6月26日 花火大会
病気になってから今までのありがたみというものをひしひしと感じるものだ。何も気にすることなく外へ出て買い物に行けたこと。学校へ行って友達と他愛のない会話をしたこと。身体のことを気にせず自由に食事ができたこと。今まで普通だと感じていたことは健康だったからなしえたことなのだと今になって痛いほどわかる。
今日は花火大会のある日だ。そろそろ打ちあがる時間かと思っていた矢先のことだ。
ドーンと遠くで花火があがる音が聞こえた。花火大会の会場は病室の窓とは反対側にあるためここから見ることはできない。病室から出て向かいの病棟にいけば、もしかしたら花火を見ることができるかもしれないが、そう簡単にいくものではない。医師からはしばらく安静にと言われており、ここ数週間はベッドで生活を余儀なくされている。
見られもしない花火の音をただ聞いているのはひどくつまらなく感じる。そんな心情とは裏腹に花火は次々と打ちあがる。
病室の窓をちらりと見た時だった。
花火が見えた。
向かいの建物の窓に反射した花火が見えたのだった。花火の放つ、赤に青に黄といった様々な光がきらめいている。それでも窓のある部分からしか見られないため、花火大会の全貌をうかがい知ることはできない。けれども音だけを聞き続けるよりはずっとましだった。
病気になってからは何もする気が起こらず、つまらなそうに、そして気だるげに過ごしてきたわけだが、久々に幸せな気持ちに包まれた気がした。
元気になったら花火をこの目で見よう。
窓に映った花火をじっと見ながら心底思った。
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