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ep.17 決戦

夜が明けると共に、三人は静かに廃村を後にし、王国の内部へと忍び込むべく、再び街へと向かった。


それぞれが自分の役割を理解し、仲間を信じることで、困難な任務に立ち向かっていった。

ヴァルノスたちは王国の中心部へと慎重に進み、儀式が行われるとされる城の近くまでたどり着いた。


街の雰囲気はさらに緊迫しており、兵士たちが厳重な警戒態勢を敷いている。

何か重大な出来事が迫っていることが、彼らにもひしひしと伝わってきた。


「まずは、城の周囲を見張っている兵士の配置を確認しよう」とヴァルノスは静かにエリスとグラーデに指示を出した。


エリスは小柄で機敏な動きが得意なため、影に隠れながら素早く兵士の動きを把握し、どの時間帯に警戒が緩むかを観察していた。


一方、グラーデは魔族特有の聴覚を活かし、兵士たちの会話から儀式についての情報を引き出そうと耳をすませていた。


やがて、彼らは兵士たちが「神殿」と呼ぶ城の奥深くにある場所が、儀式の場であると知った。

また、儀式には王国の最上位の魔導師たちが集まること、さらには王自らが立ち会うという噂も耳にした。


どうやら今回の儀式は、王国全体にとって非常に重要な意味を持つものであるらしかった。


ヴァルノスはザラゴスから与えられた名の力をすでに感じていたが、潜入を続けるにつれて、自らの力がさらに向上していることに気づき始めた。


肉体の反応速度が高まり、魔力の流れが以前よりもスムーズになり、彼の全感覚が研ぎ澄まされていた。


やがて夜が深まると共に、城内の神殿で儀式が始まったことを示す鐘の音が響き渡った。


ヴァルノス、エリス、グラーデはそれを合図に行動を開始し、城内へと忍び込んだ。

神殿の周囲には精鋭の兵士が立ち並び、さらに強力な結界が張られていたが、エリスの敏捷さとグラーデの隠密の技がそれらを巧みにすり抜けさせてくれた。


神殿内部に到達すると、彼らは儀式の様子を隠れて見守った。

広間の中心には王が立ち、その周囲に魔導師たちが取り囲んでいる。


空間に満ちる魔力の圧倒的な強さに、ヴァルノスたちは改めてその危険性を感じた。


「…どうやらこの儀式は、本当に封印を解くためのもののようだ」とヴァルノスが小声でつぶやいた。


エリスが不安げに答える。

「いったい、何を解放しようとしているのかしら…」


その時、王が高らかに宣言した。


「我が王国を守護する力を蘇らせる時が来た!長きにわたり封印されし『破滅の獣』よ、我が力に従い復活せよ!」


その言葉を聞いた瞬間、ヴァルノスの全身に冷たい戦慄が走った。


魔導師たちが一斉に呪文を唱え始め、空気が震えるほどの魔力が広間を包み込んでいく。

そして、巨大な封印が徐々にひび割れ、内部から不気味な黒い光が漏れ出してきた。


その光にはただならぬ邪悪な力が宿っており、周囲の空間をねじ曲げるかのように揺れ動いている。


ヴァルノスは決意を新たに戦闘態勢に入った。

エリスとグラーデも同じ決意を胸に、武器を握りしめた。


「行くぞ、俺たちでこの脅威を止めるんだ!」


ヴァルノスが叫ぶと、彼らは決戦の場へと飛び込んだ。


ヴァルノス、エリス、グラーデは迷いなく儀式の場へと駆け込み、魔導師たちが唱え続ける呪文の声に割り込むようにその場に現れた。


突如として現れた侵入者に、王と魔導師たちは驚愕の表情を浮かべたが、すぐに態勢を立て直し、兵士たちがヴァルノスたちに向かって突進してくる。


「ここまで近づけるとは…!この者たちを排除しろ!」

と、王が怒りをあらわにして命令を下した。


ヴァルノスは力強く剣を振るい、目の前に立ちはだかる兵士たちを一閃で切り裂いていく。

エリスも軽やかな身のこなしで兵士たちの攻撃をかわしながら、その弱点を的確に突いていく。


一方、グラーデは影のように素早く移動し、魔導師たちを一人一人狙い撃ちして呪文の詠唱を妨害していった。


