6月28日 寝起きドッキリ
女は部屋の一室に忍び寄るように近づいていく。そして枕元のところまで行くと、囁くような声でそっと言う。
「おはようございまーす」
けれども男は全く起きる様子はない。女は彼の頬を軽く引っ張っては戻す、そんなことを二、三回繰り返すが、それでも起きる気配は全くない。
「おはようございまーす」
先ほどよりも大きな声で言うがやはり男は起きない。さらに男の頬を軽くビンタしてみるも、それでもなお起きる様子はなかった。
「おはようございまーす!」
男の耳元でなかなかのボリュームで声を掛けるが、目を覚ます気配はない。女は馬乗りになり、男の両肩をつかむと勢いよく何度も揺すった。
「おはようございまーす! おはようございまーす! おはようございまーす! おはようございまーす!」
大声で男に声を掛けるが、それでも全く目を開けることはなかった。
女はそっとため息をついてから、ぽつりと言葉を漏らす。
「おじいさんや、とうとういってもうたか」
あまりに幸せそうな顔をして眠っていたのだから、勘違いするのも無理もない。
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