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第十四話「冒険者ギルド2」

「お姉ちゃんはなんで冒険者になろうと思ったの?」


 ウキウキしながら、遠足のように楽しげな歩きで先導する少年。


「なんとなく、楽しそうじゃありません?」


 そんな少年のあとをフランソワはついて歩いた。

 日傘をさし洒落た格好で歩く彼女は、少年以上に緊張感に欠けて見える。


 酒場での揉め事は、フランソワ同行ということで収まりかけたものの、よく考えれば冒険者ギルドに初めて来るという女性が1人ついて何が変わるのかとカーマは止めようとした。


 しかしフランソワの煙に巻かれるような話術に降参し、しっかり見ておいてやってくれと伝え諦めたのだった。


「そうだよ!冒険者は楽しいんだ!スリルもあって、かっこよくて!」


 そう話す少年の手には剣が握られている。

 上等なものではないが、それなりに使い込んだ様子は見てとれた。


「さっきは喧嘩したけどね、カーマもかっこいいんだ!いつもみんなを纏めてくれて、一番前で戦うんだよ!」


「憧れですのね」


「うん!」


 それからも彼は冒険者の話を嬉しそうにしてくれた。

 彼はまだ魔法は使えないらしいが、魔法を主体に戦う者もいたり。


 あるいは魔道具という魔法の力の使える道具によって戦う者もいるらしい。


「僕も鍛えてるからそのうち肉体強化の魔法が身につくと思うんだ!そして炎を出せる剣を買って戦うって決めてるの!」


「魔法はともかく、炎の剣はもう買えるんじゃありませんの?」


 少年の夢を不思議そうに聞くフランソワに、少年は呆れたような目で見る。


「お姉ちゃん魔道具ってすごく高いんだよ。炎を出す石ころですらこの依頼を何十回しても買えないのに、炎を出せる剣なんていつ買えるか」


「あら失礼。私まだまだ冒険者には疎いもので」


 庶民の金銭感覚が理解できないフランソワは、そういうものかと考える。

 そうやって徐々に強くなってお金を貯めて憧れの武器を手に入れるのだろう。


 それは面白いだろうとフランソワは思った。


「お姉ちゃんはどうやって戦うの?」


「どうやって?」


 そう振り返ってみて、フランソワは特に考えていなかったことに気づく。

 なんとなく冒険者ギルドは刺激がありそうだと見にきただけであり、本格的な戦闘まであまり考えてはいなかった。


「剣とか、魔法じゃありませんの?」


「曖昧だなあ」


 少年はフランソワを変わった人だと思い始めていたが、特に気に留めた様子はなかった。

 まだ見学なのだ。なんなら自分の戦闘を見て参考にしてほしい。


 そのくらいの気概で彼は挑んでいたのだ。


「ここらへんだよ」


 はぐれアロンダ狼。


 本来群れで行動するアロンダ狼の群れからはぐれた個体を指す。


 四つの目を持つ狼であり、その連携が強みである故にはぐれはさほど強いとはされていない。

 しかし狼特有の身体能力や牙や爪の脅威はもちろん、4つの目による広い範囲の視覚は攻撃を当てることも難しくする。


 冒険者基準で見れば強くはないが、当然丸腰の一般人が出会えば絶命は逃れられない。

 街に近いところにいると危険ではある。今回はそう言った理由もあり討伐依頼が出ていた。


「はぐれの割に同じところにいますのね」


「そりゃ寝ぐらや狩場を作ればしばらくはいるでしょ」


 そんな雑談をしながら歩いていると。


「あれだよ」


 遠くに、こちらを見るアロンダ狼の姿があった。



お読みいただきありがとうございます。


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本作主人公フランソワも登場する『邪教徒召喚 ー死を信奉する狂信者は異世界に来てもやっぱり異端ー』は下記リンクか作者マイページよりよりお読みいただけます。

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