1月31日 病
少年が駅で電車を待っていると、電話がかかってきた。スマートフォンを取り出し、電話に出た。すると、少年の友人であるXさんが、
「Y君が不治の病にかかったんだって。私は今からY君がいる病院に行くつもりなんだけれど、どうする? 一緒に病院に行く?」
と慌てた口ぶりで言った。
「うん、今から行くよ」
少年はよく考えずに、とっさの判断で返事をした。電話の相手のXさんからY君のいる病院の名を聞き、乗ろうとしていた電車のホームとは逆の電車に乗った。
病院に着くとXさんとY君がいた。Y君の姿を見るも、見た目からでは病気にかかったようにはとても見えなかった。彼は元気そうにXさんと話をしていた。それもあってか少年はほんの少し安心した。
「何だ……入院したって聞いたから心配してきたけど、思っていたより元気そうじゃないか。いつから入院していていたんだ?」
少年はY君に訊いた。
「昨日から。色々な検査をさせられたり、薬を投与されたりして挙句の果てに入院してくれ、なんて言われてさ。でも、病気のことについて一切話さないんだ。ただ不治の病にかかっているということだけしか教えてくれない……」
少年がY君と話をしていると、病室のドアが開いた。入ってきたのは医師だった。Y君の具合を調べに来たのだろう。少年とXさんは診察が終わるまで病室の外で待っていた。
待っていると、すぐに医師は外に出てきた。診察は終わったようだった。その医師は二人に訊ねる。
「君たちはY君の友達かな」
「はい。そうですけど……」
医師は深刻な表情をして彼らに言う。
「今はそれほど心配することはない。だが、後のことを考えると……」
「不治の病って何なんですか。教えてください。お願いします」
Xさんは懇願した。すると医師は少し躊躇したが二人に言った。
「不死の病だよ」
不死の病と聞いた彼らはその病の恐ろしさをすぐに気づくことはできなかった。
少年は病院の帰りに駅のホームで電車を待っている時にその病の本当の恐ろしさに気づいたのだった。不死ということは一生生き続けるということだ。しかし、不老ではない。そのためこのまま老け続ける。
老け続ける恐ろしさは誰にも分からない。
少年の乗るはずだった電車の扉が勢いよく閉じた。
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