5月14日 あちらのお客様からです
「あちらのお客様からです」
バーのマスターは言った。見て見ればグラスに入ったカクテルが置かれている。まるでドラマなんかでよくあるワンシーンのようだ。
「え? どこ?」
マスターの指さす方を見てもそれらしいお客は見当たらない。
「あちらでございます」
そう言って望遠鏡を渡してくる。渡されたからには覗いてみる以外ないだろう。
「どの辺?」
「このバーの二号店が近くのビルにあるのですが」
「ああ、そういや前に行ったことあるよ。そこ」
幹線道路を渡った先にあるビルの一角に系列店のバーがあるのだった。ここより広めの店内で居心地の良いところではあるが、あそこここに比べると立地が良くない。エレベーターがあるとはいえビルの八階まで上がらなければいけないのだった。一方でこの一号店は地下鉄の駅からも近くて一階にある。少し窮屈ではあっても自然と足が向くというものだ。
「あいつか」
「さようでございます」
窓側の席から赤と白のシマシマの服を着たメガネのおっさんが手を振ってこちらを見ていた。
「遠っ」
そしてお前は誰だ。
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