ヴァルノスは戦いながら、王の目を鋭く見据え、叫んだ。

「これ以上、破滅の獣を蘇らせるのはやめろ!そんな力に頼ることは、王国全体を滅ぼすことになるんだ!」


しかし、王は揺らぐことなく冷笑を浮かべ、低く答えた。

「お前ごときが理解できることではない。破滅の獣の力を得れば、この王国は他国を圧倒し、世界に君臨できるのだ。覚悟の上でのことだ。」


ヴァルノスはその言葉に一瞬、言葉を失った。

王が自らの野心のために、民や世界をも巻き込もうとしていることを知り、胸に深い怒りがこみ上げてきた。


その時、儀式の中心である封印がさらに大きくひび割れ、重々しい音とともに崩れ始めた。

そして、破滅の獣が封印の隙間から姿を現し始める。


巨大な黒い影が広間に広がり、その圧倒的な存在感が場の空気を震わせた。

冷たい闇のような魔力が放たれ、周囲の人々を戦慄させる。


「くっ…!これが破滅の獣…!」

ヴァルノスはその圧倒的な魔力を前に、思わず息を呑んだ。


彼の肉体が、ザラゴスから授かった魔力によって強化されていなければ、この存在感に押しつぶされていただろう。


破滅の獣は低く唸り声を上げると、その巨大な爪を振り上げ、周囲にいる兵士たちを次々と弾き飛ばしていく。

王ですら、その圧倒的な力を前に恐怖の色を隠せない。


「まずい…このままじゃ、王国だけじゃなくて周囲が危ない…」

エリスが苦悶の表情で呟いた。


ヴァルノスは冷静に深呼吸し、自らの心を落ち着けた。

そして、彼の中にあるザラゴスからの力が再び湧き上がり、身体を包み込むような感覚を覚えた。


これこそが、彼が名を与えられたことで得た魔族としての力の真の意味だったのかもしれない。


「俺が止める…!」

ヴァルノスはそう決意を固めると、全身に魔力を集中させ、破滅の獣に向かって一気に突進した。


剣に宿る魔力が青白い光を放ち、彼の闘志と共にまばゆい輝きを放つ。

破滅の獣が鋭い爪を振り下ろした瞬間、ヴァルノスはその攻撃を受け流し、獣の胸部へと切り込んだ。


剣が深く突き刺さり、獣の体から黒い霧のような魔力が噴き出す。

その一撃により、獣の動きが一瞬止まり、重々しい唸り声が響き渡った。


「今だ、エリス、グラーデ!」

ヴァルノスが叫ぶと、エリスはすかさず弓で獣の目を狙い、矢を放った。

一方、グラーデも呪文を唱え、破滅の獣の動きを封じる結界を張り巡らせた。


ヴァルノスは再び剣に力を込め、破滅の獣の心臓を狙って全力で突き刺した。

その一撃が決定打となり、獣の全身が激しく震え、やがてその姿が霧散して消え去っていった。


王もまた、その場に崩れ落ち、失望と恐怖の入り混じった表情を浮かべていた。


「…どうして、ここまでしても、我が力は及ばないのか…」

ヴァルノスは冷たい視線で王を見下ろし、静かに言った。


「お前の力は、誰かを守るためではなく、己の野心のためだった。それが、全てを狂わせたのだ。」

その言葉を最後に、王は何も言い返すことができず、ただ虚ろな目でヴァルノスを見上げていた。


ヴァルノスたちは王国を救い、破滅の獣の脅威を退けた。

しかし、この戦いを通じて、彼は自分が何のために力を使うべきか、改めて深く考えさせられた。


「俺は、これからもこの力を守るために使う。ザラゴスから授かったこの力を、無駄にはしない…」

彼は静かに剣を収め、新たな決意を胸に、城を後にした。


そして、彼にとっての真の戦いが、これからも続いていくのだと心に誓った。


ヴァルノスが城を後にし、広い空の下を歩き出すと、エリスとグラーデが静かにその後に続いた。

戦いの余韻がまだ胸に残る中、彼らは無言のまま歩き続けた。


遠くから朝焼けが空を赤く染め始め、穏やかな陽の光が大地を包み込んでいく。

それはあたかも、彼らの戦いが終わり、世界に新たな夜明けが訪れたかのようだった。

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