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6月21日 マイヒメ

 彼女はそれでも踊った。自分がどうして今、踊っているのかわからずにひたすら踊り続けるのだった。自分はただその姿を見つめていることしかできずにいた。

 舞うよ。踊れよ。

 彼女は酒を飲んでは踊り狂った。彼女の壊れていく様を見て、これまでにない快感を覚えるのだった。人間という実にもろい存在が次々と崩れていく様子を目の当たりにしたから仕方がない。

 酒に、薬に手を出してはひたすら踊り狂う彼女と、それを見て笑い転げていく自分。まさに人間の醜さそのものをさらけ出しているかのようだった。近くにあったウイスキーの小瓶を開けて、そのまま口へと流し込む。瞬時にぐっと熱くなるような感覚に包まれていく。

 彼女は不気味に笑った。そして自分もつられて噴き出すように笑う。もしこの光景を他の人間が見たとしたらさぞかし異様な光景だろう。

 そんな不気味な空間にもようやく変化が訪れた。

 彼女はとりわけ大きな声を上げたのだった。悲鳴だ。苦しみだ。楽しい時との別れ時だ。

 薬の作用が切れてしまったのだろう。彼女の苦々しい表情を見て、自分のかん高い笑い声はさらに増していく。

 そうして彼女は人生の谷底へと舞い落ち続けていく。

 それでも未だ自分は笑い続けている。壊れゆくものもまた美しい。


お読みいただきありがとうございます。


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