表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/17

第十一話「騎士団3」

「少々手こずりました」


 唖然とするアキテーヌ公をよそに、スバリは悠々とフランソワに近づく。


「楽しんでいただけたでしょうか」


 そう言いながら輝くような笑みを見せるスバリに、アキテーヌ公は思う。

 楽しむどころではない。 


 薔薇の騎士団3人は選りすぐりの強者であるが、問題はそこではない。

 それを1人、素手にて無傷。


 複数人の攻撃を掻い潜るだけでも難しい上に、一方的に攻撃。

 そして素手で甲冑にダメージを与えられる。


 雌鶏の騎士団は弱いと聞いていたが、とんでもない傑物である。


 同時に騎士団長を代理させられるのも納得がいく。

 ここまで突出した個の強さ、そこまでこれば人望も集まろう。


 その彼が指導に回る、実績など後からついてくると考えても不思議ではない。


「魔法なしでもそこまで動けますのね」


「はい、力ももちろんですが、技術を積み重ねれば誰だって可能かと」


 できるものか、そう思うアキテーヌ公に対し、爽やかに語るスバリ。


 フランソワも流石に驚きはあった。

 勝ち目のない手合わせの状況、それに対し主人を前に勝利宣言。


 そして想像以上の結果を見せた。


 楽しめた試合だった。素直にそう感心する。


「窮屈では?」


 あまりに素直に。

 フランソワ・マイエンヌという人間からすればあまりに珍しいほどに素直に。


 感心と、称賛を送れると考え、口をついた言葉が。

 それであった。


「窮屈?」


 少し不思議そうにフランソワを見上げるスバリ。

 その目にはフランソワの言葉の検討などまるでついていないようであった。


「それだけの才覚を持ちながら、この弱い弱いと評判の雌鶏の騎士団」


 フランソワは、自分の所有であるはずの騎士団を指して。

 しかし、事実を言う。


「訓練内容、給金、己の能力を示す機会、貴方ほど突出した人間であれば他の道はいくらでもあるでしょう」


 それは何も、雌鶏の騎士団の待遇が悪いというわけではない。

 むしろ表面上平和な領地で、商業的に栄えている以上雌鶏の騎士団の待遇は良く、仕事内容も悪いはずもない。


 それを踏まえて、それでもそれ以上の場所があるのではないか。

 彼女の言葉は最高の賛辞とも言えた。


「何故、このような場所にいるのですか?」


「それは」


 スバリは、迷うことなく、フランソワの目を見て答える。


「私がこの領地を、そして主人たる貴方がたに仕えることに誇りを抱いているからです」


 能力は関係ありません。

 例え才覚があろうとなかろうと、私はここを目指し。


 ここにいたはずなのです。


 そう、彼は言い切った。


「それを、そのやりがいのない仕事を退屈だとは?」


「やりがいのないなどとんでもありません。十二分に報われていると感じる日々です」


 嘘はない。

 フランソワはそう確信する。


 彼であれば確かに騎士として、そしていずれ騎士団長として能力人格共に申し分なく育つだろう。

 そしてその能力の高さ故に物足りなさを感じるということもない。


 何故なら騎士という仕事に誇りを持っているから。


「素晴らしい心がけね」


「全く持ってその通り、だが、その才覚、愛の宗教の元で伸ばすのもまた市民を守ることに繋がるとは思わんかね?ここより充実した設備と人員が」


 即座に勧誘に移るアキテーヌ公の膝に、フランソワは入れ立ての紅茶をかけた。


「あっつい!」


「そういうところが評判を落としますのよ」


 呆れたように言うフランソワに、にやりと笑いながら、ここで種まきをしない方が愚かだと言うアキテーヌ公。


「アキテーヌ公のお言葉は嬉しいですが、私の仕える主人は決まっておりますので」


 スバリはそんな茶番を見ても生真面目にフランソワに向けて話す。


「いずれ、私の仕える方はフランソワ嬢、貴方になるでしょう」


 現領主の子どもはフランソワのみである。

 それを継ぐのはフランソワか、あるいはその結婚相手と考えられるが、フランソワは社交界でも顔が効き政治的な能力も高い。


 女性ではあるが、このまま領主を継ぐと言われていた。

 もっとも、皇太子との婚姻により王妃になれば話は変わるのだが。


「是非、お側にてお仕えしたく」


 フランソワは不思議に思っていたが、先ほどから聞くにどうにも彼はフランソワ個人に対しても忠誠心が強いらしい。

 少し、言葉の終わりに見せた頬の赤みを見るに色恋か。


 惚れられるようなことをしたつもりはないと思ったが、皇太子よりは相手として面白い。

 フランソワもその程度の評価はしていた。


「数日後、国王からの命にて王下街にて任務があります」


 必ずや、オンスの街の騎士として恥じぬ成果をお見せしてきます。

 そう宣言した。


「ええ、では楽しめる土産話を期待します」


「はい!必ずや!」


 そう告げる彼の顔は、初めて年相応の青年のようで。

 フランソワは少し、目を細めた。


お読みいただきありがとうございます。


少しでも面白いと思っていただけたら、『ブックマーク』と広告の下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価いただけると幸いです。


評価ボタンはモチベーションに繋がりますので、何卒応援の程よろしくお願いします。


本作主人公フランソワも登場する『邪教徒召喚 ー死を信奉する狂信者は異世界に来てもやっぱり異端ー』は下記リンクか作者マイページよりよりお読みいただけます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