5.でも私、職業盗賊だし
「あ、リオ先輩!!」
「こんばんは、後輩ちゃん」
リオはノエミと合流することにした。
情報収集も兼ねて、ノエミとくらいは交流してもいいだろうという判断だ。
「てか先輩、職業なんですそれ?」
「後輩ちゃんは分かりやすいね。【武士】だ」
「正解ですっ」
「ちなみに私は【盗賊】」
「へ? マジですか。リオ先輩にしては珍しいチョイス?」
「運営を信用したんだよ。どの職業を選んでも楽しめる。それが謳い文句のひとつだったしね」
「まあそれはそうですけど……」
「さて情報交換しない? そっち何か有用な情報とかある?」
「ええと、知ってるかもですけど、宿屋でSPを消費してスキル習得できますよ」
「え、ほんと? スキル習得の方法、ちょうど探してたんだ」
「なら良かったです。リオ先輩は何か見つけましたか?」
「うん、まあね。サイドストーリーに入ったところ」
「へ? なんですそれ。メインストーリーじゃないんですか?」
「まあね。それよりスキルを習得したいんだけど」
「ああ、はい。その前にフレンド登録しましょうよ」
「いいよ」
リオはノエミとフレンド登録をした。
VRギアのフレンド登録と比べて、ゲーム内のフレンド登録は仕様が異なる。
フレンドのログイン状態が分かるようになり、さらにフレンドとメッセージのメールを介さないメッセージのやり取りが可能となるのだ。
宿屋の受付でSPを消費してスキルを習得することができると聞いたリオは、早速スキルの習得を行うことにした。
悩みに悩んだ末に、〈短剣習熟〉〈危険感知〉〈解錠〉〈罠解除〉の4つのスキルを習得する。
盗賊といえば鍵開けと罠の発見と解除が仕事だと思ったからだ。
その上で戦闘能力も最低限、確保したいという結果がこのスキル選択である。
「後輩ちゃんはもうスキル習得は終わってる?」
「もちろんです。で? サイドストーリーってなんですか」
「んー……盗賊用のイベントかもしれないけど。パーティ組んだら一緒に行けるかな?」
「是非ともお供させてください!!」
「じゃあパーティ申請送るね」
「受諾!!」
《ノエミとパーティを組みました》
初めてパーティを組んだため、パーティを組んだ際の注意事項がホロウィンドウに表示される。
どうやらパーティを組むと経験値は頭割りで等分されるらしい。
そしてパーティを組んでいる最中に入手したアイテムは、共有インベントリに一時的に格納されるようだ。
「イベント内容については、道道、説明するから、まずは集落を出ようか」
「はーい」
リオは視界端のミニマップを頼りに集落を抜ける。
ノエミはリオに全幅の信頼を寄せているため、素直についてくる。
集落を出てから、リオは自分のインベントリから盗んだ地図を取り出し、ノエミに見せた。
「この入江の洞窟ってところにお宝があるらしいんだよね」
「へえ!! この地図はどうしたんですか!?」
「いたいけな少年から盗み取った」
「…………え?」
軽く引いたノエミにリオは笑いかける。
「どうも少年の父親がこの洞窟にいるらしいんだけど、ピンチらしいんだよね。少年はひとりで行く気だったけど、地図を盗んで宝を横取りすることにしたの」
「鬼畜すぎる……」
「そう? でも私、職業盗賊だし」
「盗賊ってそんな殺伐としたストーリーなんです?」
「後輩ちゃんの武士の方はどんな感じなの?」
「ええとですね……」
ノエミが言うには、難破船に乗ったのは九魔群島に落ち延びた主君を探すためだという。
記憶喪失あつかいなのは、リオと変わらないようだった。
「いきなり情報収集とか言われて放り出されたんですけどね。とりあえず片っ端から建物に入って、宿でスキルを整えたところでリオ先輩どうしているかなーって」
「ふうん。まあ似たようなものか……」
職業ごとに目的は違えど、スタート地点の集落で情報収集はさせられるらしい。
きっとノエミも情報収集の最中にイベントに遭遇する機会があったのだろう。
「こっちのイベント終わったら、後輩ちゃんのイベントも見たいね」
「そうですね……って魔物が!!」
集落の外には魔物が出現するらしい。
ようやくこのゲームでの戦闘が始まる。