3月4日 苺狩り
農民の男は家で子どもと話をしていると、戸が突然開けられた。
「おうおうおう。ちぃっと邪魔するぜ」
威勢のいい声で扉を開けたのは役人の男。そして何人かの配下の者を連れており、彼らは何やらたくさんの荷物を持っていた。
「何のご用でしょうか?」
恐る恐る尋ねる農民の男。
「この家にあれはあるか?」
農民は役人が何をしに来たのか、ここでようやく理解したようだった。
「はい。ありますとも」
そういって風呂敷に包んでおいた、あるものを役人に手渡した。
役人は風呂敷の隙間から中身を確認する。
「確かに、いただいた」
そう言って潔く家から出て行ったのだった。
すると、農民の子どもは疑問そうに尋ねる。
「父上。今、何をお渡しになったのです?」
「苺だ。苺狩り令のせいで苺を納めなければ、いけなくなったんだ」
「苺狩り……ですか」
これが後の苺狩りの起源になるとは、誰も思わなかった。
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