ep.21 帰還
森を抜けて町にたどり着いた三人は、目の前に広がる活気ある人間の生活に驚きを覚えた。
商人たちが賑わいを見せる市場、行き交う人々、そして人間の子供たちの笑い声。
かつてのヴァルノスには馴染みのある光景だったが、今や魔族としての視点から見ると、新鮮かつどこか不穏なものを感じさせた。
「まずは情報を集めよう。」
ヴァルノスは、周囲を見渡し、町の様子に注意を払いながら歩き出した。
エリスは、市場で交わされる会話に耳を傾け、商人たちが話す内容に注目していた。
「どうやらこの町にも近頃、妙な儀式に関する噂が流れているようね。人間たちは、魔族を退けるための儀式を何度も行っているとか。」
グラーデは周囲を警戒しながら言った。
「あの祭壇が関与している可能性が高い。だが、この町のどこで儀式が行われているかが分かれば、さらに確かな情報が得られるだろう。」
三人は町の人々からの情報収集を続け、少しずつ儀式の痕跡を辿り始めた。
やがて彼らは、町の外れにある古びた神殿が、儀式の中心地であるという手がかりを掴んだ。
夜が更けた頃、ヴァルノスたちは神殿の近くに潜んで様子を伺っていた。
古びた石造りの建物は、かつては敬われていた場所のようだが、今や荒れ果てており、どこか異様な雰囲気を漂わせている。
「この中に、人間たちの儀式が行われている場所があるのか…」
ヴァルノスは慎重に観察し、周囲に気配がないことを確認すると、仲間たちに合図を送った。
エリスとグラーデもそれに応じ、三人は静かに神殿の中へと足を踏み入れた。
奥へ進むにつれて、奇妙な魔力の気配が感じられる。
人間たちが行う儀式の力が、神殿全体に染み込んでいるようだった。
「ここだな…」
ヴァルノスは神殿の奥にある大広間にたどり着き、そこで異様な光景を目にした。
大広間には、儀式の道具がずらりと並べられ、何人もの魔法使いらしき人間たちが祈りを捧げるように集中している。
「これが儀式か…思った以上に規模が大きいな。」
グラーデは囁くように言い、状況の深刻さを理解した。
「彼らが何のためにこの儀式を行っているのか、直接確かめるしかないようね。」
エリスは冷静な目で儀式を行う者たちを見据えた。
三人は慎重に様子を見守りつつ、儀式に関与する人間たちの行動を監視していた。
やがて、儀式を主導しているらしき男が現れ、その口から驚くべき事実が漏れ出した。
「我らがこの地に真なる力を呼び戻すために、この儀式を行うのだ。魔族の力を封じ、人間の繁栄を再び取り戻すために…」
ヴァルノスはその言葉に驚愕し、目を見開いた。
彼らが行おうとしているのは、ただ魔族を追放するだけの儀式ではなく、魔族の力そのものを奪い取り、人間界に封じ込めようとしていることが明らかになったのだ。
「これは…想像以上に危険な計画だ。」
ヴァルノスは小声でつぶやき、仲間たちに次の指示を送った。
「まずはこの情報を持ち帰り、ザラゴスに報告しよう。対策を練るためにも、この計画の全容を解明する必要がある。」
エリスとグラーデも同意し、三人は静かに神殿を後にした。
重要な情報を手に入れたヴァルノスたちは、再び魔界に戻り、ザラゴスに報告を行った。
ザラゴスは真剣な表情で彼らの報告を聞き、やがて重々しく頷いた。
「人間たちは、我々が予想していた以上に我らの存在を脅威とみなし、強力な儀式で我々を封じ込めようとしているようだ。だが、彼らの計画を阻止する方法は必ずある。これからはさらに慎重に、彼らの動向を監視しつつ、我々の存続を守らなければならない。」
ヴァルノスは決意を新たにし、仲間たちと共に次なる任務に向けて準備を進め始めた。




