ep.23 激闘
ティタニアは両の拳を高く上げ、そのまま大地に叩きつける。
次の瞬間、床が崩れ、無数の石の破片が四方八方に飛び散った。
ヴァルノスたちはその場から飛び退いてなんとかかわしたものの、その一撃の威力に目を見張った。
「くっ…なんて力なの…!」エリスが息を呑む。
守護神の攻撃は、魔力だけでなく、遺跡そのものを巻き込んでの広範囲な攻撃力を誇っていた。
さらに、ティタニアはその巨体を使ってヴァルノスたちにプレッシャーをかけ続ける。
巨大な石の腕が振り下ろされるたびに、三人は翻弄され、攻撃を避けるのに精一杯だった。
「やはり一筋縄ではいかないか…!」
ヴァルノスは心の中で焦りを感じつつも、隙を見つけようと目を凝らした。
しかし、ティタニアの動きは驚くほど俊敏で、まるで巨大な石の塊とは思えないほどだ。
その時、ティタニアの腕が横に振り抜かれたかと思うと、ヴァルノスはその攻撃に対応しきれず、衝撃をまともに受けて壁際まで吹き飛ばされてしまった。
鈍い痛みが全身に広がり、視界が一瞬ぼやける。
「ヴァルノス!」エリスが叫び、駆け寄ろうとするが、彼女にもティタニアの猛攻が迫っていた。
ティタニアのもう一方の拳がエリスの方に向かって突き出される。
エリスは素早く身を翻して回避するが、かすめた衝撃だけでその場に崩れ落ちそうになる。
「くっ、こいつの動き、完全に俺たちを押しつぶすつもりか…!」
グラーデが歯を食いしばり、ティタニアの隙を突こうと剣を振るうが、その石の体には傷一つつかない。
まるでその巨体が無敵の壁のように立ちはだかっているかのようだった。
次第にヴァルノスたちは疲弊し、攻撃のたびに体力が奪われていく。
しかし、諦めるわけにはいかない。ティタニアの圧倒的な力を前にしても、守護神の封印を守る使命を果たすためには、何としても突破口を見つけ出す必要があった。
「このままではジリ貧だ…だが、何か弱点があるはずだ…!」
ヴァルノスは息を整えながら、ティタニアの動きを観察した。
ふと、ティタニアの動きが僅かに遅れる瞬間があることに気づく。
その瞬間、ヴァルノスは確信した。
「あいつの胸元にある石の結晶、あそこが動力源かもしれない…!」
「みんな、聞いてくれ!ティタニアの胸元にある石、あそこを狙えば倒せるかもしれない!」
ヴァルノスの声に、エリスとグラーデは瞬時に反応した。
「なるほど、それなら…やってみるしかないわね!」
エリスは勇気を振り絞り、守護神の胸元に狙いを定めて魔力を集中させた。
ヴァルノス、エリス、グラーデの三人は、それぞれの力を合わせることでティタニアの弱点を突くことに全力を尽くすことに決めた。
まず、グラーデが盾の役割を果たし、守護神の注意を引きつける。
ティタニアの巨大な拳がグラーデに向かって突き出されるが、彼はすんでのところでかわし、絶妙なタイミングで反撃を加えた。
その隙を狙ってエリスが力を解放し、両手から放たれる炎の魔法でティタニアの足元を包み込む。
石の体が熱され、一瞬動きが鈍る。
ティタニアが足元の炎に気を取られたその瞬間、ヴァルノスが高く跳び上がり、剣に魔力を込めて一気に守護神の胸元へと突き進んだ。
「これで終わりだ!」ヴァルノスが叫び、剣を胸元の結晶に突き立てる。
しかし、強固な結晶は一撃では砕けず、かえってティタニアが怒り狂ったように腕を振り回し、ヴァルノスを弾き飛ばした。
「くっ…思った以上に硬い…!」ヴァルノスが苦悶の表情を浮かべながら地面に転がった。
しかし、確実に結晶に傷をつけた感触があった。
「もう一度だ、ヴァルノス!」
エリスが彼に叫びかけ、再度魔力を最大限に解放して、炎でティタニアの動きを封じる。
最後のチャンスを逃すまいと、ヴァルノスは再び立ち上がり、全身の魔力を魔剣に集中させた。
剣は漆黒に包まれ、まるでその闇が全てを呑み込むような勢いでティタニアの胸元の結晶へと突き刺さった。
「これで…終わりだ!!」
ヴァルノスの渾身の一撃が結晶を砕き、ティタニアの体は徐々に光の粒子となって崩れ落ちていった。
守護神の巨体が消えゆく中、ティタニアの声が響いた。
「見事だ、試練を乗り越えた者よ…汝らが封印を守るに相応しい存在であることを…我は認めよう…」
ティタニアの言葉と共に、遺跡に静寂が訪れた。
守護神の力が封印された遺跡の中心には、静かに輝く新たな封印が施され、ヴァルノスたちの戦いの証が残された。
三人は息を整え、互いに頷き合った。
守護神を封印し、魔族としての使命を全うした喜びと達成感が、彼らの胸に静かに満ちていった。
ティタニアとの激闘を終え、遺跡に静寂が訪れた。
ヴァルノスたちは傷つき疲れ果てながらも、戦いを成し遂げた達成感と安堵に満たされていた。
「やったな…」グラーデが深い息をつき、微笑んでヴァルノスに手を差し伸べる。
ヴァルノスはその手を取って立ち上がり、ほっとした表情を浮かべた。
「ティタニアの言葉、聞こえたか?試練を乗り越えた者に認めるって…俺たちも少しは認められたってことかもな」
その言葉にエリスが誇らしげに笑ったが、その目には安堵と疲労の色が見え隠れしていた。
ヴァルノスはティタニアが消えた後に残された小さな石の破片を手に取り、感謝の意を込めて胸元にしまった。
この破片は、守護神が彼らの試練を見守った証であり、再び試練の道に立つ決意を示すものでもあった。
遺跡の出口に向かう三人の足取りはどこか重たく、道中に残る破壊された石柱や刻まれた傷痕が、いかに激しい戦いだったかを物語っていた。
守護神の試練を乗り越えた証として、ヴァルノスたちはザラゴスの元に報告しに帰る決意を新たにした。
「これで一つ、魔族としての務めを果たしたってことになるな。」
ヴァルノスがそう呟くと、エリスとグラーデもそれぞれ思いを馳せるように目を伏せた。
帰還すると、ザラゴスが待っていた。
彼はヴァルノスたちを一瞥し、満足そうに微笑んだ。
「どうやら無事に戻ってきたようだな。あの守護神ティタニアを相手に生還するとは、見事だ」
「ザラゴス、俺たちはティタニアの試練を乗り越え、封印を守り抜いた。これも、ザゴラスの指導のおかげだと思ってる。」
ヴァルノスは頭を下げ、謙虚に礼を述べた。
「うむ、お前たちの成長は確かに私の期待を超えた。だが、まだこれで終わりではない。守護神は他にも存在し、それぞれに強力な力を持っている。お前たちが次に向かうべき場所も既に決まっている」
ザラゴスは新たな地図を広げ、次の目的地を指差した。
「次は『深淵の迷宮』だ。この迷宮には、より強力な守護神が潜んでいるとされている。お前たちがその力を試されるのは、これまで以上に厳しいものとなるだろう」
三人は互いに目を合わせ、少し緊張した様子を見せつつも、その瞳には揺るぎない決意が宿っていた。




