、三人の攻撃にバデルの巨体がぐらつき、激しい音を立てて倒れ込んだ。
「やったか…?」
グラーデが息をつきながら、石像が動かなくなったことを確認した。
しかし、その時だった。
倒れた巨体の中から膨大な魔力が吹き出し、空気が一瞬にして変わる。
その魔力は以前とは比べ物にならないほどの凄まじさを秘めており、まるで地獄の底から湧き出てきたかのような暗黒の気配を漂わせていた。
「まだ終わっていなかったのか…!」
ヴァルノスが警戒を強めると、石像の体がゆっくりと崩れ始め、その中から光り輝く眼を持つ新たな姿が現れた。
その姿は、先ほどの無機質な雰囲気は一切なく、まるで生きているかのような禍々しい気配を発している。
バデルは全身を黒いオーラに包まれ、異形の翼を広げ、重厚な鎧のような石肌が妖しい輝きを放ち始めた。
それはかつての姿を遥かに超える威圧感を放ち、ただ立っているだけでヴァルノスたちの体を押しつぶすような圧力を感じさせた。
「これが…奴の真の力か…!」
ヴァルノスが一瞬ひるみかけるも、すぐに意識を集中させ、全力で挑む決意を新たにした。
バデルは魔力を振りかざし、空間そのものが歪むような凄まじい一撃を繰り出してきた。
ヴァルノスは何とかその攻撃を回避したが、地面が粉々に砕け散り、魔力の余波だけで体が押し戻されるほどの威力だった。
「エリス、グラーデ!ここで全力を出さなければ、奴には勝てない…!」
ヴァルノスが声を張り上げ、仲間に奮起を促した。
エリスもグラーデも頷き、それぞれが持てる限りの力を解放し、バデルに立ち向かっていった。
グラーデが猛然と突進し、槍でバデルの防御を崩そうと試みたが、その一撃をバデルは片手で受け止め、冷ややかな視線でグラーデを見下ろしている。
「くっ、…!」
グラーデが必死に力を込めるが、バデルの圧倒的な力には到底太刀打ちできない。
「エリス!今がチャンスだ!」
ヴァルノスが叫び、エリスが魔法陣を描き出し、光の矢を無数に放った。
光の矢がバデルを取り囲み、激しい閃光が辺りを包み込んだ。
しかし、バデルは闇のオーラをさらに強め、光の矢をものともせず、圧倒的な力で弾き返してしまう。
「なんて力なの…!」
エリスが驚愕の表情を浮かべながらも、決して諦めない覚悟を秘めた瞳でバデルを見つめ続ける。
「ここで退くわけにはいかない!」
ヴァルノスは全身の力を振り絞り、ザラゴスから与えられた魔族の力を最大限に引き出す決意を固めた。
ヴァルノスの体から再び黒いオーラが立ち上り、魔剣に吸収されていく。
「これが…ザラゴスの力だ!」
ヴァルノスが叫び、闇の刃を振りかざす。
その刃はまるで生きているかのように漆黒を纏い、バデルに向かって一気に切り裂くように迫った。
バデルは咆哮を上げ、最後の魔力を全身に漲らせるように反撃を試みたが、ヴァルノスの一撃がその体を貫いた。
闇の力がバデルの内側にまで浸透し、その巨体を内部から砕き始める。
「これで終わりだ…!」ヴァルノスが再び渾身の力で叫び、最後の一撃を放った。
その瞬間、バデルの巨体は黒い煙を立ち上げ、崩れ落ちるようにして地面に沈んでいった。
バデルが完全に消え去り、静寂が広間に戻る。
ヴァルノスたちは息を整え、ついに試練を乗り越えたことを実感した。
エリスが微笑み、グラーデも安堵の表情を浮かべている。
「これで…やっと、全ての守護神を倒したのか」
ヴァルノスが剣を収め、仲間たちに視線を向けた。
彼らはこの試練を通して大きく成長し、ザラゴスの下でさらなる任務に挑む準備が整った。




