1話 1人目
皇紀2024年9月12日
雲一つない快晴の日。
俺は、生まれた。
「あぎゃああああああああぁぁぁ!」
(なんだ、ここ。
暗くて何も見えない。何も聞こえない。
どうなってる。
目が開かない。
本当にどうなってんだ。今、俺はどこにいる。)
「おぎゃああああああああああ!!」
声を出している感覚はあるのに、喋れない。
(くそっ、なんなんだ一体。状況が一切分からない。
……なんだか、疲れてきた。意識が、遠のいて……。)
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おはよう諸君。
意識が遠のいた後、どのくらい時間が経ったか分からないが、意識が戻って色々、この真っ暗な部屋で現状について考えて見たのだが。
俺はあるひとつの結論に辿り着いだぞ。
俺が思うに、今俺は赤子なのではなかろうか。
どこかで聞いたことがあるのだが、赤子は生まれて暫くは、目や耳は聞こえないらしい。
その他の五感がどうなのかは知らないが、一応、今は触感はある。
触った感じ、ふわふわした毛布のような物の上に、俺は寝かせられている。
時折、胸の当たりを優しく撫でられるように触られることもある。
きっと、俺は今保護者に大切に扱われているのだろう。
というか、大切にされていないと困る。
雑に扱われて何も分からないまま死ぬなんてことになったら、死んでも死にきれない。
まぁとりあえず、今は何も分からないので、しばらく様子を見ることにする。
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体内時計1日目
相変わらず何も分からない。
たまに、なにか液体(母乳と思われる)を飲まされているのだが、味はよく分からない。
まだ、味覚も鈍感なのだろうか。
引き続き、様子を見ることにする。
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体内時計1ヶ月目
なんか見える世界が明るくなってきた。
耳もなんか音が聞こえる気がする。
母乳の味はまだよく分からない。
引き続き、様子を見ることにする。
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体内時計6ヶ月目
だいぶ世界が鮮明に見えるようになった。
耳も音を聞き分けられるくらいにはなった。
母乳は美味くも不味くもないなんとも言えない味がする。
引き続き、様子を見ることにする。
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体内時計12ヶ月目
めっちゃ見える。
めっちゃ聞こえる。
母乳はよく考えると美味しい気がしてきた。
状況が把握できるくらいになったので、今日で、様子見を終了する。
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1年くらい経って、だいぶ五感が発達したので、状況を整理しようと思う。
俺は今、赤子の部屋にしてはどデカい、めちゃくちゃ豪華な装飾品が所々に置かれた子供部屋にいる。
部屋の中央にあるベビーベッドと思われる布団の上に俺は転がされている。
これまためちゃくちゃ豪華なベビーベッドでして、布団はふわふわ、おもちゃはジャラジャラ。
赤子に最適なベッドになっていて、
天気も良いので元々良い寝心地が更に良くなっている。
窓の外の太陽の位置を見る限り、多分今は昼頃だろう。
(空は快晴だ。気持ちがいいほど快晴だ。
こんな日は外に出て、母乳でも飲みながら景色でも描いていたいね。)
あ、いや、今はそんなことどうでもいいな。
話を戻そう。
俺がずっと気になっていた、赤子説だが、やはり当たっていたらしい。
俺の手足は小さく、力もない。
尿も糞も漏らすし、母乳も飲む。
そう、母乳を飲むのだ。
では、その母乳はどこから来ると思う?
察しの通り、お母様だ!
と、言いたいところだけれど、どうやら俺は、結構金持ちの家に産まれたようで、母乳をあげに来るのは、メイド服を着た乳母だ。
これまた乳母メイドが可愛い子で、最初は目が見えないので、億劫に思っていた母乳タイムも、目が見える今では、日々の楽しみだ。
可愛い子に貰う母乳は美味い。
と、状況整理していると部屋をノックする音が聞こえた。
今俺がいる部屋は俺と俺の世話係のメイドと2人だけなので、動けない俺ではなく、世話係のメイドがドアを開けた。
入ってきたのは、メイドのエリーちゃんだった。
エリーちゃんは俺の乳母だ。
年齢は21歳位で、すごく可愛いのに、メイドで、母乳もでるという特典付き。
最高だろう?
それにエリーちゃんは母乳が出るので、もちろん子供がいる。
エリーちゃんこんなに若くて可愛いのに、母乳が出る上、子供がいるだなんて……。
(ご馳走様です。)
エリーは俺に話しかけながら近づいてきた。
「アーサー様、ご飯の時間です」
「あーうー」
エリーの呼び掛けに、喋れないなりに頑張って返事をした。
あ、ちなみに俺の名前は今聞いた通り、『アーサー』だ。
本名『アーサー・ケープ・ぺイン』。
アーサーが名、ケープが国名、ペインは初代皇帝の名だそうだ。
そう、俺は皇族だ。