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ep.10 存在意義

ある日のこと。

修行を終えてふと正面を向くと、ザラゴス、いつもの冷徹な表情を崩すことなく、エルノスに向かって歩み寄る。


「どうだ、エルノス。」ザラゴスは言った。


「お前の力はかなり上達したな。だが、力を持つ者が全てに勝つわけではない。」


エルノスはその言葉に少し戸惑いながらも、ザラゴスの言葉を受け止めた。


「確かに、力だけでは解決しないということは理解できたよ。でも、これから何をすべきか…」


「それは当然だ。」ザラゴスは微かに笑みを浮かべる。


「お前はまだ、魔族として完全に覚醒したわけではない。そこで、お前に一つの試練を用意した。」


エルノスは目を見開いた。「試練?」


「そうだ。」ザラゴスはゆっくりと語る。


「お前の力を試すための、またお前がどれだけ成長したかを確かめるための試練だ。この試練を通じて、何を学ぶべきかも見えてくるだろう。」


「試練の内容は?」


「それはお前が自分で見つけることだ。そして、失敗を恐れるな。むしろ、失敗こそが最も大きな学びになる。」ザラゴスは冷静に答える。


エルノスは一瞬ためらったが、その言葉を胸に刻んだ。

試練とは、自分の限界を超えるための大きなチャンスであり、その先に新たな成長が待っていることを彼は感じ取った。


その翌日、エルノスはザラゴスに導かれる形で、拠点を出発し、山を越え、森を抜けていった。


途中、彼はザラゴスと共に、これまで以上に厳しい修行を重ねることになった。

日々、魔力を高め、身の回りの環境に適応するために身体的な鍛錬も行った。


一方で、ザラゴスは彼に魔族としての名にふさわしい振る舞いや、他の魔族との関わり方、政治的な思惑をどのように読み解くかという知恵も授けていった。


魔族の世界では、力の強さだけではなく、策略や外交的な駆け引きが非常に重要であり、エルノスもその一端を学ぶこととなった。


ある夜、エルノスは再びザラゴスと共に山の中腹にある小さな神殿のような場所に立っていた。


そこには、魔族の古代の遺物が眠っており、エルノスはその中で一つの重要なものを見つけ出さなければならないという試練が待っていた。


「この場所には、魔族の歴史を象徴するものが眠っている。」

ザラゴスの声が静かに響く。


エルノスは神殿の中に足を踏み入れ、静かに周囲を見渡した。

壁には古代文字が刻まれており、その一つ一つが何か意味を持っているようだった。


だが、その中で一番重要なものは、神殿の中央にある台座に置かれた黒い石の塊だった。

その石を前にしたとき、エルノスは不思議な感覚に包まれた。


それは、まるで自分の魔族としての存在が試されているかのような感覚だった。

彼はその石に手を伸ばし、触れた瞬間、体中に電流が走るような強烈な感覚が走った。


「この石が、お前の魔族としての力をさらに引き出す。」ザラゴスが冷静に言った。

エルノスはその言葉に覚悟を決め、石を手に取った。


すると、黒い石から強烈な魔力が放たれ、彼の体の中に新たな力が流れ込んでいった。

その力はまるで全身を浸すように広がり、エルノスはその瞬間、自分の力が次元を超えて広がったことを実感した。


エルノスは驚きとともに呟いた。


「これが俺の力…!」


ザラゴスは静かに頷く。


「お前の力は確かに増した。だが、力が増すということは、それに伴う責任も増えるということを忘れるな。魔族として生きる限り、お前にはその力を正しく使う義務がある。」


エルノスはその言葉を胸に深く刻みながら、再びザラゴスの指導を受け、これからも自分の力を高めていく決意を固めた。


魔族として、そして一人の戦士として成長していくために、彼の道は続いていくのだった。

エルノスは新たな力を手に入れたことで、次第にその力の重さを実感し始めていた。


強さが増すと同時に、それをどう使うべきかを常に考えなければならないことに気づいた。

ザラゴスの言葉が頭をよぎる。


「力が増すということは、それに伴う責任が増える。」


神殿を出た後、彼はその重い言葉に心を悩ませていた。

修行は続き、彼の魔力の制御はますます巧みになり、そして一つ一つの魔法を使うたびにその力の違いを感じていた。


しかし、力を持つことで、周囲の環境や他者との関係も変わるという現実に直面しつつあった。


ザラゴスとの訓練が終わると、エルノスはふと立ち止まって空を見上げた。

夜空には星々が瞬いており、その中には、どこか遠くの場所に繋がっているかのような感覚を覚える。


自分の力がどこまで成長するのか、またその先に何が待っているのかはわからなかった。

しかし、今、確実に言えることは一つだけだった。


「もう、後戻りはできない。」

その時、背後からザラゴスの声が響く。


「エルノス、お前は自分の力を手に入れた。だが、力を持つ者は、必ずそれを試される時が来る。今後、どんな道を選ぶかは、お前次第だ。」


その言葉に、エルノスは振り返った。

ザラゴスの顔には、相変わらず冷徹な表情が浮かんでいたが、どこか深い知恵を感じさせるものがあった。彼は無言で頷き、心を新たにして歩みを進めた。


その後の数日間、エルノスは自分の内面に向き合いながら過ごしていた。

彼の心の中には、数多くの問いが渦巻いていた。それは、魔族として生きる意味、そしてその力をどう使うべきかという問いだった。


力を持つことが果たして幸せをもたらすのか、それとも重荷を背負うことになるのか――。

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